第54話『僕ワクワクしますぅ~』





 第五十四話『僕ワクワクしますぅ~』





 異世界生活二十六日目、早朝。

 第二基地本部ビル、司令長官室。


 昨日の昼にレイディから衝撃的なシステムバグを聞いてから、少しばかり深く考えすぎた所為せいか、なかなか寝付けない夜を過ごしてしまった。


 まったく、たったの九時間しか寝ていない、尺八ママが居なければ八時間しか寝る事が出来なかっただろう。


 俺が転生した時に得た能力で月面基地が出来るようになった、それは問題無い、問題は基地が設置された場所だ。


 名前の通り月面に出来た、出来たがその場所はこの惑星の周囲を公転する衛星ではなく、地球の周囲を公転する衛星『月』の表面だった。


 どう考えてもバグだ、有り難う御座います。


 何故、この惑星を周回する衛星ではないのか……

 今夜も見たあの衛星は月ではないのか?


 俺は尺八している尺八ママに聞いた。



「ンポッ、あれは『トゥキ』だよ? ンポッンポッ……」



 そっか、トゥキか、じゃぁ仕方ないな……

 翻訳ミスでもない、トゥキが衛星だと理解出来る……


 トゥキが綺麗ですねと言えば通じる、月として通じるのだ……


 しかしこの歯痒さは何だろうか?


 何故この世界はらんとこでカーブを投げてくるのか?


 僕は激しいイラちを覚え、その怒りを吐き出した。


 あ、あ、あ……ウッ。



「ンポッ……ゴックン、いっぱい出たね、よしよし」

「アふぅん、くすぐったい、ナデナデしないでぇ~」



 尺八ママの尺八アフターサービスはいささか甘やかしが過ぎる。亀頭を撫でるのは尺八で和楽を演奏している時だけにしてくれよなっ!!


 さて、そろそろ勃起するか。

 間違えた、っきするか。



『お早うございます司令、レイディです、朝早く申し訳ございません、少々宜しいでしょうか?』


『おはよう、構わんよ、どうした?』


『申し上げます。昨晩、月面基地との通信や物資輸送が可能となりました、既に小型偵察機と超小型諜報機の生産は開始しております、諜報部と共に地球へ送っても宜しいでしょうか?』


『通信と物資輸送か……諜報部が居るって事は人員もこっちから移動出来るのか?』


『いいえ、諜報部員は先ほど私が引いたガチャで組織し、編成画面で待機状態のまま月面基地に配属しました』


『え~っと……あぁぁ、カード化してるヤツを物資としてカードのまま送って、月面基地でカードから解放したって事か』


『はい、仰る通りです』



 それはちょっとした裏技になるのかな?

 ワープゲートが無いと星間移動は出来ない仕様だしな……



『俺が月面に行けるのはワープゲート開発後か』

『そうなりますね、もうしばらくお待ち下さい』


『いや、別に待ってないよ。取り敢えず、地球の偵察や諜報は自由にやれ、全部お前に任せる』


『畏まりました。それで……地球のご家族にご連絡は宜しいのですか? 携帯電話等の電波を把握すれば月面基地経由で通信可能です、人工衛星のジャックでも構いませんが……』


『連絡は不要だ……どうでもいい、家族なんて全く覚えていないし』



 記憶の片隅を必死に掘り起こしても面影の跡すらない、こうなると家族は居たのかと疑問に思うわ。


 そもそも俺は地球で死んでる、あの爆発でな。


 今更家族とどうこうしようとは思わんね。


 転生時の肉体再構築で容姿も変わったようだし、本当に今更だ。


 家族への連絡はどうでも良いが、日本の様子は知りたいな。


 何か重要なモノを見ながら死んだ気がするんだよなぁ……

 あと、豚骨ラーメン『うまかったい』が食いたい。



『では月面基地から日本へ小型偵察機と超小型諜報機を四千機ほど投入します。結果は本日中にお知らせしますね。ラーメンは諜報員に取得させた後に分析、増産体制を整えてからこちらに転送となりますので数日掛かります』



 え、そんな色々出来んの?



『余裕です』

『有能っ、好き』


『ぇあっ、ハイ、どうも(ポッ』



 秘書官が有能過ぎてペニスに効くぜ……


 ラーメン開発が終われば毎回諜報員が買う手間も省ける、って事は危険も少なくなるって事だ。


 まったく、本当に有能だなレイディは……

 取り敢えず、他のインスタント食品もオナシャ~ッス。


 あ、何だかノドが渇いたな、ママぁ~。



「はいはい、チュ~チュ~ね、よしよし」

「ちゅぱちゅぱ……スヤァ……」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 しまった、二度寝した……

 ふぁぁ、眠い……


 俺を抱いたままベッドで横になっている尺八ママ時計を見る……この乳首のち加減からすると、午前十一時七分、と言ったところだな。


 編成画面の時計を確認、十一時九分……さて、二分間のズレは何を意味するのか……?


 その時、俺の視線が尺八ママの右乳首を捉えたっ!!

 俺が枕にしていた左乳房の乳首と見比べる……なるほど。


 右の乳首がほんの少しちが鋭い……

 俺が尺八ママ時計を二分も見誤った理由はコレだな。



「ママ、俺が寝ている間、右乳首をもてあそんだね?」

「うん、司令の寝顔見てたらいつの間にかイジってた」


「…………んママぁぁぁぁっ!!」

「はいはい、チュッチュ、いい子」



 尺八ママの愛らしさに僕ぁハートを持って行かれたってワケ!!


 たはぁ~~、こりゃぁ参っちゃうなぁ~!!

 お昼ご飯もお預けかなぁ~、トホホ~っ!!


 そう思っていたら、レイディから報告。

 尺八にゃんにゃんサービスタイムをのがした。


 非常に遺憾である……っ。



『し、司令っ、あのっ』

『落ち着け、俺のペニスを思い出すんだ』


『ッッ、凄く、大きい……落ち着きました、有り難う御座います』


『それで、冷静なお前がそんなに慌てん坊のサンタクロースして、何があった?』


『ハッ、偵察機が日本国本州南西部上空から地上を撮影した映像によりますと……』


『本州南西……中国地方か、それで?』


『ダンジョンが在りました』



 大草原。

 いやぁ面白いですねっ!!






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