第12話『これが……ダンジョンっ!!』





 第十二話『これが……ダンジョンっ!!』





 ダンジョン入り口での虐殺を終え、軽くおやつタイムを入れた後にダンジョンへ入った。


 僕はついにダンジョン童貞を卒業したのです……っ!!


 何故か内部が明るい洞窟、それが先ほど入ったダンジョン内の感想。


 壁は土のような岩のような、不思議な材質、色は茶色。


 現在居る第一階層には人が居ない、稼ぎが悪くて人気が無いらしい。って言うかここに潜ってそうな奴らは大方さっき死んだ。


 そんな場所で俺はケイジィからレクチャーを受けている。



「坊ちゃんが掴んでる水色のそれは【スライモ】、このダンジョンじゃぁ一番弱い魔物だ」


「……スライモ(疑念」


「見た目は透明感が有って綺麗なもんだが、雑食性で何でも溶かして食べるもんで『ダンジョンの掃除屋』なんて言われてんな」


「……スライム、じゃなくて?」


「ん? スライモ、だ」

「そうか……(困惑」


「殺す時は中央の核っつうか【魔石】を割れば良い。おいガキ共っ、前に言ったと思うが、生きたスライモの体液が体に付かねぇように気を付けな、服は解けるし肌はただれる。坊ちゃんは不思議な魔法障壁があっから平気で触ってっけどよ、お前ぇらは真似すんなよっ」


““は~い””



 キッズは楽しそうだな、しかし……大人の頭三つ分ほどの大きさで、饅頭型水色ゼリーと言った感じの魔物……だが、スライムではないっ、スライモだ……っ!!


 理解は出来ても納得出来ないっ、スライムで良いじゃないかっ!!


 どうしてスライモなんだ……っ、畜生めぇっ!!



「坊ちゃん、このスライモは殺すと体液が少し固まる、それを焼いて食うといもの味がするんだ、貧民窟じゃよく食われる。そう言やぁ固まる前の生きたスライモを見るのはガキ共も初めてだろうなぁ」


「スライモが……芋の味……っ!?」



 クッ、まさか日本語の『芋』と同音同義だったとは……っ!!


 スライモ、今回は大目に見てやるっ、次は無いぞ貴様……


 取り敢えずコイツは核ごと回収するか、どうするレイディ?



『そうですね、そのまま……おや? この生物は生きたまま回収出来そうです……あぁなるほど、これは生物ではありませんね、鹵獲ろかく品として扱われるようです。取り敢えず数匹飼育してみましょうか?』



 へぇー、じゃぁ五匹くらい飼うか。あとは換金で。



『ではそのように』



 俺が持ち上げていたスライモが消えた。ケイジィが驚く。



「ぼ、坊ちゃんの収納スキルは生き物も入るのか? 普通は入らねぇって聞いたが……」


「入るヤツは入るみたいだな」


「マジか、スゲェな……こりゃぁ坊ちゃんの実家は大損だぜ、誰が見ても大物のせがれを追放するとは……ククッ、ザマぁねぇな」


「フッ、言うじゃないかケイジィ」



 僕はヨイショは好きです、バナナをやろう、ついでに【ヨイショ師】の称号も贈る。ケイジィは照れながらバナナを受け取った。ヨイショ師の称号は受け取らなかった、ナマイキ……っ!!



『司令、このスライムは……失礼、このスライモは正直……』



 どうした?



『率直に申し上げますと、このスライモは可能性の塊であります』



 ほほぅ、例えば?



『体液と魔石は資源として有用、飼育で数を増やせばメタル製錬・燃料精製・食材加工の基本三施設の生産効率上昇は勿論の事、防疫所、防衛大学、兵器開発所、科学研究所に支援効果を得られます』



 え、それ凄くね?



『凄いです。更に、我々アンドロイドの身体を強化する為に生まれて来たと言っても過言ではない程の親和性、ミルフスキー粒子との相性も良く、司令やケイジィ達新人類【ミルフィー】の強化も期待出来ます』



 そうか……スライムが異世界人に優しいってのは日本人の二分五厘が知る事実ではあるが、まさかスライモまで優しかったとは……っ、このソウロウの目を以てしても見抜けなんだかっ!!



『今後の為にも、このダンジョンに居るスライモは全て捕獲する事を提案致します。スライモを殺害しても子供達にはそれほど経験値なる物が入っていない様子、彼らには他の魔物を仕留めてもらいましょう』



 ふむふむ、宜しい、効率的に行こう。



「おいケイジィ、スライモは我が大ニッポンヌ帝国が全て接収する。キッズには他の魔物を仕留めさせろ」


「ハハハ、接収って大げさな。まぁガキ共の強さならゴキブリンでも倒せるからそりゃぁ構わんが……そっか、坊ちゃんの故郷は大ニッポンヌ帝国って所なのか……いつか、凱旋できると良いなっ!!」


「お、おう」



 クッ、澄んだ瞳を向けて心からの激励を贈りつつ俺のヤル気を上げるだとぉ……っ!!


 こいつ、ただの傾奇者かぶきものじゃぁない……っ!!


 狼の皮をかぶった大賢者……包茎者かぶりものやでぇっ!!



『司令、先に進んで下さい』



 あ、ハイ。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「坊ちゃん、アレ、見えるかい? あっちに在る右側の岩の……」



 第二階層、ケイジィが俺の横に立って長い通路の先に在る岩を指差した。この階層にも人間は居ない、何かが居たらそれは十中八九モンスターだ。


 岩の上から何かが出ている、ハゲ頭のてっぺんだな。隠れているつもりだろうが、どちらにせよ編成画面に追加されたレーダーで敵の位置は丸見えなのです。



「あぁ、岩の裏側に何か居るな」


「そうだ、緑色の禿げ上がった頭が見えてんだろ、あれで隠れてるつもりになってんのが二階層から出てくるゴキブリンだ。一匹見つけたら周りに十匹居ると思っていいぜ」



 ッッ!!

 ゴキブリン……(疑念



「そうか……ちなみに聞くが、あれは虫系か?」

「いいや、小せぇが人型だ、汚ぇツラだがな」


「……なるほど、もう一つ聞くが、やたらと性欲が強い、なんて事は?(震え」


「おおっ、よく知ってんな、その通り、女を見ると目の色変えて襲って来る。奴らは人間にとって明確な駆除対象だ」


「……うむ、分かった(白目」



 じゃぁゴブリンでいいじゃないか……っ!!

 何で一捻ひとひねり入れてくるんだ……っ!!


 悔しいっ、俺をモヤつかせるとは……っ!!


 この世界、やりおるっ!!


 俺のモヤつきを尻目に、ケイジィが子供達に指示を出す。



「ゴキブリンは初心者ハンターを鍛えるのに丁度良い、今回は坊ちゃんが召喚したアンドロイドも居るしお前らは強化されてもいる、油断しなきゃまず負ける事は無ぇ……が、坊ちゃん、鍛え方に注文は有るかい?」


「そうだな……(何で俺に聞くんだろう?」


『配下の教導員が司令長官の意見を聞くのは当然では?』



 いつ配下になったんだろう……

 ま、まいいや。



「取り敢えず、ベルデは子供達から離れるなよ、アザンは敵が後ろに来ないように立ち回れ、なるべく殺さず半殺しで子供達にプレゼントするのがベストだな。武器は銃でもサーベルでもどっちでもいい」


「ハッ!!」

「了解しました」


「あとは……俺とケイジィが投石でもして釣り上げるか」


「ははっ、そりゃ良い。でも頭ブチ抜かねぇように気を付けねぇとな」


「よし、では作戦開始」



 アザンが数歩前に出る、年長組の子供が後に続く、俺とケイジィが足元の小石を拾って投石。


 あ、ケイジィの投げた石が一匹の頭を貫通した、アホめ。


 喰らえっ、BFOTSビッフライオタニソンの魔球っ、そいやぁーっ!!


 見よっ、我が魔球の曲がり具合をっ……!!



『外れました、直球をお投げください』



 はい……


 俺は何故曲がって沈むシンカーを投げたのだろうか?

 理解に苦しむな……?


 まぁ、ゴキブリンは騒ぎ始めたし、何匹かは釣れたので良しとしよう。


 って、アレレ~?

 抱いていたカーリが居ないぞぉ?



「ナイスピッチ、よく出来ましたカーリ」

「うん、お石ちょうだいベルデママ」

「はい、次はあっちのアレを狙いましょう」

「わかった……えいっ」



 カーリが投げた小さな石は、見事にゴキブリンの眉間を貫いた。


 強化されたにしては……獣人の身体能力、ちょっとバグってねぇか?


 この子三歳くらいだよな?

 俺より球威が有るのはオカシイと思います。


 俺がいぶかしんでいると、常に隣に居るエルフっ子のネイがポンポンと俺の太ももを叩いた。



「どうした?」

「BFOTSは私が完成させる、任せて、大丈夫だよお父さん」


「あ、うん、ありがとう?」



 何か変な方向になぐさめられた。







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