第27話『問題無い、想定内だ……っ!!』





 第二十七話『問題無い、想定内だ……っ!!』





 行くぞ愛機ナイスっ、勇者狩りじゃぁーっ!!

 ブオンブオーン!! ギュルンギュルーン!!


 どけどけどけぇ~、き殺すぞ虫けら共ぉ~!!


 しっかし湿地帯は本当に両生類が多いですなぁ。

 異世界仕様なので体がデカすぎだけどね。


 ブオンブオンブオーン!!


 ギュルンギュ『ドガッ!!』


 あ、一匹跳ね飛ばしてしまった。でも生きてるな。



「司令~、養殖で増やす分は狩らないで下さいねぇ~」


「あ、ハイ。レイディに怒られたぞナイス」

『ブ、ブオン』



 プップー、ハ~イそこのカエルさんどいて下さいね~。


 ドライブが楽しくてすっかり忘れてたわ、そう言えばダンジョン内で養殖するって言ってたな……換金用と食用で考えるなら狩りより効率良いよな当然。


 食材加工施設のバフも掛かるだろうし、スライモ粉末を混ぜたエサ食わせたら養殖もはかどるかもしれん。


 そう考えると……

 何だか轢き殺す気分じゃなくなったな、ナイス。


 ギュルン。


 レベル上げの必要も無いし、予定通り子供達に俺達は移動だけにしとくか。


 愛機ナイスシャワーよ、速度を緩めるのです。

 ギュルンギュル~ン……

 はい、サンキュー。


 ナイスのボディを一撫でし、支給品の双眼鏡で周囲を見渡す。


 ……これと言ってめぼしい物は無い。

 大隊の進攻も順調……


 これはもう下り階段まで直進コースだな。

 でも折角だから少し迂回してドライブしますかっ!!


 ブオンブオーン!!


 よし、河が在る東に向かって進むのです、安全運転で。


 ギュルンギュルンブオーン!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 特に問題も無く第十四階層を攻略。

 そのままの勢いで第十五階層へ。


 十五階からは鉱山地帯になる、足場は悪いし道は狭いが、宙に浮く戦闘車両に悪路は関係無い。


 道が狭くなれば高度を上げて進むだけだし、何なら道以外を進めばいい。


 バギーが足らずに歩きになった部隊も道無き道をガンガン進む。無論、進攻速度はバギーに劣るが、アンドロイドを舐めないで頂きたい。普通の人間だったら滑落やら何やらで死人続出だ。


 歩きの部隊に速度を合わせて進攻する必要が有ると断じる程の敵も居ない。敵は数種の鉱物系ゴーレムと鳥系魔物、車両部隊はそいつらを駆逐しながら後続を待たず進む。


 十五階のボス部屋には転移魔法陣が在るからな、そこは迅速に抑えるべきだと昼食時の小会議で決まったので寄り道もしない。


 フロアの全体像はレイディが把握済みだし、鉱石のサンプルも行軍しながら手に入る。無駄な事はせずボス部屋確保を急だ。



「坊ちゃん、見えてきたぜ」

「……あぁ、デケェ門だな、アレがボス部屋か」



 アタックバギーの運転席に乗って俺と並走するケイジィが窓から腕を出して前方を指差した。


 ケイジィは自動操縦を切って運転している、何で初めて乗るスペースファンタジー車両を簡単に運転出来るんだろう?


 何気にスペック高いなコイツ……


 ところで、何故、助手席の侍女は体を横に倒してケイジィの股間で頭を上下させているんだ、不思議だな?


 ……やっぱコイツ頭がアレなんじゃないかな?


 後部座席のハッチャクも侍女から大しゅきホールドで固定され上下運動の台座と化している……



 何だろうこの激しいモヤつきは……


 ……俺が間違っているのか?

 一人でバイクに乗った俺が間違えたのか……?


 いや俺は間違っていない、今は行軍中だ、休憩時でもない、俺は正しい。オカシイのは頭がアレな原住民ズだ。


 レイディやベルデを見てみろ、パソコンのキーボードに付着した何か変な黒い汚れを見るような目でケイジィを見ているじゃないか。


 ケイジィが御庭番皇族に指定されてなかったら銃殺必至という表情だ。まぁ作戦終了時には矯正プログラム行き確実なわけですが。


 そこでどんな矯正が行われるか知らんけど、一夫多妻が当たり前の世界で生まれ、尚且なおかつ最底辺で育った男に性道徳を説くのは困難を極めると思われる。



 などとダンジョン攻略に関係ない事を考えていたらレイディから通信が入った。通信を受け取る機器など身に付けた覚えは無いが、通信が入ったのです怖い……



「……どうした」


『ボス部屋の一部で新たな敵性生物が出現しました、数は三』


「?? ボスが手下を召喚したんじゃないのか?」


『生体反応は登録済みの人間です、恐らく召喚陣の部屋に現れた勇者かと。現在はその三名は階層ボスと思われる存在を囲み……たった今殺害しました』


「ふぅ~ん、予知があるにも関わらず三人でやって来たのか……」



 よほど自信が有るのか、それとも予知の範囲に自分の死が入っていなかったのか……いや待て。



「そいつらはどうやってダンジョン一階に在る転移陣を使った? 入り口はテントで塞いでいる、突破されたのか?」


『いいえ、入口からの侵入は有りません』


「……となると、透明化とか転移系スキルか? おいケイジィ、ダンジョンの転移石ってヤツはダンジョン外からも使えるのか?」


「いいや、使えなウッ、階層に在る転移陣の上に乗って使ウッんだ。何かアッたのかい?」


「ボス部屋に勇者が現れたようだ」


「そいつぁヤベウッなぁ……撤退するのも手だぜウッ? 勇者が持つと言われる圧倒的な強さの固有スキル相手じゃぁさすがの坊ちゃンッも……」


「問題無い、俺も奴らと同郷だ、勇者認定は受けていないが異世界人としての能力も持っている、恐れるな」


「な、なウッだってぇ~!?」


「戦力勝負なら尚更なおさら問題無い、王国の召喚勇者全員とやり合っても負ける気がせん、傷一つ付かんよ、俺も、お前らもな(多分」


「ナンテコッタ……坊ちゃンッが異世界勇者と同郷ウッだったとは……じゃぁ坊ちゃンッは異世界に在る帝国の皇族だったアッーのか……」


「そんな感じだ。そしてお前とハッチャクはここでテント張って何発か抜いて来い……鬱陶うっとうしいにも程が有る。レイディ、ボス部屋前をテントで固めて陣を張れ、レーダーでボス部屋内の動きも注視しろ」


『畏まりました。転移やステルス性認識阻害と思われる行為が認められた場合は即殺で宜しいでしょうか?』


「構わん、奴らが持つ知識も要らんから確実に殺せ」


『ハッ』



 はぁ、まったく、これだからチートは……ブツブツ。


 先に十五階層の転移陣を取られたのはしゃくだな、一足遅かった。


 まぁ、すぐに奪取するんですけどね、ガハハハハ。












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