第45話『争いからは何も生ま……殺んのかオイ?』





 第四十五話『争いからは何も生ま……殺んのかオイ?』





 異世界生活二十一日目の午前十時、パイズル湿地帯に向かう途中で俺のペニスを激しく動揺させる事件が起きた。


 漫画やアニメでは定番のシチュエーション、敵に抵抗する為の策を持たない者達が多数の荒くれナイトに囲まれると言うアレだ。


 セオリー通りなら主人公が颯爽さっそうと出て行って荒くれナイツ(複数形)をアッーと言う間に鎧袖一触がいしゅういっしょく、助かった女性は即日開脚、主人公のハーレムメンバー入りを果たし肉便器と化す……


 その後、肉便器は立派な寄生虫に成長しハッピーエンドだ。


 よくある話だし、その設定も理解出来る、しかし、しかしだ、荒くれナイツに正義は無かったのか?


 そこが重要だ。


 この設定は多くの場合が序盤で起こる一幕。


 主人公が殺人童貞を卒業する為に世界状況を脳内で語り、異世界転移によって変えられた倫理に戸惑いを浮かべつつ、異世界に於ける命の価値を把握、ならばと無理やりハンムラビ法典理論を展開、剣には剣をと殺人の『KAKUGO』を決め、自分で発行したマーダーライセンス片手に虐殺を始めるのだが……


 荒くれナイツはその言動と身形みなりだけで犯罪者扱いされ、背景を語らぬまま死んで行くのである、そして八割の主人公が殺人後にゲロを吐くのである……


 つまり荒くれナイツは『主人公が殺人後にゲロを吐く』と言う『リアリティ(笑)』の為に殺されたと言っても過言ではないのだ……っ!!


 実のところ物語の設定上覚悟云々倫理云々は割とどうでも良いのだっ!!


 ナイツはゲロの為に死す、これが許されていいのか?

 いいや、否だ、断じて否であるっ!!


 真相をっ、私は真実を知る必要が有るっ!!


 だから私はっ、危険をかえりみずっ、やや座席を倒したナイスシャワーにまたがった状態で駅弁スタイルのレイディを串刺しにしたままっ、馬車の前方まで進んで来たのだっ!!


 そしてさり気なく、銃床ケツを支えている両手の人差し指をさり気なくっ、レイディが恥ずかしがる方の穴に向かってわせてっ、撫でるのです……



『ッッ!? し、司令っ、駄目っ、ダメダメっ!!』

『何が、駄目なのか、私には分からんな……ヌポッ』


『ンあっ……ダメェ……洗ってないのにぃ……』

『おやおやぁ、簡単に奥まで入ってしまうぞ?』



 レイディが背中に背負ったお気に入りの『中折れ式・水平二連レーザー散弾銃』に二本のmilfスキー粒子薬莢やっきょうをブチ込んでいると、馬車の中から四人の人物が降りてきた。


 男一人に女三人、まぁ予想通りだな。


 男は初老の執事、女は二人が……侍女かな、メイドにしちゃぁ服が上等に見える。


 最後の女は……金持ちのお嬢様ってのは服装で推測出来るが、貴族なのか平民の金持ちなのかは判らんな。


 あ、執事が荒くれリーダーに剣で腹を刺された。



“““キャァァッ!!!!”””


「グハッ、き、貴様っ、はかったな……」

「殺さないとは言ってない、ちゃんと聞いてたか?」


「グッ、無念っ……お嬢、さm……」


「そんなっ、セ、セバス、セバスニャーン!!」



 ッッ!?


 何故、この世界はカーブを投げてくるのか……っ!!


 セバスチャンじゃぁ駄目なのか?

 何故ダルタニャンと混ぜたっ!?

 誰か答えてくれ……っ!!



「ゲボッ、侯爵家にお仕えして五十と余年、私はまだ死ねん……っ!!」



 生きとったんかいワレェーーっ!?


 リーダーも少し驚いた模様。



「しぶてぇ爺さんだ、お嬢さんの前だから首はねなかったんだが、仕方ねぇ、今度こそくたばりな」



 荒くれリーダーは軽く掲げた長剣を振り下ろした。


 面白セバスの老いた首に長剣が当たる……前にレイディの散弾銃が長剣を消し飛ばした。



『ナイスだレイディ』

『ア、ア、ア、ハイ……』



 駅弁で突かれていながら体の揺れを物ともせず、左手一本で散弾銃を構え長剣を撃ち抜く技量は素晴らしい。

 

 長剣の背後に在った馬車やら林やらも吹き飛んだし、セバスニャンとリーダーにも散弾が当たって大変な事になったが、大丈夫だ、問題無い。


 俺はレイディとの駅弁入刀式を終え、黒い一式礼服を転移装着。


 レイディもいそいそと一式礼服を転移装着、何故かTバックだけを装着出来ずに困った様子で苦笑しつつ、装着出来なかった使用済みのソレを俺の内ポケットに仕舞しまった……今夜にでも使わせて頂く(キリッ


 俺は軍帽の角度を調整し、サイドミラーでカッコ良い軍帽の角度を確認してからレイディの手を取り二人で立ち上がる。


 そして、ライスシャワーにお礼を言って不可視化迷彩を解除し、セバスニャンに歩み寄る。



「怪我をしているようだな、大丈夫か?」

「司ッッ!! ブフゥーーッ!!」



 俺が紳士的なセリフを言うと、レイディが吹いた。

 大方、ヒドイ自作自演だとでも思ったのだろう。

 

 まったく……


 その通りだが何か?


 などと言ってる間に荒くれ異民ナイツから囲まれてしまった。


 右手をズタボロにされたリーダーが親の仇を見つけたような目で俺達を見ている。困ったな、親の仇と勘違いされている。



「テメェら……何モンだ?」


「大ニッポンヌ帝国の皇太子だが?」

「フィアンセです」

「……初耳だが?」



 何故かノリノリなレイディが三人の女性に向けて詐称、何故かドヤ顔だが可愛いのでケツを揉む。



「……大ニッポンヌ、帝国? 皇太子? ハハハッ、その皇太子様が滅びかけの国を二人でお散歩か? 舐めやがって、俺の右腕をこんなにしやがったクソは何処どこだ、何処に隠れてやがるっ、言えっ!!」



 俺はレイディを指差した。

 レイディは一歩前に出た。


 リーダーのコメカミに力強く脈動する血管が浮く。

 大丈夫? その血管切れない?



「……皇太子様よぉ、何のつもりだそりゃぁ、そのスケをくれるのかい? それなら気遣い無用だぜ、その女はもう頂く事が決まってんだ、最初からな。で、クソは何処だって聞いたんだがな、俺は」


「司令……」


「う~ん、じゃぁ、あの、ほら、そっちの二人、御者と護衛に矢を当てた最初の二名、消して良いよ」


「ハッ!!」



 レイディが肩にかけていた散弾銃を一瞬で構え直し、構えと同時に狙いを定めて引き金を引く。


 強い光を放った銃口の先から四名の荒くれナイトと林が消えた。


 ……消えたのが二名多いが、散弾なので仕方ない。


 レイディの早業、驚異的な範囲を攻撃対象に収める銃の威力、そして――



「ヨシッ、そこの執事、コレを呑み込め、コレは、あ~、えっと、エリクサーを詰めた薬だ」



“““なっ!!!!!!”””



 ――最後は回復剤。

 これで面倒な問答は減るだろう。


 リーダーの方にも回復剤を一つ放る。

 リーダーは慌てて無事な左手を伸ばしカプセルを掴んだ。



 さて、話を聞こうか。


 っと、その前に……



「レイディ、ヒマな大隊を寄越せ」

「ハッ、畏まりました」



 ヨシッ、準備オッケー。









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