第11話 いざ王都へ
『おぉ~どこを向いても畑や牧場が目に入るねぇ!』
音村は一面に広がる農村地帯に声を上げる。
『王都は人口が多いからそこら辺の需要やな~東京で言うところの千葉や山梨みたいなもんや』
助席の音村の発言にイズナは運転しながら答えた。
『なるほどねぇ~』
『異世界トークついてけないです~、ん?蓮ちゃんは何読んでるんです?』
異世界トークについていけないメルシーは蓮に声をかけた。
『ん?あぁ…この国の歴史書をレオンから借りててな…メルシーさんが向こうのことを知らないように俺もここのことはよく知らないからな』
『へぇ~勉強熱心ですねぇ~』
『蓮よく試作品のオンボロ車の舗装されとらん田舎道で本なんか読めるなぁ~…音村なんかさっきまで威勢はどうしたん?ってくらいにダウンしとるで』
『うぇっ…』
音村は窓から顔を出し草臥れていた。
『あ!見えてきました!蓮ちゃんあれが王都ですよ!』
草臥れている音村を他所にし、メルシーが声を上げた。
『あれが王都か…農村地帯とは比べ物にならない建物の数だな…』
暫く車を走らせた後一行は王都に到着した。
『通行証の提示をお願いします』
『ほれ』
イズナは受付係に通行証の提示を行った。
『確認いたしました…どうぞお入りください』
『ラッシャイ!ラッシャイ!』
『うひょ~!うんめぇ~!』
『そこの嬢ちゃん!俺らとパテ組んで一狩り行くべ!』
門を潜るとそこには活気あふれる王都の姿があった。
『うぉ!すっげ~!ここが王都か!』
『王都フロルブルグ…予想以上の賑わいだな…』
蓮と音村は王都の賑わいに驚いていた。
『ウチも初めてここ来た時は圧倒されたわ~』
『田舎道との落差がすごいのよ~ってか、イズナちゃん耳と尻尾なくね?』
音村は獣の尻尾と耳の無いイズナに声をかけた。
『まぁ目立つからなぁ~…形態変化させてケモ耳から人耳に変えとるんや』
『なるほどねぇ~』
『このまま商業ギルド行って素材の取引行くで~』
一行は商業ギルドへ行きビッグバード含む素材の売買を行った。
『いやはや流石はアリシア様のお付き人ですなぁ~!いつも良質な商品の提供感謝いたしますぞ!』
『おおきになぁ~ほなまた~』
イズナは太った商業ギルド⾧と取引を行なった後、商業ギルドを後にした。
『イズナちゃん!今回は実りのある!取引でしたね!こっちの素材は高く売れたし!
レアなレッドドラゴンの素材まで買えましたしね!』
『ほんまそれなぁ~…ドラゴンの死体漁ったんか狩ったかは知らへんけど運が良かったなぁ~、後者ならとんでもない手足れやなぁ~…
一旦駐車しよか』
イズナは馬車が並ぶ駐車場に車を止めた。
『嬢ちゃん1 時間500 ゼニねぇ~端数四捨五入~』
『あいよ~』
イズナは受付から駐車券を受け取った。
『メルシー頼むで~』
『は~い、クレイドーム!』
メルシーが呪文を詠唱すると車を囲むように土のドームが形成された。
『この土壁を突破できる手練れはそうそうおらんやろ、メルシーあんがとな~
ウチと音村は妹のとこ行くな~妹拾ってから晩飯済ませよか蓮とメルシー19 時ええか?』
『わかりました~じゃあ蓮ちゃん王都観光しちゃいましょ~』
『あぁ、わかった』
(異世界の王都か…創作ではありがち何だが実際に足を運ぶとなると胸が高鳴るな…)
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『ここが軍の施設やで』
イズナは音村と行動し軍施設へとたどり着いた。
『さっき食べたオーク丼美味しかったなぁ~晩飯も楽しみだぜ』
『音村聞いとるか?』
イズナは昼食の余韻に浸っていた音村に声をかける。
『ん?わりぃわりぃ!ここが軍の施設か!軍人さんが大きな声出して訓練してるねぇ~』
『あれは士官学生やなぁ~指導員は軍の部隊⾧やろな。ちなウチの妹は飛び級して部隊入りしとるで』
『おぉ!流石イズナちゃんの妹さん!』
『まぁそれはいいとして、ちと妹何処おるかその辺の人に聞こか』
そう言ったイズナはすらっとした茶髪の⾧身の軍人と思しき人物に声をかけた。
『ギルベルト~久しぶりやなぁ~…いつもあのバカの面倒見てくれてありがとな~』
『うぃ~イズナさんお疲れ様でぇ~す
久しぶりっすねぇ~、お陰様で日々疲れてまぁ~す』
ギルベルトは気怠そうに答えた。
『ところでリン今何処おるか知っとる?』
『リンは数量限定のお好み焼きがどうとか言ってさっき外に出て行きましたよ』
『あぁオーサカ食堂かギルベルトありがとな~音村行くで~』
『ほうお好み焼きもあるのか!テイクアウトしちゃおう!』
『ところで気になってたんすけど?そちらの少年は?』
ギルベルトは音村を一瞥しイズナに問いかけた。
『最近、ウチの家に入った音村って奴やそそっかしい所とかウチの妹に似とるやろ?』
『アリシア邸の新しい住人すか?腕は立つんすかね?』
ギルベルトは鋭い目つきで音村を再度一瞥した。
『んぁ?こいつはペーペーやでまぁ才能はあると思うけどな』
『そうですか…』
イズナの返答を聞いたギルベルトは気が抜けたように見えた。
『ギルベルトありがとな~』
『情報提供ども!』
音村とイズナはギルベルトに礼を言ってイズナの妹リンが居るオーサカ食堂へ向かった。
『ここがオーサカ食堂やで、バカ妹がお好み焼きにがっつく声がよう聞こえるわ』
『へぇ~ここが!めっちゃいい匂い!イズナちゃん妹さんの声聞こえるの?耳いいね~』
『まぁ狐は50 メートル離れた音が聞こえる言うしな』
『おー!すげー!』
『そろそろ食い終わる頃や待ち伏せするで』
『了解!』
イズナと蓮は食堂の入り口で待ち伏せた。
『食った!食った!任務明けの休暇は粉もんに限るわ~!故郷を思い出すわ~!』
黒髪ショートカットの軍服を着た黄色の猫目と八重歯が特徴的な少女が店から出てきた。
『リン、任務明けのお好み焼きは美味かった?』
『そりゃそうや!無事に帰ったらお好み焼き腹一杯食うって同部隊の連中に誓っとったからな!それ死亡フラグやないかい!』
『ん?あぁ!ねぇちゃんやないか!何やお迎えか!てかそこの男誰や?ねぇちゃんのこれか?』
リンはニヤニヤしながら小指を立ててイズナに押し込んだ。
『アホちゃうわ、かくかくしかじかちゅう訳や』
イズナは音村の詳細をリンに伝えた。
『へぇ~あんちゃん異世界人やったんか~
何処住みやったん?』
『転移前は東京に住んでた!都立の中学!』
『ええやんけ!てか中坊やったんか何歳や?』
『13 歳だよ~』
『ウチは15 や!名前呼ぶ時はさんか先輩つけるんやで!』
『リン先輩了解です!』
『この坊主ええノリしとるやんけ~』
リンと音村の話が盛り上がろうとした最中イズナが割って入った。
『リンにはこのええノリしとる坊主の先生やってもらいたいんやこの坊主風属性なんやで』
『そやったんか~
本来なら貴重な一週間の休暇そないなもんに使いとうはなかったけど坊主ノリええからそれに免じてウチが指導するに値するかアピールするチャンスやるわ!』
『お!マジ!頑張るぞ!』
リンの言葉に音村が強く反応した。
『どうせ、ウチもアリシア様んとこ行く予定あったし坊主の品定めは向こうでええやろとりま身支度とか諸々やっとくわ』
『じゃリン19 時に駐車場来てな~もう一人の異世界人の子もおるから楽しみにしててや~』
『あ~い、ねーちゃん坊主ほなまたな~』
『先輩!またねー!』
リンは食堂を後にし、二人は手を振り見送った。
『じゃウチらも19 時までぶらぶら観光といこか?』
『観光!待ってました!』
イズナの提案に音村は快く返答をした。
『すみませ~ん、ちょっといいですか~』
『ん?』
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『いい朝だ…ベランダからは眩い陽光が刺し…小鳥の囀りが聞こえて来る』
ミツキは起床し、蓋付きの容器から液体をジョウロとコップに移した。その後ミツキは鉢に植えられた植物にジョウロに移した水を与えた。
『…ハァ…ハァ…僕の魔法で生成した植物がライラ様から得られた水を糧としているッ!水飲まずにはいられないッ!』
ミツキは荒い息遣いのままコップの水を勢いよく飲んだ。
『…この感覚…僕と僕の魔法がライラ様と重なり一つとなって行く感覚…
至福と言わずして何というのか…
ライラ様から得られた水が私の糧となり血肉となる…
今日死んだとて後悔はありません…』
『さて他の連中も準備が整った頃でしょう…私もそろそろ準備しますかね』
『オイッ!変態!早くしねぇか!』
ミツキが支度をしようとした途端野太く大きな声が外から聞こえてきた。
『…まったく…あの筋肉ダルマ朝っぱらから落ち着きがない…』
『はいはい、今行きますよ』
無秩序ノ月蝕の4 人は馬車に乗り王都へと向かった。
王都に着いた4 人は見晴らしいい建物の上に集まった。
『さて…王都に着いた訳だがまずはリリィの探知で魔力の反応を探るぞ!』
『あいよ~
ゴンザレスの指示でリリィは魔法の詠唱を行った。詠唱を行ったリリィの体は白く光り極小の光の粒子が王都へ散っていった。
『魔力そのものを放出し…魔力で魔力を探る無属性の探知ですか…相変わらず便利なものですね…』
『変態…集中してるから黙ってて』
リリィ以外の3 人は静かにリリィの探知の報告を待った。
『強い魔力反応が…3…いや4 かな…
2 つの強い魔力反応の近くに少し変わった魔力があるのが多分今回のターゲット…
ヒンヤリした魔力の近くには湿ってドロドロした魔力がある…
熱い魔力の近くには落ち着きのない魔力があるね…』
『…ってことは時使いと泥沼のコンビと音使いと蒼炎のコンビですね、概ね予想通りといった具合でしょうか…』
リリィの探知にエリィが反応した。
『ヨシ!そうと決まりゃ後は手筈通りに行くぞ!』
『了解…』
『あいよ~』
『はいはい…』
ゴンザレスの掛け声に3 人が答えた。
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『ラッシャイ!ラッシャイ!
お嬢さん!坊っちゃん!ええ物揃ってまっせ!』
『おやおやこれは珍しい寒冷地域のネェーヴェリア産のリンゴですねぇ~』
『店主さんお二つくださいな』
『毎度!二つで1000 ゼニでっせ!』
『は~い、どもで~す』
『まいど!』
『ってことは1 つ500 ゼニか記憶共有の情報によると大体1 円=1 ゼニだからリンゴ1 つ500 円ってことになるな…ぼったくられてないか?』
メルシーの取引に蓮が反応した。
『ん~…リンゴは生産地域が限られてて、それ故に輸送コストも掛かりますし…そう考えると割と良心的な値ですよ~』
『なるほどな~、確かにこの世界基準で移動コストとか考えると値付けも難しいかもな』
『蓮ちゃんの氷魔法があったら食品の鮮度を保ったり、温度管理された施設栽培で色々できそうですけどねぇ~』
『ハハッ…』
(ここでも氷魔法…尚更易々と使えないなこれは…)
蓮はメルシーの発言に苦笑した。
『蓮ちゃんお一つどうぞ~美味しいですよ~』
『メルシーさんありがとう
…ムシャ…ムシャ、こりゃ美味いな…今まで食べたリンゴの中で一番甘くてジューシーだ』
『ふふっ…それは良かったです
19 時までたっぷり時間がありますし!色々見て周りましょう!』
『ふっ…了解』
蓮はほのかに笑いメルシーとの王都観光を楽しんだ。
『ピアノ!いいですねぇ~!心が豊かになります!』
『それなりに楽しめたよ…』
(全部異世界産の偉人の名教だったけどな…)
『そろそろ!昼食時ですね!
おや!あれは期間限定のスイーツフェスじゃないですか!行くしかありません!』
『メルシーさんもしかしてあの行列並ぶのか?』
『期間限定なんですよ~
中々王都に来れないからこの機を逃すと一生いけないかもなんです~』
メルシーは震え声で蓮の問いに答えた。
『俺は色々王都周りたいし…食べるためだけに行列並ぼうとも思わないしな。近くの定食屋で適当に済ますよ』
『了解で~す、蓮ちゃん!これお小遣い一万ゼニです!好きなの物色々買ってくださいね!』
『こんなに貰っていいのか?』
『素材が高値で売れたのは蓮ちゃんの氷魔法で鮮度を保てたお陰ですしこれくらい安い物ですよ~
14 時にあそこの本屋で待ち合わせでお願いしますねぇ~』
『あぁ分かった』
蓮とメルシーはそれぞれで昼食を済ませるため別れた。
『やれやれ…並んでまで食べようとはどうしても思えないな…オウマイレストラン?空いてるしここでいいか』
『へぇ~い、いらっしゃい』
蓮が店内に入ると気怠げに女性定員が声をかけた。
蓮は店員に指を一本立てて一名であることを伝えた。
『空いてる席ど~ぞ~』
蓮は隅のテーブル席に座りメニュー表を開いた。
『お冷で~す、注文決まったら呼んでくださ~い』
定員はお冷をテーブルに置いて蓮の席を後にした。
(なになに…シーサーペントの蒲焼きにオーク肉のカツ丼…コカトリスの唐揚げ…ファンタジー食材のバーゲンセールだな…)
(ふむ…おすすめメニューなのがミノタウロスのステーキか…レッドソースとグリーンソースの2 種類のソースがあるのか両方とも味が気になるところだが…流石に2 個頼めるほど
俺の胃袋は大きくない…少し試してみるか…)
『注文よろしいですか?』
『あ~い、どぞ~』
『ミノタウロスステーキとライスとスープのセットにソースを小皿で2 種類お願いしたい』
『ちとマスターに確認しますねぇ~』
『マスター2 番席の方、2 種のソース小皿で二つ欲しいそうで~す』
『ん?プラス100 ゼニ出すならいいよー』
青年の男性と思しき声が厨房から聞こえた。
『だそうです』
『了解、プラス100 ゼニでお願いします』
『ほ~い計1100 ゼニですねぇ~』
女性定員は蓮の注文を聞いたのち席を後にした。
『お兄ちゃん若いのに随分賢い注文するじゃんか、見てくれよ俺なんかステーキ2 個頼んじまって苦しみながら食ってんだぜ』
蓮の近くのテーブル席の冒険者風の見た目の顎髭を生やした目に輝きがない壮年の男性が蓮に声をかけた。
『…そうですか』
『つかぬことを聞くがお兄ちゃん異世界人だろ?変わった魔力してるのもそうだが…かなりの一人飯上級者だしな』
『さぁどうだかね…』
『つれないねぇ…俺の名前は山田太郎って言うんだ。向こうじゃありふれた名前だろ?』
『俺が異世界人って言う体で話を進めるのはよしてくれないか?』
(何だこいつ怪しいな…)
『そりゃ兄ちゃんが答えを出さねぇから、シュレディンガー状態ってことになる
どっちでもないし、どっちでもあるって事だ…って事で俺は後者で話を進める』
(シュレディンガーの猫を知ってるのか…異世界人か…はたまた異世界に精通している現地人か…)
『シュレ?何だそれ?よく分からないこと言って俺の気を散らすのを辞めてくれないか?』
『なぁにちょっとした暇つぶしさ…それに俺は兄ちゃんの注文を見て新たな学びを得たからお礼がしたいのさ…』
『お礼がしたいと言うならせめて話しかけないでくれるか?』
『兄ちゃん基本的に人を信用してねぇだろ?
それじゃあいざと言うときに誰も助けてくれねぇぜ』
蓮の発言に構うことなく山田は話し続ける。
『俺ぁ…人を信用せずに手段を選ばず効率重視で突き進んだ奴が失敗してきたのを嫌と言うほど見てきたからな~』
『例えばよ…ゴミを捨てるのにわざわざゴミ袋を用意してゴミの種類の曜日にゴミ捨て場に持ってくのが社会的なルールだろ?
でもよぶっちゃけそれってめんどくさくないか?いちいち分別したり決められた日に出したりしなきゃなんだぜ。
ゴミを捨てるのに最も効率的なのは不法投棄だってのによ~
でもさ~大半の人はルール守るし、何なら不法投棄した奴の尻拭いとしてゴミ拾いやってる奴って好印象で見られるじゃん?』
『まぁそうだな…』
『大体の人はゴミ捨てながら道歩いてる奴には着いてこなくて、ゴミ拾いながら歩いてる奴に着いてくるのよ。ゴミを拾う奴の方が信用できるからだ。手段を選ばず効率重視な行動ってのは諸刃の剣ってことだ…
どっかで必ず誰かの顰蹙を買って一人で無理なことやるとき誰も協力してくれねぇ…多少まわり道してでも手段は慎重に選んだほうがいいぜ。
兄ちゃんその辺苦手そうだから世渡り上手な明るい奴とか周りにいたらいいかもな』
『一考の余地はあるかもな…』
『お?意外とちゃんと聞いてくれてるじゃん
おじさんエンジンかかってきたよ。兄ちゃん…二兎追う者は一兎も得ずって諺があるだろ?でもよ当然だけど二兎追った者しか二兎得れない訳よ…
さっき兄ちゃんソース2 個賢く得れたでしょ?それは兄ちゃんがソースを2 個追ったからさ。大抵の奴は胃袋の容量にビビって1 つで妥協するのによ~。俺ぁ妥協して一兎に甘んじるつまらない奴は嫌いだ…例え兎を得られなくても二兎追うイキの良い奴が好きなのさ…
さっきの兄ちゃんの注文は二兎確保した上に一石二鳥したって訳だ。最高に痺れたよ…一兎で妥協するやつよりも二兎追う奴の方が二兎得る方法を知ってる。俺はそれを学びたいのさ…
その点俺は二兎追って失敗した典型的な例だ折角のステーキを美味しく頂くこともできず…挙げ句の果てに2 倍の料金払ってる…でも今後同じようなことが起きても失敗はしない学んだからね。
さっきの話にもつながるが…信頼できる仲間がいると兎に限らず様々な二頭狩りの方法が共有できるって訳さ』
山田は機嫌良く蓮に自論を展開した。
『山田さんありがとう…こっちも色々と考えさせられたよ…』
『どういたしまして…
めちゃくちゃ話変わるけどこつぃ亀って西暦何年で最終回なった?
俺ぁこっちにきた影響か魔法の影響かは知らないけど年取らないのよね~、かれこれ100年くらいはここに居んのよ』
(待てよ…こつぃ亀の連載歴は1976 年から2016 年までだ…それで100 年異世界に居ただと!?つまりは転移の状況次第で飛ばされる時間が変化する訳か…)
『こつぃ亀?何だそれ初めて聞いたな』
『まぁそりゃ100 年後の人が知らないのも無理ないか~』
『ステーキ何とか完食したから俺は帰るとするかね…ドラゴン討伐の疲れも残ってるしな…兄ちゃんまた会えるといいな…うぷっ…
最後に兄ちゃん名前を教えてくれないか?』
『ラギーだ』
『ハハハッ!つれないねぇ!』
山田は声高らかに笑いながら席を後にした。
『二番さんお待たせしました~ミノタウロスステーキで~す』
蓮の注文した品が届き、蓮はゆっくりと食事を楽しんだ。
(さてそろそろ14 時だな…メルシーさんはいるのだろうか…まだ来てないみたいだな適当に時間潰すか)
蓮は本屋を眺めて時間を潰した。
『あ!蓮ちゃん居た!皆んなの分のお土産買ってたら遅くなっちゃった~』
14 時から10 分過ぎたあたりでメルシーが本屋に到着した。
『適当に本見てたから退屈しなかったよ、お気になさらず』
『そう?ちゃんと蓮ちゃんの分のお土産も買ってきましたよ~どうぞ~』
メルシーはお菓子の入った包みを蓮に渡した。
『メルシーさんありがとう後でゆっくり頂くよ』
『どういたしまして~
色々な種類のお菓子が入ったお菓子袋なんですよ~!お気に入りができるといいですねぇ~』
『あの~すみません』
蓮達に一人の少女が話しかけてきた。
『ん~何です~?』
少女の呼びかけにメルシーが答えた。
『エリィと申します、王都に引っ越してきてから日が浅く…師匠からは王都に馴染む為、今日一日王都を周るよう言われたのですが…
私一人ではどうにも上手く周れなくて…御二方見たところ王都観光をしているみたいなので…差し出がましい頼み事で申し訳ございませんが、どうか私もご一緒させて下さい!』
エリィと名乗る少女は蓮とメルシーに対し深々と頭を下げた。
『あわわ…頭を上げて下さい~そんなに畏まらなくてもいいんですよ~困った時はお互い様です!蓮ちゃんエリィさんと同行しても構いませんね?』
『ん?あぁ別に構わないよ』
(外国人に道は聞かれたことはあるが観光案内の申し出は初めてだなぁ…身内以外の人間が居るのはなんか落ち着かないな…って言ってもメルシーさんがこの調子だし仕方ないか)
『決まりですね!蓮ちゃん!エリィさん行きましょう!』
『メルシー殿恩に着ます』
二人はメルシーに付いていき、王都のあらゆる名所を渡った。
『いや~楽しかったですねぇ~私も久々の王都堪能できました~』
『俺も色々見れて楽しかった。安物だが剣も買えたしな』
『8000 ゼニの店頭最安値ですもんねぇ~
今度アリシア様に蓮ちゃんの専用装備作ってもらいましょう!』
『せ、専用装備…』
ゴクリ…
(転移前に色々と考えていたネタを使う時がこんな形で来ようとわな…)
蓮は息を飲んだのち沸き立つ感情を抑えきれずに口角が上がった。
『ふふふ…蓮ちゃんすごい顔してますよ~
なんかとっても嬉しそうですねぇ~』
『おっと…失礼つい…な』
タタタッ…
『御二方!彼方の男性から興味深いことを聞きました!奥の右角を進んだ所に新しく開店した魔法素材店があるそうです!一緒に行きませんか!?』
蓮とメルシーが話しているとエリィが凄い勢いで駆けてきて蓮とメルシーの同行を提案した。エリィに魔法素材店を教えた男性は笑みを浮かべ手を振り魔法素材店がある角を曲がった。
『おぉ~それは興味深い話ですねぇ~珍しい素材を買えた時のアリシア様のご機嫌な様子が容易に想像できますねぇ~蓮ちゃん折角ですし行ってみますか』
『そうだな…19 時までまだ少し時間もあるし…駐車場も近い手早く済ませたら大丈夫だろう』
『は~い、時間が惜しいですし早く行きましょう!』
三人は魔法素材店へ向かった。
『角を曲がって暫く歩きましたけどそれらしき店は見当たらないですねぇ~』
『そうだな…あんまり探しても駐車場から離れるだけだし今日はこの辺りで帰ろう』
『ですねぇ~残念ですけど今日は帰りますか~
…また今度行けたらいいですね~エリィさん帰り道気をつけて下さいねぇ~』
蓮とメルシーが道を引き返そうとし、エリィに話しかけたその時…
キャッ!
フードを被った怪しげな男がエリィを二人から強引に引き離し背後に周りエリィの首元に短剣を突き付けた。
『帰り道気をつけようって言った瞬間これですか~世の中物騒になったものですねぇ…そこの貴方…人質を取ったみたいですが何が目的ですか?』
メルシーは男に問いかけた。
『メルシー=グナーデ…またの名を泥沼の怪物…貴方には大きな借りがあるんですよ…貴方を完膚なきまでに痛めつけた後、利益変換させて頂きますよ…王都の外れの平原まで付いてきて下さい…
そちらの少年もご一緒に…貴方に用は有りませんが軍の警察部隊に告られても厄介ですしね』
男はメルシーの問いに答えた。
『こいつが噂の
恨みだとか借りだとかそれっぽい理由なんていくらでも言える。
メルシーさんこんな奴らにいちいちかまっててもキリがないぜエリィさんには悪いけど運がなかったみたいだな来世に期待してくれ』
蓮は男の言葉にありのまま思ったことを発した。
『蓮ちゃんの言うことは一理ありますねぇ~
人の心はないみたいですけど…』
メルシーは少し蓮の発言に引いた様子で答えた。
『おいおいそりゃないだろ…俺は今日知り合った人より家族を優先しただけだ』
『ん~私個人としてはエリィさんどうにかしたいんですけどねぇ…』
『た…助けて…お願い死にたくない…』
人質となったエリィは泣きながら助けを乞うた。その姿を見たメルシーは真剣な顔つきになった。
『蓮ちゃん…私、例え罠だとしても自分の生き方には後悔したくないんです。
助けられる可能性がありながら泣きながら助けを求めた少女を見殺しにした事を一生引き摺りながら生きたくはないんです』
『俺も後悔したくないよ…メルシーさん貴方をこのまま行かせて…貴方を失うことをね…』
メルシーの意を決した発言に蓮も本気で答えた。
『蓮ちゃん…私物語はハッピーエンドじゃなきゃ嫌なんです…
泣きながら最悪の結果を回避するよりも…
もしかしたら最悪の結果になるかも知れなくても皆んな笑顔になれる最高のエンディングを迎えられる可能性を棒に振りたくはないの』
『ハッ…清々しいまでの綺麗事だな…
0 か100 の運否天賦にかけるくらいなら俺は10 失っても90 を取るね…
メルシーさん俺にとっての90 は今日知り合った人じゃない…貴方だ!』
『ふふっ…私お花も自然も大好きな正真正銘の綺麗好きなんです。
私これでもこの王国では結構名の知れた特級魔導士なんですよ?
止めないでくれますね?』
『くっ…』
(これ以上は平行線だ…)
『エリィさん安心して下さいなすぐに終わらせます…
『話の流れ的に少しヒヤヒヤしましたが…何はともあれ…案内いたしましょう付いてきて下さい』
蓮の本気の制止は虚しく4 人は王都の外れの平原へと向かった。
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