第22話『大きくて長いレーザーライフルと言う意味です』
第二十二話
『大きくて長いレーザーライフルと言う意味です』
異世界四日目の朝、ログインボーナスのレイディカードを貰って三凸目、明日完凸でレイディが世に出る、楽しみだ。
日課になった無料ガチャも回す、回復パックをゲット、ゲーム内ではゴミアイテムだったが、この世界ではエリクサー三百本分と同価値の神アイテム、やったぜ。
『司令、隊長格二名の尋問が終わりました』
あぁ~、ブレインダイブとか言う不思議科学のヤベェ脳内尋問ね、脳内覗かれちゃ嘘
それで、何が判った?
『昨日ケイジィ少尉が推測した内容とほぼ同じでした、司令と同じ日に召喚された地球人による予知能力でこちらの動きを察知したようです』
予知能力か……それにしちゃぁ結果がお粗末だな?
『予知出来る範囲の問題でしょうか、その範囲が時か場所かは分かりませんが』
ふぅ~ん、他に判った事は?
『司令の持つ能力や戦力等を把握していない、簡単に言えば何も解っていません。貧民窟の人間と行動を共にしているのは把握しているようですが、それは城が得た情報の上に精査が不十分。ハンターギルドも城と行動を共にしています』
ギルドが?
ハンター殺しまくったからかな?
『最後に、司令は魔王と認定されました。おめでとう御座います、どうやら召喚された女性の一人が聖女となって宗教団体に司令を魔王と認定させたようです』
えぇぇ……
同郷人の殺意が高いなぁ……
俺、アイツらに何もしてねぇんだけど?
『地球人の数名が追放勇者の恐ろしさを懇々と説いて回った結果、司令に対する姿勢として融和派だった者や放置派等、司令に対して慎重姿勢だった者達を司令排除へと考えを改めさせた模様』
えぇぇ……
何でそこまで……
ってかそれって洗脳系のスキルでは?
まぁ二十人前後居たから色んな考えが有ったと思うけど、その全員を一人の男排除の方向に促す意味が解らない……
一致団結の為に敵を作った……ってわけじゃなさそうだなぁ。
やっぱアレか、追放サレ勇者は関係者を虐殺する的な事を召喚された女の子が言ってたけど、そのせいか?
『そのようです』
いやいや、ちょっかい掛けてくるから殺すんだよ、馬鹿なの?
しかも俺は望んで城を出たの、本質は追放でも望んだのは俺っ!!
同郷人なんてどうでも良いんだよ、こっち見んなって話だよ……
『追放してなお気にしてしまうほど司令は脅威なのでしょう。では司令、尋問を終えた捕虜二名の処遇ですが……既に廃人となっております、処分して宜しいでしょうか?』
こっちを殺しに来た奴らだ、換金対象だな。
『畏まりました。恐らく本日中に城から第二陣が派遣されると思われます、ダンジョン内で迎撃なさいますか?』
う~ん、固有スキル対策が出来てねぇからなぁ、こちらのバリアが通用するのかも分からんし……
あ、そうだ、俺の大型テントをダンジョンの入り口に置こう、バリアのテストだ。
あのテントには裏口も有る、部隊の出入りはそこを使って……テント内から射撃だな。あ、内側からバリア通して攻撃出来る?
『可能ですが、司令の戦闘参加は認められませんよ?』
いやいや、俺は行かねぇよメンドクセェ。
とにかく、迎撃部隊は敵の魔法やスキルの分析をしつつ、危なくなったら即撤退、お前が回したアイテムガチャでミサイルとか沢山出たようだし、現場の判断で自由に使って良しっ!!
なんなら城に五~六発ミサイル撃ってやれ、ガハハハハ。
『地対地ミサイルは有りませんが、歩兵の地対空長距離バズーカを試してみます』
それ宇宙戦争用のバズーカですよねぇ?
うむっ、存分におやりなさいっ!!
「お父さ~ん、レディオ体操の時間だよ~」
「おとうしゃ~ん、レ、レヂオたいそー」
おっと、新調された黒い子供用戦闘服を着たネイとカーリが御迎えに来た。チッ、可愛いですね。
はいはい、今行きますよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【正午、ダンジョン入り口にて】
「おい、何か出て来たぞ、数が多いな……」
「何だアイツら、見ない顔だ……」
ダンジョン入り口から少し離れた場所に在る大木の上に身を
二人はハンターギルド副ギルド長マルデビッチの要請により、昨日から未帰還者の調査に来ていた。兄弟が羽織る焦げ茶色の革製ジャケットはマルデビッチからの贈り物、胸の内ポケットには彼女の脱ぎたてパンティが入っている希少品だ。
静まり返ったダンジョン入り口、入口の横に在る警備隊の小さな砦も破壊尽くされ無人、余りにも不自然な様子に二人は身を潜めて周囲を観察する事に決めた。
愛する副ギルド長の期待に応える為、木の上で丸一日様子を窺っていたが、その努力は報われる。
兄弟はスキル【鷹の目】を使いダンジョン入り口を見つめる。
二人の茶色い頭髪が風に揺れた。
冷や汗が兄弟の頬を伝う。
「オイ兄貴、な、何だありゃぁ……」
「……城、だな、魔道具だろう」
黒い服装の集団がダンジョン入り口に現れて数秒後、突如として出現した武骨な城、それはダンジョン入り口を完全に
黒い服を着た集団はその城の中に入ってしまった。
弟のチコーがジャケットの内ポケットから小さなガラス瓶を取り出し、コルクの
チィズは弟から渡された酒を飲んで深く息を吐く。
「チコー、気付いたか?」
「……あぁ、何人かと目が合った」
二人の存在は不気味な黒服達にバレていた、兄弟の背筋が凍る。
「どうする兄貴、向こうは俺達を気にしていないようだったが……」
「あるいは相手にされていない、だな……チッ、面倒な仕事受けちまったな……はぁ、逃げる形で情報を持ち帰るか、それとも監視を続けるか……」
「ここは情報を持ち帰っ……っ!! 兄貴っ、見ろっ!!」
「どうし……女?」
「あぁ、とんでもねぇ美女だ、ペニスが
「……完全に俺達の居場所が分かってんだな、クソが」
兄弟はその美女に冷静な判断と警戒心を奪われた。
ほんの一瞬、一瞬だけの
「兄貴、アイツ何か――」
「チ、チコー? おいチ――」
頭部を失った兄弟の体がドサリドサリと地面へ落ちる。
大型テントのベランダに立つサラ30が長い銀髪を風に泳がせながら、巨大なレーザーライフル【コットン100ワイド&ロング】を肩に担いで遠くの空を見ていた。
「褒めてくれるかな、司令……」
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