第20話『お前明日から前田な』





 第二十話『お前明日から前田な』





「おとうしゃん、勇者のお手々おいちぃ……モグモグ」

「お父さん、勇者の心臓コリコリして美味しい~モグモグ」

「坊ちゃん、勇者の脚がこんなに美味しいとは知らなかったぜ」


「……そりゃ良かった、でも言い方、言い方が何か……」



 可憐な少女達が勇者の手や心臓食ってウメェ~は無いだろ、勇者の脚が美味しいなんて誰も知らんぞケイジィ……


 城から追い出される形になった男の一味である彼女達が言うと色々勘違いされる。


 そもそも勇者焼きはカエルの肉を焼いた料理の名であって肉の名称ではない。まぁ今回は俺が勇者と認めたカエルの肉だから彼女達の言う事も間違ってはいないが。


 まぁ楽しいオヤツタイムだ、細かい事を言うのは無粋だな。



「兄貴ぃ、勇者の肝も美味いぜっムホーッ!!」

「閣下、勇者の眼球はお肌に良い成分が含まれています」

「閣下、勇者の手ビレや足ビレにも同様の成分が……」



 勇者勇者うるせぇなコイツら……カエルの肉っつってんだろ。


 ところでレイディ、お肌に良い成分と言えば、アンドロイド達の……こう、何と言うか皮膚感と言うか、ロボみが薄れたと言うか、皮膚の部分が多くなったような……?



『我が軍のアンドロイドは全てミルフスキースライモと融合させました、外見だけではなく各種能力値も上昇しております』



 ほほ~ん、早速あのスライモを活用したか……(困惑)

 問題無いなら構わんけどね……


 だけどまぁアレだな、ベルデやアザン達のような星2キャラもロボみが薄れて……パッと見アンドロイドとは気付かんな。


 下半身に正直なケイジィとハッチャクがソワソワしている……


 見ろレイディ、ケイジィが苦悶の表情だ、ベルデとサラ30を天秤に掛けているツラだな、これほど清々しいクズを僕は見た事が無いのです。



『彼を矯正プログラムに入れるのが楽しみでなりません』



 ほどほどにな、ほどほどに……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 大好評だった勇者焼きの試食を終え、第十一階層の攻略を進める。


 進めるが……広い、それこそ大部隊を投入して速攻でカタを付けたいところ――ん?


 いやいや、ちょ待てよ……そう言えば、レイディが初日に改名のアイテムを買えますって言ったな……


 それ課金アイテムじゃん、ねぇレイディ、もしかして課金アイテム手に入るの?



『?? ええ、入手出来ますが……?』



 そ、そうか。


 よく考えれば当たり前か、ガチャだって課金じゃないか……


 って事はだよ、ガチャに金を使い過ぎるのもアレだよ?


 あのブラウザゲームは中盤から施設の建設やら何やらでとにかく時間が掛かる。時短の課金アイテムは必須だ。


 当時は高くて買う気もしなかったし、イベント終了時とかに貰える報酬の時短アイテムで十分だった。何より、放置気味だったので特に気にしなかったが……


 現実となると話は違う、言ってみれば大きな街が一つ四秒で出来たりするわけだから、時短の価値が段違いだ。


 それに時短アイテムだけの話じゃない、各種資源も資金が尽きるまで無限に入手可能だ。


 戦艦の最新装備や基地周辺の建築枠増加、部隊の移動時間短縮や瞬時の帰還なんてのも有った。


 しかもそれら全てが千円以内で買えた……


 俺が持っているあの巨大な気力回復テントなんて百円だ……


 今の軍資金なら基地周辺のインフラをMAXに上げる事も出来るし、アイテムを買い漁ったところでどうと言う事は無い……


 こ、これはヤベェな……

 レレレレイディ、インフラ整備お願い出来ますか?



『基地周辺に対する投資の許可が有れば数秒で』



 オ、オナシャス!!



『畏まりました……完了、開拓したスペースには何を?』



 メタル製錬・食料加工・燃料精製の三施設を追加、あとはタンクも追加、余ったスペースはレイディに任せる。



『……追加完了、余ったスペースには各種造船所と格納庫を建設します。基地周辺の掌握が完了しましたので、各種技術研究のロックが解除されました、内政技術【エネルギー消費1%削減】を獲得、おめでとう御座います』



 ……技術研究、有ったな、有ったわ、高ランカーは全部の技術を獲得していたが、俺は省エネと部隊移動速度アップしか取った事無い。


 ふぅ、こりゃぁアレだな、他の召喚者諸君には申し訳ないが、真の俺強ぇぇは私で決まりのようだ。困ったな(恍惚からの勃起


 あ、そうだ、レイディ君、一個分隊に一つ大型テントをプレゼンツしてくれたまえ。



『司令と同じ高級士官用とは異なりますが、宜しいですか?』



 ん? 違うのか、でも大きいんでしょぅ?



『回復性能は同じですが、娯楽施設は有りません。テントの大きさは一個小隊が寝泊り出来る程度です』



 小隊は五人編成の分隊が五つに小隊長で二十六人だっけ、十分大きいです……それを差し上げて下さい。娯楽施設の代わりは……随時適当に用意して下さい。



『畏まりました。一先ず基地倉庫に収納しておきます。出し入れは各小隊長、または緊急時のみ隊員に任せます』



 うむ、って言うか、アンドロイド的に基地倉庫は収納魔法と変わらんな。



『司令の貸倉庫とは違って【特定軍需品のみ】と言う制限は有りますが、許可を頂ければケイジィや子供達も基地倉庫は使えます』



 ほぉ、そりゃ良い事聞いた。

 やい貴様ら、僕の話を聞くのです。



「え、そりゃマジかい坊ちゃん?」

「俺やアンドロイドが出す軍需品に限るがな」


「いやそれでも助かるぜ、坊ちゃんに貰ったエリクサーなんて怖くて持ち歩けねぇと思ってたんだ、早速使わせてもらうよその倉庫……どうやって使うんだ?」



 どうやって使うんです?



『収納するアイテムを指定して頂だければ。取り出しも同様に。収納物を確認したい場合はそう念じるだけで脳裏にリストが出ます』



「収納したい物を指定しろ、取り出しも同じだ。収納物の確認は念じるだけで良い」


「分かった……お、消えた、取り出しは……おぉぉ、頭の中に何か出て来た……で、手の中にエリクサーが戻った、と、スゲェなこれ」


「お前達もやってみろ……と言われても軍需品を持ってないな、回復剤を全員に配るか」



 子供達に回復カプセルをプレゼンツ、彼らは楽しそうに物を出し入れしていた。


 池田さんが作ってくれたカーリのオムツは軍需品扱いだったようだ。オムツを出し入れして遊んでいた。


 そろそろ子供達の服もバスローブから替えたいな……


 子供達のボロ服は捨てたので風呂上がりのバスローブ姿のままだ。気に入っているようだから良いが、防御力が紙だろあれ……



『本日中にケイジィ少尉と子供用戦闘服の開発が終わります。ケイジィの戦闘服は司令の指示通り真っ赤です、背中に【前田】の文字を入れて完了です』



 うむ、良い仕事してますねっ!!







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