第12話 ブラックサーペント襲来
「この辺りからレミアナ
「おっけー、あるじ」
アクセリスの宿屋――水神亭での騒ぎを聞きつけた後。
俺とメロは、素材調達の討伐隊が行方不明になっているというレミアナ水郷へとやって来ていた。
「小さい川がたくさん。あっちの大きい川が宿屋のおっちゃんが言っていた場所だよね」
「ああ。エルメールさんによればあの河川沿いにある大樹の辺りがグリオフィッシュの出現場所……つまり、討伐隊の人たち向かった場所らしい」
「ふむふむ。それじゃあ、きっとあの遠くに見えるやつがそうだね」
レミアナ水郷は大小様々な川が入り混じっている湿地帯だった。
早く討伐隊の救助に向かいたいところだが、地面がぬかるんでいる上、所々に川があるせいで進みにくい。
まもなく陽が落ちるということも考えればぐずぐずはしていられないだろう。
「これは厄介だな。早く先に行きたいのに」
「ふふん。あるじ、メロにいい考えがあるよ」
「ん? それは何だ……って、うぉおおおおい!」
振り返ると、メロが服を脱いでいた。
いきなり何してるんだと問いかけたくなったが、すぐにその意図を察する。
「よっと、変身かんりょー。ほらあるじ、乗って乗って」
メロは人型から巨大な白狼へと姿を変えていたのだ。
(なるほど。この姿のメロなら湿地帯も簡単に抜けられるか)
俺はメロが脱ぎ捨てた服を回収して、その背にまたがる。
「それじゃ、行っくよー」
「お、おお……」
(すごいスピードだ。しっかり掴まっていないと風圧で飛ばされそうだな)
ぬかるんだ地面もなんのそので、メロは川を飛び越えていく。
最後に一番大きな川の中洲を経由して跳躍し、あっという間に目的としていた大樹の根元まで到着した。
「ふう。サンキューな、メロ」
「ふっふっふ。後でごほーび期待」
「はいはい」
俺はメロの背から降りて、周囲の様子を窺う。
この辺りに討伐隊がいるはずだが……。
「あれは……」
俺は大樹の根元、
そこには武装した兵たちがいた。
「おい! 大丈夫か!?」
「う……あ……。貴方は……?」
何人かはうずくまり、そして何人かは横たわり。
致命傷こそないようだったが、体の所々に負傷の痕が見えた。
「君たちがグリオフィッシュの討伐隊だな。エルメールさんから行方不明になっていると聞いて駆けつけたんだ」
「そ、そうですか……。それは、助かります」
「一体何があったんだ? いや、今はそれよりも無事帰還することが優先だな。メロ、皆を運べるか?」
「うん。このくらいの人数ならよゆー」
俺はメロの言葉に頷き、討伐隊の兵たちをメロの背に運びこもうとする。
「ま、待って、ください……。ヤツが、まだ……」
「ヤツ?」
背負った兵が何かを言いかけ、俺は問いかけようとする。
と、その時だった――。
「あるじ……! 後ろっ!」
「――っ」
メロの声で咄嗟にその場を離れる。
直後、河川から巨大な影が現れ、凄まじい轟音とともに俺の元いた場所を通過していった。
「コイツは……」
振り返ると地面や大樹の根がえぐられている。
幸いにも負傷していた兵たちには当たらなかったようだが、相当な質量を持った何かが襲ってきたのだと分かった。
「あるじ、あれって……」
「ああ、これは面倒なことになったな」
俺たちを強襲してきたのは黒く、巨大な蛇の形をした魔物――ブラックサーペントだった。
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