第27話 地底湖の魔物
「どーくつ?」
「ああ。ガンドフさんの話では、この森を抜けた先に大きめの鍾乳洞があるらしい。そこにお目当ての鉱石があるんだとか」
大雨に見舞われ、ドワーフのガンドフさんと再会した翌日。
幸い雨も上がったため、俺たちはガンドフさんが探しているという鉱石を見つけに出かけていた。
「ドワーフのおじちゃんが探してる石ってどんななの?」
「『メルキス鉱石』って言ってな。翡翠色……緑に輝く鉱石で、アクセサリーなんかに使う貴重な石らしい。貴族が着けているのを一度だけ見たことあるけど、凄く綺麗な石だったな」
「ふーん。あくせさりーかぁ」
言いながら、メロは自分の腕に着けた海の色の腕輪を見やっていた。
ちなみに俺も同じものを着けている。
商業都市ガザドで一緒に買った大切なものだ。
「ま、俺としては、誰かさんが頑張ってプレゼントしてくれたこの腕輪の方が好きだけどな」
俺がそう言うと、メロはきょとんとした顔をした後、嬉しそうに尻尾を振って笑みを浮かべた。
「ふふ。うん、メロもあるじにもらったこの腕輪が大好き」
そんなやり取りをしながら俺はメロと並んで歩く。
そしてもうじき目的の鍾乳洞に着こうかという頃合いで、メロが何かに悩んだ表情を浮かべた。
「あるじ」
「うん?」
「ちなみに、そのしょうにゅーどーにある石って食べられ――」
「食べられません」
俺が先回りして答えると、メロはがっくりと肩を落としていた。
***
「うわー。とんがった岩がたくさん」
「これは大規模な鍾乳洞だな」
ガンドフさんにもらった地図を頼りに、俺たちは鍾乳洞までやって来る。
大きさもそれなりで、けっこう深くまで続いていそうだ。
中からは冷えた風が吹いていて、洞窟独特の雰囲気を感じさせられる
「さて、それじゃ奥へと進んでみるか。魔物が潜んでいるかもしれないから、慎重にな」
「うん。ドワーフのおじちゃんがごちそうを作ってくれるって約束だし、がんばろーね」
そうして、俺たちは鍾乳洞の奥へと進んでいく。
道中、やたらと長い鍾乳石を見つけたメロがはしゃいだり、コウモリ型の魔物の群れと遭遇して戦闘になったり、ヘンテコな植物を見つけて食べられないか悩ませられたりと――。
色々とありながらも、俺とメロの二人は洞窟の奥地へと辿り着いていた。
「ええと、ガンドフさんの地図によればこの先にメルキス鉱石の鉱床があるってことだけど」
「ここまで緑色の石は見つからなかったね。じゃあやっぱりここを渡った所にあるのかな?」
鍾乳洞の奥地。
そこには青く綺麗な水が溜まった地底湖があった。
ガザドで見た夜行魚の時とはまた違う、幻想的な光景に息を呑む。
「わー。すごい景色だねー」
「ああ。観光名所になってもおかしくないような場所だな。もう少し人里に近ければ大勢の人がやって来そうだ」
言いつつ、俺は青い水に手を浸す。
ひんやりとした水が心地良い。
「これは、けっこうな深さがありそうだ。渡るしかないけど、泳いでる途中でさっきみたいなコウモリとかに襲われると面倒だしな……。メロ、お願いできるか」
「ふふん。おまかせあれ」
俺は自信ありげな笑みを浮かべるメロから、服や腕輪を預かる。
そしてメロが狼の姿へと変身し、俺はその背に
「よーし、行っくよー」
メロが大きく跳躍すると、あっという間に対岸へと着地する。
「ごとーちゃく」
「うん、サンキューな。お、あっちに奥へ続く道があるぞ」
対岸の先にはゴツゴツとした岩場に挟まれて道が伸びていた。
恐らくこの先にガンドフさんが探しているメルキス鉱石の鉱床があるのだろう。
俺はメロの背から降り、その道を進もうとした。
と――。
「――っ」
突如、視線の先に影が落ちる。
背後に何かが現れたのだと察し、俺もメロも後ろを振り返った。
そこにいたのは、巨大な竜だった。
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