第15話『新品の脱衣所でお掃除?……妙だな』
第十五話『新品の脱衣所でお掃除?……妙だな』
現在の時刻は午後十六時四十七分、場所は六階のジャングル。
ケイジィが言うには、この六階から十階まではジャングルになるようだ。
ここは魔物の鳥獣率が高いように見受けられる。
ゴキブリンやスライモは見ない、何処にでも居そうなもんだが。
若手ハンターは森に入らず五階で留まるらしい。時間も時間だし五階から帰還する若いパーティーを何度も見た。
便利な帰還用アイテムは高価で、ダンジョン内から地上へ送ってくれる転移魔法陣とやらは十階のボス部屋から使用可能な為、そこまで辿り着ける奴ら以外は六階以降に降りないし野宿もしない。
俺達も帰り時かと考えたが、特に苦戦もしないし物資はほぼ無限、ジャングルフィールドのお蔭で天井が高くバリア展開出来る大型テントも出せる、寝ずの番が可能なアンドロイド護衛も多い……
となれば、一度帰って再び攻略に来る手間が無駄、帰ってもあの穴倉が待つだけだしな、ケイジィも子供達もあの陰気で不潔な穴より護衛に囲まれたダンジョン内の方が安心出来て居心地が良いらしい。
……不潔な穴はなぁ、うむ、不潔な穴は好みが分かれるところだなっ!!
「そう言うわけで大型テントを出したいんだが、秘書官が言うには周囲の木が邪魔だそうだ、薙ぎ倒せ」
「このレーザー銃で横薙ぎにすりゃ良いのかい坊ちゃアイターっス!!」
「銃口を仲間に向けるなアホ」
危険行為をした鼻のケイジィの頭に司令長官拳骨を喰らわした。
何故かネイが半ギレでケイジィのスネを蹴っている。
よしなさい、彼の心が折れてしまう。
そう言えば、ケイジィはネオナンブを使うのは初めてか……
「その側面に二つ、上下出来るレバーが有るだろ、そうそうれだ、上がセーフティーレバー、下のがセレクトレバー、セレクトレバーを一番下まで下げて使え、威力が最小になる」
「こんだけ木が有るのに最小で良いのかい?」
「使えば分かる、やってみろ」
「ほぉ~ん、そんじゃあ、よいっと……」
ケイジィが右手に持った銃を森に向け、引き金を引きつつ左から右へ薙いだ。
青白い光線が遠心力に負けて曲がる事も無く直線のまま森を割る。
暫くして木々が倒れる轟音と魔獣の絶叫が響き渡った。ハンターが居たら真っ二つだったのにな、非常に残念だ。
「うっほ、こりゃすげぇ……」
「ついでに地面スレスレで刈ってしまえ、刈った分の木々は俺が回収する」
「はいよー、それっ」
ケイジィが楽しそうに草刈りならぬ木々刈りを始めた。
木材もそうだが、魔物も十分駆除出来ただろこれ。
『そのようですね、前方の敵性反応が根こそぎ消えました。草木も全て回収しましょう。ですが司令、この広大な範囲で伐採された森が数日で復活すると言うダンジョン、これは是非とも手に入れたいですね』
だな……
ハッキリ言って、ダンジョン一つ確保するだけで組織の行く末が決まるぞ。戦略の広がりが段違いだ。
こんな貴重なもんを敵に贈るって、あの城の奴らは相当アレやな。
俺が殺しに行く前に死にそうだなぁ、心配だ。
はぁ~、取り敢えずテント出す前に
いやぁしかし、ダンジョンは資源の宝庫やなぁ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「坊ちゃん、何だこりゃぁ……」
「……テントだ(困惑」
ケイジィや子供達が灰色の大型テントを見て驚愕している、だが安心して欲しい、俺も驚愕している。
レイディの説明から高級士官が御付きの者十数名と寝泊り出来る造りだと聞いていた。
確かに、確かにこれなら御付きの者達も寝泊り出来るだろう、しかし、御付きの者を何人想定した造りなのだろうか、十数名じゃなくて数十名の間違いではなかろうか?
外観は武骨で豪奢とは言えない、だが欧州の大きな古城ですと言われても納得出来る見栄えではある。とにかくデカい。
日本ではコレをテントとは呼ばず城や砦と呼ぶのです。
外壁の素材は何だコレ、硬いな……
『ミルフスキー博士が開発した強化フェラミックですね。戦車砲(レーザー)程度なら弾きます』
あ、そう……
強化フェラミック……??
取り敢えずテントの中に入りますか。
付いて来たまえチビッ子諸君っ!!
不思議科学の神髄をその目に刻むが良いっ!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お父さん、これが、お風呂……?」
「……そうだ(白目」
「スゴイ、お父さんはスゴイっ!!」
テント内の風呂を見たネイが感動している。
隣に立つ俺は白目を剥いている。
違う、コレは僕の知ってる風呂じゃない……っ!!
僕はお風呂に詳しいんだ……っ!!
こんな、こんな透明カプセル的なメディカル装置に入って全身を緑色の液体で包むヤツは風呂じゃない……っ!!
コレは医療器具であって決して風呂ではない……っ!!
人間は液体に沈められると息が出来ないんだっ!!
僕は窒息について詳しいんだ……っ!!
『カーリがメディカルポッドの中から手を振っていますよ』
カーリが入ったポッドを見る……取り敢えず手を振る、なるほど、ビックリするほど綺麗になってるな、って言うか、あの子は変な液体に沈められて怖くないのか?
『まぁ幼いとは言え強化人間ですから。それに、司令や侍女が居るので何の心配もしていないようです』
なるほど……チラッと周囲を観察。
他の子達も笑いながら沈められてるな……
大丈夫? あれ目がイッてない?
おや?
ハッチャクが……何してんだアイツ?
何でズボン脱がねぇの?
『御付きの侍女に勃起をきたしたようです』
何でもアリやなアイツ……
それで、何で悲しい顔してんだ?
『女型ゴーレムの肢体に股間が反応して絶望したとか』
いやいや、ゴーレムじゃねぇから。お前の息子は正しいぞ?
でも丁度良い機会なのでアンドロイドの誤解を解いとくか。
アンドロイドと言う種族を理解すれば、勃起も誇れるってもんだ。
まぁ、万が一が有ってもガキは出来ねぇだろうしなっ!!
『我々は生殖機能が有りますよ? 私が司令との子を
……ウソ、だろ?
いや、種族ってくらいだから当然か……?
それにしてもあのゲーム作った奴らはスゲェ設定にしたなぁ。
これは人とアンドロイドであっても男女の住み分けとを……!!
そ、そう言えばケイジィは、ケイジィは何処だ?
『ケイジィ少尉はベルデ少尉に脱衣所内でお掃除してもらっています』
お掃除ってお前……事後じゃねぇか……
止めないの?
『両者は任務終了後の休憩中ですので。後任は他者に任せてあります』
そ、そうなんだ……
えっと、二人の寝室は一緒にしてあげて。
しかしいつの間にケイジィはベルデを口説いたんだ?
『四分ほど前ですね』
早い、色々早くて草。
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