第2話
『佐吉、ねねが居らぬが如何した?』
藤吉郎はねねが奥部屋に居ない事を不審に思い、側近の石田佐吉に問いただした。
しかし、佐吉の返事は分からないとの事だった。
(おかしいなぁ・・・
何処かに出掛ける話なぞ聞いてなかったが)
藤吉郎は頭をかき、ねねの行き先をあれこれ考えたもののまるで見当がつかなかった。
その頃、ねねは東山道を南に向け足早に歩いていた。
付き添う従者は侍女三名。
それぞれが手に包み物を抱え、ねねに遅れを取らないよう懸命に後を追っていた。
それほどに、ねねの歩みが速かったのだ。
ふと空を見上げると、絵に描いたような素晴らしい晴天だった。
街道に沿って見える琵琶湖もまた眩いばかりにキラキラと輝いていた。
本来ならのんびりと長浜の城から湖面を眺めてうっとりとしていたのであろうが、今日のところはそうはいかない。
今回の訪問には今後の人生がかかっているのだ!
ねねは改めて気持ちを引き締めながら目的地を目指したのであったー。
『・・・見えて来た。
やっと着いた!』
視界に燦然と輝く巨大な建造物が入って来た瞬間、ようやくねねに安堵の表情が浮かんだ。
目の前に聳え立つ大天主ー。
そう、ねねがやって来たのは藤吉郎の主君織田信長の居城・安土城だったのである。
無論、その目的が信長への謁見にあった事は言うまでもなかった。
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