第51話『僕は正常、正常なんだ……っ!!』
第五十一話『僕は正常、正常なんだ……っ!!』
異世界生活二十三日目、早朝、名も知らぬ雑木林。
昨夜から激しくなった雨は風も勢いを増して台風の如し。
本日の移動開始は天候次第になりそうだ。
バリアが有るとは言え、俺は雨天決行が好きではない。
ジメジメした場所に多くの兵を留めて待機させるのも無駄。
と言う事で、俺のテントで任務を
世話係は主にお嬢様専用だな。
昨晩のお嬢様は意地でも貸し与えたテントを使わず、『
凄い交渉術だとレイディはお嬢様に一目置いたようだった。
交渉術だったのだろうか……交渉術だな。
そしてもう一方、荒くれナイツは日が昇る前にここを離れた。
リーダーはマルフォイカプセルにテントを収容し、ついでだからと俺がナイツ全員に配った指紋認証ロック式の黒い軍用ウエストポーチにカプセルを入れた。これなら上からポーチごと召し上げられる事はあっても紛失は無い。
荒くれナイツことマンゴル帝国南方遠征軍フェラート部『侯爵家次女追跡隊』の皆さんは、先頭に立つ百人隊長のモウカチン・コチンに
縁が有ればまたいつか出会うだろう。
テントの玄関に当たる場所で煙草を咥える。
左側からサッとセバスニャンの右手人差し指が差し出され、その指先に魔法の小さな火が灯った。
バニラの香りが周囲に広がる。
肺に入れた煙を空に向かってゆっくり吐き出す。
無言の別れは、嫌いじゃぁない。
「さぁ、朝飯だ」
セバスニャンが差し出す携帯灰皿に煙草を押し付け、俺は離れていく馬蹄の響きに
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
嵐のような大雨は昼を過ぎると弱まり、十四時頃には小雨になった。
目的地方面に目を向けると、雨雲の裂け目から日が
俺は出発準備を命じた。
各員がいそいそと動く、準備はオッケー。
お嬢様専用バギーも追加購入済み。
専用車の運転はmilfスキー粒子をブチ込まれて超人化し強制学習を終えたセバスニャン。スペースファンタジー仕様のアレコレを何でも
しかし問題発生、と言うか新事実を発見。
精霊紋を持つ人間にmilfスキー粒子を打っても超人になるが、紋無しに打った場合に比べると超人化がショボい。
調べた結果、精霊紋と繋がっている変な臓器が粒子増殖の邪魔をしている模様。
何だこの臓器は……と知れベてみれば何の事は無い、人間が持つ『魔石』だ。ダンジョンのモンスターも持っている『硬い臓器』である。
一応、取り除く事は可能だ。しかし、その代償にスキルや魔法は使えなくなる。
完璧な超人を選ぶか、魔法やスキル所持を選ぶか、二択だが、セバスニャンはお嬢様の成人後か結婚後に魔石除去の手術を受けたいらしい。
何故そのタイミングなのかは分らんが……彼なりに執事としてのケジメや
侍女の二人も、そんなセバスニャンの姿勢を
肝心のお嬢様は除去手術の必要が無い為、早々にミルフスキー粒子の恩恵を
恐らく、今まで体験した事がなかった『魔法やスキルの使用』と言う行為の疑似体験を楽しんでいると思われる。
聴覚や視覚の強化はすぐに解るし、筋力については言わずもがな、語る必要も無いほどハッキリ認識出来る。
無能と言われていた自分に、自分を蔑んでいた奴ら以上の力が
頭がアレな彼女がネチネチざまぁ目的の報復行動に出るとは思えん……が、どうだろうな。
まぁ、やりたいなら止めん、俺自身は手伝わんが、休暇中の兵士に手伝って貰うのは自由だ。
そのお嬢様は……バギーの助手席からアホなヤンキーのように箱乗りして俺に手を振っている。
楽しそうだな……報復とかどうでも良さそう。
それはそれでカラッとしてて好感が持てる。
「出発」
「しゅっぱぁーつ!!」
何故かお嬢様が復唱。
レイディのコメカミに血管が浮く。
逃げるぞナイスシャワー!!
≪ギュルンギュルーン?≫
いいや、レイディを恐れてなどいない。
≪ブオンブオーン?≫
フッ、女の喧嘩に男が紛れ込むのは野暮ってもんだ。
≪ギュルンギュルンブオーン!!≫
え、カッコ良すぎてオイル漏れしちゃう?
しょうがねぇジャジャ馬だぜ……
後でタップリ……オイル交換、だ。
≪ギュ、ギュルン……ポッ≫
…………いや無いわー。
何だ今の会話、俺は何処に向かっているんだ?
ナイスは女の子(設定)だがガチガチの機械だぞ?
じゃぁ俺は何か?機械ファッカーなのか?
アンドロイドで何かに目覚めて、イケナイ扉を開いた?
馬鹿な……有り得ない……
俺は箱乗り状態のお嬢様を見る、お嬢様の胸元を見る、俺のペニスは反応しない……
顔を逆に向け運転しているレイディを見る、レイディの胸を見ようと思ったら『何だか厚いわね』と言いながら胸をポロンするレイディ、僕は勃起をきたした……
そんな馬鹿な……
最後に、僕は跨るナイスの
そんな馬鹿な……
僕はナイスのボディでも勃起を……
何故か急に股間への振動が激しくなったナイス、高出力ミルフスキー核融合エンジンが俺のペニスを
僕は放心しながら遠くの空を眺めたのだった……
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