第18話『勃たかえ、勃たかうんだよっ!!』





 第十八話『たかえ、勃たかうんだよっ!!』





「どうだケイジィ、ハンターは居ないか?」

「居ねぇな、恐らく地上に戻ったかテントの前で死んだ」


『この階層に人間は居りません』


「ふむ、居ないようだ、年長組に薙ぎ払わせろ」

「はいよー」



 第七階層に人間が居ない事を確認し、隣に立つケイジィに木々の伐採を命じる。ついでに魔物も死んでくれるので楽チン。


 ケイジィが子供達の立つ位置を調整し横に並ばせる。


 右端に勃つ、いや違う、右端に立つハッチャクがネオナンブを構えて右から左へとレーザーを払い撃ち。それにならって隣に子から順にレーザーを放った。


 木々が倒れる音と魔物の絶叫がフロアに響き渡る。

 これで資材と経験値が手に入った、楽なもんだ。


 土煙が収まると護衛のアンドロイド達が横隊を組んで前進。

 俺達は子供達を中央に寄せて後に続いた。


 ケイジィが苦笑しながら肩を竦める。



「レベリングの依頼は破棄だなこりゃぁ。俺は何の役にも立ってねぇ」


「今回は俺がフロア制圧に効率の良い武器を所有していた、それを使っただけの事。お前は俺のレベリング以外にもダンジョンの案内や解説等、ガイドとしての仕事や子守など多岐にわたる、気を抜くなよ」


「へへっ、しゃーねぇなぁ坊ちゃんはぁ(ニヘラ」



 ケイジィは何が嬉しかったのか、クソ気色悪い笑みを浮かべて護衛達の方へスキップして行った……



『司令、ケイジィ少尉の情報によればダンジョンの最奥は第二十階層、この調子で進むと明後日には完全攻略出来そうです。そのまま接収が上策かと』



 接収ねぇ、ダンジョンの入り口をふさぐのか?

 資源惑星制圧みたいに特殊作戦団を置くのか?



『入り口には認証式バリアゲートを置きます、特戦団は必要有りません、新たに歩兵中隊を編成して警備に就けます』



 ウチの中隊って何人?



『五個小隊百二十五名に小隊長五名、そして中隊長を合わせた百三十一名です。ちなみに、五人編成の分隊が五個集まって小隊になります、分隊長は五人の中から先任を優先して就かせます』



 五刻みか、覚え易いね。


 そんじゃぁ取り敢えず、キャラガチャ回す為の資金集めするか、と言っても、今の調子じゃ相当貯まりそうなもんだが。稼ぎはここをクリアしてのお楽しみだな。


 攻略のスピードを上げる必要も無い、休憩をじっくり取りつつ腰を据えて油断無く行こう。


 そう考えると護衛が少ねぇな、常時百人編成で周囲を囲みたい。


 休憩のたびにガチャ回して護衛を増やそう。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 アッーという間に第十階層の下り階段へ到達。


 階段の在る大広間に居た階層ボスは大きなゴキブリンと愉快な仲間達だったが、子供達による一斉射撃で全滅した。


 キリも場所も良いので休憩に入り、侍女達が用意したテーブルを囲んで子供達はおやつタイム。


 俺は少し離れた場所で胡坐あぐらをかき、膝の上でクッキーを食べているカーリがこぼしたクッキーのクズを気にしつつ護衛集めのガチャを回した。


 クッキーに気を取られた所為せいか、ちょっと回し過ぎた。


 どこからか現れたケイジィが俺の隣に座ってボソリと呟く。



「坊ちゃん……多いな」

「思ったより資金があったからな、増やした」


「何人召喚したんだ? 百は居そうだが……」


「召喚で出したのは六百六十だな、その中で秘書官が出陣を認めた進化済みの兵は百十、うち佐官が一人、残りはお前やベルデ達と同じ尉官だ」


「さ、佐官ってのは、あの背が高くて長い銀髪で綺麗な碧眼の別嬪ベッピンさんかい?」


「そう、名前は【サラ30サーティ】、大佐だ。彼女は星四と言う状態に進化済みだからな、他とは違ってロボみが無いだろう? ハハハ」



 どう見ても人間の女性にしか見えない。

 全身を確認したわけではないが、少なくとも顔は人間だ。


 ケイジィやハッチャクは彼女の美しさにソワソワしている。



「フッ、お前達の反応を見るに、彼女の容姿はこの国に居る男共を狂わせそうだな」


「そ、そだな……ゴクリ(ッ」


「そうそう、サラは狙撃特化のアンドロイドだ、銃の手ほどきを受けると良い……男女の関係となったベルデと一緒に、な」


「い、いや、俺は一対一で訓練を受ける男で有名なんだ、だからちょっと訓練の申し込みに行ってくりゅっ!!」



 そう言って、前かがみ状態のケイジィはサラのもとへ走って行った。



『いつか女性に背中を刺されそうですね、彼は』



 傾奇者かぶきものをナメるなよレイディ、刺された瞬間絶頂を迎えるのが傾奇者だ、こじれた恋の刃傷にんじょう沙汰こそヤツの望むところよっ!!


 ただ、ヤツは股間に正直すぎるだけさ……



『軍紀が乱れる前に股間を矯正させます、矯正プログラム【欲しがりませんつまでは】の発動許可を』



 ……許可するっ!!


 だが、優しくしてあげて下さい。

 彼が独りちする日が来る事を願うばかりである……



“坊ちゃん、勃ったよ、俺、独りで勃てたよっ!!”



 フフッ、参ったな、まだ見ぬ未来から声が聞こえちまった。


 さぁ、休憩は終わりだ、前へ進もう。



「おとうしゃん、ウンコ出たい」



 休憩を延長する……っ!!

 ベルデッ、ベルデ副侍女長はどこだっ!!

 ウンコッ、ウンコ様が出たがってるぞっ!!



「おとうしゃん、ウン……あ」


「え」


「閣下、お呼びでしょうか」


「……ベルデ、カーリが、カーリの門をウンコ将軍が……」


「あっ、内親王殿下、さぁこちらへ、ベルデが抱っこしますね」



 難しい顔で虚空を見つめるカーリをサッと持ち上げ走り去るベルデ、間に合ってくれ、開門は近いぞ……っ!!











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