第44話『この目でしっかり見定めるんだっ!!』






 第四十四話『この目でしっかり見定めるんだっ!!』





 異世界生活二十一日目、朝。

 ダンジョン入り口前の広場、天気は曇り。


 貧民の移住は昨日の昼に終わり、午後から翌日の現在に掛けて文官組が『ダンジョン街』の説明やら住民登録やら寝床の手配やらをダンジョン一階でやっている。


 今日も移住者の手続きで一階層は大変そうだ。

 俺はまったく大変じゃないので本拠地候補の視察に出かける。


 視察メンバーは俺とレイディだけ。


 二人だけでは危険だと反対されたが危険じゃないので押し切った。


 不可視処理された無音のバイクに乗り、バリア全開の装備と殺傷能力高めのレーザー兵器で護りを固め、更に、編成画面から大部隊の即時召喚が可能である私を、誰がどうすると言うのか?


 移動中はレイディが編成画面の基地に戻って俺を全力でサポートしてくれる、ここまですればまず危険は無いと見て良い。


 俺は見送りに来た数名の侍女と護衛に出発を告げ、愛機ナイスシャワーにまたがる。



「行くぞナイス……発進」

≪ギュルンギュルーン!!≫



 あ、バカ、速い速い、安全運転でお願いします。


 ギュルン……



『この速度では到着が大幅に遅れますが……』

「問題無い、時間は幾らでも有る、それに――」


『それに?』


「君がいつも俺の背中を支えてくれているので銃後の備えは万全、お蔭様で俺はこの世界に来て以来『時の長短遅速ちそく』が関わる諸問題で不安になった事が一度たりとも無い……君が上手く処理すると知っているからだ(キリッ」


『ドキーーン……然様さようですか(好き』


「今回は長いデートのつもりで行こうじゃないか」

『ドキドキーーン……ハッ、畏まりました(挿れて』



 ではナイスシャワーよ、もっとゆっくり行きなさいね?


 ギュ、ギュルン?


 そうそう、このくらいでオナシャス。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 しかしヒドイ道ばかりだな、手入れがされていない。

 人通りの多い日本の山道の方が数倍綺麗だ。


 馬車や荷車が少ないからか、わだちが轍の役目をしていない、地面は少し凹んでいるだけ、これじゃぁ車輪がズレそう。


 そもそも車体がガンガン揺れそうなほど道が荒い。

 宙に浮く乗り物が有って良かった。



『司令、このままのペースで進みますと、目的地のパイズル湿地帯には四日後の昼頃到着予定となります』



 そうなの? 詳しいな……

 またレーダー施設のレベル上げた?



『それも有りますが、少し前に組織した諜報部による情報です、この国と周辺国に関する相当量の情報を得ております』



 諜報部……知らんな。ケイジィの御庭番衆とは別か。


 つまりゲームに無かった部隊を俺以外が創ったと言う事だな……まぁレイディだってほぼ全権委任された副司令だ、考えれば当たり前の事か。


 部下の自発的な行動も異世界召喚で手に入れた能力の一種だと思えばいいか。


 それに諜報は重要だ、戦略ゲームの秘書官ナビが基本情報をゲーム開始当初から持っている様なもんだ。


 あ、って事は、各国の通貨とか文化とか、色々知ってる感じか?



『そうですね、現在も随時情報収集しております。お役に立てるかと』



 そりゃ結構、色々とやり易くなった。


 これからは……って、ん? 何だ?

 あぁぁぁぁっ、あれはーーっ!!


 異民族の一団が何だか高級そうな馬車を追っている!!

 馬車には何故か上位貴族の娘が乗っているに違いないっ!!


 僕は異民族に追われる馬車の中に詳しいんだ。



『馬車を助けますか?』



 何を馬鹿な、追跡して異民族と馬車のどちらが悪いか確かめながら十時のオヤツを食べるに決まっているじゃないか。


 君は優秀だが真面目過ぎるのが玉にキスしな、間違えた、玉にキズだ。



『え、お玉様にキスはしなくて良いのですか?(ションボリ』



 まったく、この真面目秘書官はよぉ……


 だが、嫌いじゃぁないぜ?



 俺はバイクの背もたれを倒し、ズボンのベルトを外してから、レイディに出撃命令を出した。


 ウッ、玉にキスの前に君へ入刀が先か……嫌いじゃぁない。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 俺とレイディがイケナイ任務に就いて2km程移動した辺りで馬車が止まった。


 馬車の前方からも異民族の騎馬隊、挟み撃ちだ。

 俺達は馬車を追っていた集団の後ろに付けて観察。


 騎馬隊、馬車、騎馬隊、俺達、あまり意味の無いサンドイッチ状態だな、俺とレイディが無関係過ぎて草。


 停車早々、馬車の御者ぎょしゃと護衛らしきハンター?が前方の騎馬隊から一斉騎射されて射殺いころされた。文字通りハリネズミだ。


 馬車の中から女の悲鳴が聞こえる……三人?

 女が三人居そうだ、男は……この角度では見えんな。


 馬車の横と後ろは木製の鎧戸よろいどが付けられている、御者が死んで悲鳴が上がったって事は、前方は鎧戸無し……でも態々わざわざ回り込んで見に行くのは面倒なので、ここで大人しく入刀を続けまウッ。



「さぁ降りなお嬢さんっ、アンタに手は出さねぇよ、それは上から厳命されているからな。だが、御付きの奴らは……アンタ次第だ、もう二人死んじまったぜ?」



 むむむっ、何か隊長らしき黒髪のダンディー細マッチョが脅迫じみた話術で何か言ってるっ!!


 二人が死んだのはお前の所為せいだと、死人がまた増えるかもしれんがそれもお前次第だと、殺人犯が論点をズラして何か言ってるっ!!


 こ、これはどうなるんだっ!?

 おにゃの子達は投降するのかっ!?


 それとも『学校に行きますの』と言って登校するのかっ!?


 そして登校したそこは異民族の輪姦学校で結局エッチな文章を投稿するハメにっ!?


 ゆ、赦さないっ!!



「し、司令っ、どうしたんですか急にっ、ア、激しいっ!!」


「り、り、輪姦学校は僕も入学出来るのですかぁーーっ!!」


「キャッ、鬼ピストン凄いぃぃっ、イッぐぅぅぅぅ……」



 クソッ、輪姦学校が頭から離れない……っ!!




 もう少し近付いて監視しなきゃっ!!(使命感







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