第43話『察してクレメンス』
第四十三話『察してクレメンス』
異世界生活十九日目、朝、メタル製錬施設本部前。
レディオ体操を終えて体操カードにハンコを貰う子供達。
運動の後は朝食だ。
子供達が駆け足で食堂に向かう。
その子供達と一緒に走るアホエルフ……
前田ケイジィ氏が股間の棒に期待を乗せ、そのエルフ『アイエ』を追った。昨日からまったく相手にされていないのに凄いガッツだ。しかし何と見苦しいガッツだろうか、子供達の反面教師として推挙したい。
そんなガッツ前田は胸に『精霊紋』が無い『紋無し』、無能だ。
しかし追われるアイエは違う、そして正常な差別主義者である。
そう、アイエは普通に無能を差別するが、俺の特殊な力と全体的な戦力を見て『無能』に疑問が湧いたようである。現に今も無能の追跡から逃れられていないので困惑気味だ。
俺達と接する時間が長くなるほど疑念は強まるだろう。結構な事だ、時間は掛かるだろうが理解する余地は有る。
しかしまぁ、比較的柔軟な考えを持つ人物でもこんなもんだ、思想は簡単に曲げられん。
ショタニアスとマルデビッチの考え方が異端であって、アイエの方が正統な多数派。そしてそれで構わん。
考えを改めろと言うつもりも無いし、無能の存在に対する受け入れ姿勢も期待していない。
不快なら互いに距離を置きましょうって話だ。
俺的には消えてもらうのが一番良いね。
そもそも『最低限の生活保障』と言う点では俺の宇宙軍と迎え入れる民衆だけで全て完結している、第三者の意見は必要無い。
妥協案や歩み寄り、時間を掛けた会談や
恐らくこれから他勢力との接触が増えるだろう、その時にこの『無意味』と言う事実を念頭に置いて会談なり何なりに
力む必要が無い生活は貴重だ、その生活を維持する為にも外圧絶対ブッ殺すマンになろうっ!!
おっと、レイディがいつの間にか隣に立ってた。
取り敢えずケツを揉む、何か用ですか?
「司令、移住予定の民衆ですが、先頭集団は二時間後に到着予定、最後尾は明日の午後到着予定。最後に到着予定の老人と子供が多い後発組は予測通りの歩行速度です」
「約24kmを三日掛けて歩くのか……逆に難しいな?」
「彼らはまだmilfスキー粒子を摂取しておりません、今は回復剤で完全回復しただけの人間ですから」
「あぁそっか、まだ人間辞めてなかったな。その辺も考えんとなぁ」
「そうですね、朝食後の会議で話し合いましょう。ところで司令、そろそろ『母星登録』を考えて頂きたいのですが……」
母性登録? エロゲの話?
あ、母星ね、母星登録ね。
俺の知るゲームには無かった言葉ですぞ?
「銀河攻略の本拠地となる惑星の事ですが、通常は後方支援全般を担います。また、母星登録した惑星が艦隊等のワープ基点になります」
ハハ~ン……なるほど。
母星とはゲームで最初から所有してた星の事だな。
艦隊や基地本部と一緒に消滅したって言ってたが……
なるほど、確かに母星が無いと困るな。
資源惑星以外に出撃した艦隊が自動で戻れるし、ゲームの仕様通りなら所有資源惑星に在る艦船以外の軍需品は全て母星で一括配分処理が可能になる、つまり、母星が集積所の役割をするが、物が本当に集まるわけではない、システム上そうなっているだけ。
しかし、実際は母星本部の指示一つで物が瞬間移動した事になる。これは実に素敵な機能だ。ゲーム通りなら、だが。
あとは……最初の本拠地、母星にだけ建設出来るのが『セントラルタワー』、そしてそこに『中央政府』が置ける。どちらも内政に強力なバフが掛かる、ゲーム後半では最重要の施設と機関だな。
ふむふむ……
母星登録しない理由が無いなっ!!
「レイディ君、登録してくれたまえ」
「畏まりました、次は本拠地、基地本部を
「そりゃぁ君、決まっているじゃないか、せっかく道案内も手に入れた事だし」
「と言うと……北の森でしょうか?」
「そこは通り道だな、俺が欲しいのは北東の『パイズル湿地帯』だ」
少し前にケイジィとのパイズル湿地の話をした。
その時に基本三施設を置こうと考えていた場所ですな。
「どうだ? 周囲に眠る資源量や土地の広さは文句無し、高得点だろ」
「なるほど、天然の防壁ですか。山と大河に挟まれた立地は本拠地を
「あぁ、丁度良い、ダンジョンに向かう視線を
「やはりメインはダンジョンですか」
「当然だな、無限湧きの資源供給元を下に置けるかよ。拡張しまくってパイズル湿地帯の下から本拠地に物資を送りたいね、何年でも
「その頃には戦艦も揃っていると思うので戦いと言う戦いにはならないと思いますが……そもそも、籠城したくても敵が囲んでくれませんよ、本拠地の範囲が広すぎて」
「君には浪漫が足りん、絶望的に足りんよ」
別に良いじゃないかっ、圧倒的な武力を持っていても籠城したくなる少年心を忘れない男が居たって良いじゃないかっ!!
僕だって
そして敵が僕の戦艦を見て『何だありゃぁっ!?』と驚いて言ったら、すかさず僕が『それって俺の戦艦が小さいって事だよな?(キョトン』ってしたいんだよぉっ!!
レイディはこの辺りの浪漫が解っていない……
「申し訳ございません司令、出来ればその浪漫を私にも教えて頂きたいのですが……」
「あ、それは駄目です、僕のプライドに掛けてっ!!」
そんな恥ずかしい事……
出来るわけないじゃないか。
レイディは男心が解ってないな、ヤレヤレ。
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