第25話『そんな「何言ってんの?」的な顔で言われても』





 第二十五話

『そんな「何言ってんの?」的な顔で言われても』





「お早う御座います司令」

「う、うむ、お早う……」



 異世界五日目の朝、寝ぼけまなこでログインボーナスを入手した瞬間、ベッドの隣に長い桃色の髪を後頭部に結い上げたクッソ綺麗な美女が立っていた。


 勝手に出撃した完凸進化済みの星4レイディですな。


 編成画面内をワチャワチャ歩き回っていた三等身の面影は無い。


 頭に有ったゴーグルも無いしロボみも皆無だ……


 精神が強化された俺でもキョドる美貌、青少年に対して凄まじい破壊力を誇る魅惑的な肢体、高級士官用の軍服は彼女用にカスタマイズされているのだろうか、上着の胸部は『乳袋』と呼んで差し支えない勃起案件な造りだ。


 膝まで有る黒いロングブーツは無意味にヒールが高い。


 右腰の拳銃は俺と同じドワルサー、しかし左側にムチも下げてある。


 何と言う、何と言うセクシー欲張りセットか……っ!!

 そんなナリではハッチャクが一瞬で射精してしまうっ!!


 いやその前にっ、若返った俺の体が反応をっ!?


 ば、馬鹿なっ、これはいつもの朝勃起とは違う……月に二~三回あるカチンコチンの朝フル勃起……っ!!


 レイディとの初顔合わせ的な場面で何故っ!!

 何故この日に限って朝フル勃起をっ!?



「司令、本日の予定は――おや、今朝はまた一段とり返っておりますね、おしずめ致しましょうか?」



 クッ、コイツ……っ!!

 何て魅力的な提案を……っ!!



「あと数分で両殿下が御迎えに参りますが……」


「オナシャス」

「畏まりましング……」



 アッーーーーーー……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「お父さん、何かイケナイ香りがする……このお姉さんは誰?」

「クンクン、おとうしゃん、おはよぅ~、クンクン」


「あぁお早う。彼女は私の秘書官、まぁ我が軍のナンバー3、池田さんの次に偉い軍人だ。よろしく頼む。イケナイ香りは時々ただようので気にするな」


「初めまして両殿下、レイディと申します」


「……ムムッ、よろしくぅ」

「クンクン、お姉ちゃんのお口から……?」



 こらこらカーリ、お姉さんの周囲をクンカクンカするな、勘の良い子は嫌いだよっ!!


 さぁ、朝のレディオ体操が始まるぞ、お外に行きましょうねぇ。


 二人を促して一緒に寝室を出る。


 俺の後に続くレイディが妖艶な笑みを浮かべ、その赤く柔らかい唇をペロリと舐めたので激しくケツを揉む。


 まったく、上官に対して取って良い態度ではない、生意気だっ。


 僕は上下関係に厳しい事で定評が有る。

 まったく、今夜は『わからせナイト』だっ!!



 無論、オールナイトで、な。

 まったく、困ったもんだ。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 朝のレディオ体操はいつもの様にとどこおりなくスムーズに終了……するかに見えたが、ケイジィとハッチャクの下半身がレイディに過剰反応した為、二人は体操中止、表情を無くしたベルデが率いる侍女達にテント内へ連行された。


 はぁ、困ったボッキーズだ、まるで猿だな。


 他の男アンドロイド達を見習え、全員レイディと目を合わせないじゃないか、まぁ恐怖で目を逸らしているんですけどね。


 レイディは何故かガチャで自分のかぶりカードが出易く、その度に吸収して強化しているのでアンドロイド的に凄く怖いらしい。


 僕には判らない凄味が有る模様。

 ただのクッソ綺麗なお姉さんにしか見えんがね。


 さて、レディオ体操も終わったし、本日の攻略を始めましょう。


 レイディに視線を送る。微笑まれた。

 クッ、お前ちょっと部屋来いよ……ハァハァ。



「司令、第十四階層の攻略は予定通り一個大隊を出撃させますが、宜しいでしょうか」


「大隊って兵士何人?」

「六百五十六名です」



 多いな、もうそんなにガチャ回したのか……



「そんなに居るなら俺達はやる事無いな、キッズのレベリングは大丈夫か?」


「問題有りません、しかし、そろそろレベルも上がり難くなってきたようですので、効率的なローテーションを組んで魔物を討伐させます」


「ふぅ~ん、まぁ安全第一でオナシャス」


「畏まりました。本日から移動に軍用車両が使用可能となりましたので、安全性も攻略速度も上がるでしょう」


「おぉ~、もう開発出来たのか、ご苦労さん。でも湿地帯じゃぁ……」


「うふふ、我が軍の車両は全て宙に浮いております、ご安心を。生産された車両は格納庫に入れてありますのでご確認下さい」


「ヒュ~、やるじゃぁん」



 どれどれ、格納庫……ふむ、台数はまだ少ないが、小型車(宇宙戦争仕様)は全車揃ってるな……ヨシッ!!


 ……いやヨシッじゃないが。


 何だコレ、説明文に書いてある車両のサイズがオカシイ……

 人員輸送トラックは小型って書いてあるのに全長200mだ……


 この設定考えた奴、ロマンを詰め込みすぎだろ……ほぼ電車やん。


 じゃぁ大型トレーラーはどんだけデケェんだって話だよ……


 結論、小型輸送トラックは出せんなっ!!



「うむむ、このアタックバギーってヤツが最小か……それでも十人乗りだな、デッカ」


「二個分隊が搭乗する車両ですね、小型ですが攻守共に優れた戦闘車両です。このフロアなら活躍出来ます、生産を増やしますか?」


「地上もコイツだけで良いような気もするがね、取り敢えずコレの量産で行こう、メタル資源地の確保もまだだしな、コレで十分だ」


「畏まりました」


「まぁ急ぐ必要も無い、今日は格納庫に有る分を出して進もう」



 さぁ子供達、ちょっとそこを退くのです、今から僕がイカス車を出すかんねー。



「って言うか、斥候隊とかが使いそうな一人乗りのバイク的な物が欲しいよなぁ」


「?? 司令の貸倉庫には初めからエアバイクが一台御座いますが……?」



 いや知らんが?

 だから「大丈夫?」的な顔やめてもらって良いですか?








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