第41話『隠れた五番でっ!!』





 第四十一話『隠れた五番でっ!!』





 異世界生活十八日目、お昼。

 お天気は朝より悪くなりました、雨が降りそう。


 テントのベランダから王都を眺めるヒマな俺。


 第三城壁区の下級平民による暴動が大きくなった、ウケる。


 第二城壁内から結構な規模の鎮圧軍が派遣されたが……焼け石に水だな、第三城壁区にはハンターギルドが在る、気の荒いハンターも多い、そんな奴らが平民に味方して暴れている。


 戦闘に慣れた有能な駒と、その辺に居る生きた弾避けの数じゃぁ圧倒的に軍が不利だ。


 そもそも第二と第三じゃぁ住民の母数が違う、競争社会に於いて各種能力が低い方の人口が多いのは当然だ、順位を付ければ必ずピラミッド構造になる。


 この王都の場合は第三城壁区のブルーカラー労働者が汗水垂らしてヒモジイ思いをしながら第二と第一区の上流階級の生活を支えているが……


 そうは言っても事実として最多住民は当然ブルーカラー労働者なわけだ。


 つまり、支配階級の権威や権力等に畏怖を覚えなければどう動くか分からない、上からの抑圧が消えた場合に大人しくしている保証など何処どこにも無い奴らが最多と言う事だ。


 そんな彼らに一摘ひとつまみの暴動調味料を加えます。

 既存の権威権力にまったく関心が無いアンドロイド軍団です。


 軍団の行動を邪魔すると殺します、不躾ぶしつけに声を掛けると殺します、無意味に騒ぐと殺します、立場をわきまえず態度が生意気だと殺します、権威をちらつかせると殺します、保持権力を語ると殺します、保護対象となった者への態度次第で殺します。


 そして最後に、司令長官が不快に思えば殺します。

 無論、上も下も平等に殺すので安心してください。


 今までおごり高ぶっていた役人の頭を撃ち抜きます。


 食堂の雇い主の頭も、強欲な金貸しの頭も問答無用で撃ち抜きます。貧民窟の住民でもクズは並べて殺しました。


 しかし、年老いた病気の母を背負ったままひざまずき頭を下げ、我が軍に慈悲を乞い、母を救ってもらうその代償に『俺のこの体をっ』と身を差し出した平民の青年は気に入ったので殺しません。


 無論、母親も救ってあげよう、良い教育をした賢母である。


 この親子は平民だ、貧民ではないし無能でもない。しかし気に入ったので助ける、青年が自分の立ち位置を把握していたのが良い、母親にそのあたりの教育を聞いてみたい。


 他にも救うべき一般市民や保護すべき役人等は居るようなので、監視班にも手伝ってもらいつつ引き込んでいく。


 ……とまぁ、このような感じで出自や階級を問わず差別無く殺し、現状での立ち位置と立場を把握したと思しき奴らは囲う対象となり得る事を第三城壁区の奴らに見せた。



 結果、暴動から市民革命へ格上げ決定。第三城壁区の役所や兵の詰め所等は住民に占拠され、第二城壁区との連絡路は両側から門が閉じられ遮断された。


 すると、王都で働くほぼ全ての労働者を第三城壁区から得ていた第一区と第二区は都市機能の大半が停止。しかも何故かハンター共が王都を護る最も重要な『第三城壁を』破壊する始末。意味不すぎてウケる。


 見たまえあの瓦礫の山をっ!!


 元々壊れていた南側の第三城壁と、今朝の城門破壊でハッチャケたショタニアスがレーザーで溶かした西の二面崩壊は特に酷い、異民族の侵入待った無しワロタ。


 なかなか面白い展開だが、まだ城は動かない。この状況も予知の範囲だろうか、まぁどうでも良いな。


 俺達が関わらなかった第三城壁区市民の皆様には王がキチンと補償するだろう、大丈夫だ、問題無い。


 それはさて置き、暴動に参加していないハンターや第二区の騎士集団が城壁を崩壊させた犯人捜しを始めた。


 捜査班の中には俺をガン見して震えている騎士も居る、見覚えのあるツラだなぁ……城務めから左遷されたのか?


 城を出る時にお前がトドメのケツ蹴りをしてくれたお陰でケイジィに会えた、ありがとな~。


 今は何もせんよ、最期の時が来るまで震えてろ。


 だいたい今の俺にはお前みたいなゴミカスの相手をする時間など無い、俺はもっと大切なモノを探さねばならんのだ、マルデビッチの話によると第三区の役所には……



『こちらレイディ、司令、残念なお知らせです』


『……うむ、言ってみたまえ』


『例の文官が左遷先の役場で殺されていました』



 ッッ!!


 そう、か……


 ……探し物は、永遠に見つからん、か。

 サラバだ、ケツ蹴り公金横領クソ文官……っ。



『昼食を終えたら撤収だレイディ、我々の力を見てなおダンジョン街への移住を望まん奴や疑っている奴は放っておけ。アホは要らん』


『今まさに城から飛び出して来た勇者共はどう致しましょう?』


『あれは路傍の石だ、気にするな。移住する民衆に被害が出たら王都を消滅させる、そう考えていれば予知の勇者が何とかするだろ。一応後方を警戒しつつ撤収を開始』


『畏まりました』



 何と言うか、宇宙規模の武力を持っていると、全てがちっぽけに思えてくるんだよね。


 戦力が整って来た今、王だの勇者(笑)だのと言われてもねぇ?


 俺の資源惑星を奪いに来るような宇宙の強敵以外はちょっと、ねぇ?


 極端な話、俺に利益をもたらさない人間と関わりたくないんです。例えば、今まさにこっちへ走って来ている三匹の猿とか、利益とは真逆の存在だろ?



「おい、お前っ、待てクソガキっ!!」

「待てっつてんだるぉぉっ!!」

「無視すんな無能がっ!!」



 コイツらは……魔王討伐隊に居たな、逃げ帰った負け犬か。


 予知の勇者が居るならもう関わる事は無いと思っていたが、これはどういう事でしょう?



 一、アホの暴走。

 二、予知の結果が悪くは無かった。

 三、この先の展開を予知出来ていない。

 四、アホが邪魔になったので魔王にらせよう。



 三以外は有りそうやなっ!!













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