第10話『私は二歳戦も好きだ』
第十話『私は二歳戦も好きだ』
私は競馬が好きだ、公営競馬が好きだ、有馬記念が好きだ、東京優駿が好きだ、凱旋門賞が好きだ、ドバイワールドカップが好きだ。
五月晴れの中で走る三歳馬が好きだ、悪天候の不良馬場で無双する古馬も好きだ、新潟の千直で内枠を走る猛者には絶頂を禁じ得ない。
芝で、ダートで、オールウェザーで、地球で行われたありとあらゆる競馬が私は好きだ。
……ついでに、ソシャゲのガチャも好きだ。
演出が好きだ、画面が虹色に輝く演出が好きだ、レア度を示す星が勢い良く並ぶ様が好きだ。
無料ガチャで高レアキャラを完凸出来た時は射精を禁じ得ない。
私はガチャが好きだ。
だから
三千円分、十連三発、回したのです……っ!!
星3キャラ確定出現の上に一回おまけで回せる十連ガチャを……っ!!
私は回したのです……
結果は微妙だったのです……
しかも、確定星3キャラは全てお正月バージョンのレイディだった。有り得ない……っ!!
更にっ、そのお正月カードをレイディが吸収、自分を強化した上に星四キャラに昇格させてしまったので、実質星1カード三十枚を手に入れた形になった。
三十回回した答えがこれだ。
世界が変わっても財布に厳しい運営……っ!!
確定SRが三枚←解る。
それ以外はNが三十枚←解らない。
キツイ、これはキツイ……っ!!
しかもSR三枚は秘書官が勝手に使用して消滅……っ!!
俺が稼いだ金でこのザマだったら発狂していた所だ……っ!!
一分も掛からず三千円を溶かした事実に恐怖を覚える……っ!!
さすがに残金の二百円でキャラガチャを回す気にはなれず、悲しみよサヨウナラとアイテムガチャを回した。
そしたら『二八式ネオナンブ拳銃』が二丁出た。
これ昨日無料ガチャで出たヤツやないか……っ!!
星1のN、つまりノーマルレアやないか……っ!!
ケイジィとハッチャクに一丁ずつ渡した。殺傷レベルの高さを聞いて喜んでいた。残りの一丁は私が持っておく。幼児にはまだ早い。
さて、三十枚の星1Nカードを整理せねば……取り敢えずレイディお勧めの【ベルデ】は手に入れた、五枚以上有るので完凸も出来る、どうすっかなぁ、同キャラを二つ持つのも良いが……
『完凸した士官は同一カードを使って一段階進化させましょう、星1と星2のキャラは一段階しか進化出来ませんが、進化後も能力値を上げる事は可能です』
へぇー、それはゲームに無かった設定だな……
じゃぁそれでお願いします、他のキャラもやってくれる?
『畏まりました。司令はダンジョンまでの道のりをお楽しみ下さい』
アザーッス。
いやぁ優秀な秘書官が居て助かるわマジで。
……いよいよ俺がやる事無くなったな。
施設の確認……うん、増えてるし産業施設もレベル上がってる。
『明日には小型戦闘機の生産が可能になります、まずはステルス偵察機からですね』
ヒュ、ヒュ~、スゲェじゃぁん……(胸キュン)
他の転移者や転生者がスキル云々で一喜一憂するであろう序盤に未来兵器が秒で出来上がるクソチート、ハァハァ……(軽い勃起)
『兵器開発部のレベルを上げて諜報機を製造出来るようになれば、更に情報収集が
なるほど、諜報機は初耳だがこの世界でのオリジナル仕様か? どちらにせよ重宝するだろウッ……ふぅ。
抱っこしているカーリが鼻をクンカクンカ鳴らしながら俺を見ている。何の匂いもしない、いいね?
エルフっ子のネイが何か覚悟を決めた顔で生唾を飲み込んだ、おやつの催促だろうか、お腹が減ったのか?
まったく、腹ペコ童女め、しょうがないからおやつの時間にしよう。
レイディ、用務員妖精の池田さんに何かおやつになる物を貰ってくれ。
『少々お待ち下さい……【元気百倍丸ごとバナナ・練乳を添えて】を作って頂きました。折り畳み式テーブルと椅子もバナナと共に貸倉庫へ送ります、あ、牛乳パックも貰いましたのでそれも送ります』
うむっ、池田さんにヨロシク。
ではケイジィ、少し休憩にしよう。
「お、もう休憩かい、あぁ、ガキ共の為か、すまねぇな、あっちの方に少し開いた場所が在る、行こうぜ」
ケイジィに誘導されて道の端に進む。うん、ここならテーブルと椅子を置けるかな、大きさは分からんけど。
貸倉庫……おぉ、この【おやつキット】かな?
それじゃコレをタップして、ドーン。
大きな木製のテーブルが三つ、同じく木製の椅子が十六脚、椅子の一つは豪華な造りで俺用だそうだ。
テーブルの上には十六枚の白い陶器皿、その上に乗せられたバナナが三本ずつ、皮は剥いてあって練乳がタップリ掛けてある。小さな牛乳パックもストロー付きで人数分。
では皆さん座りましょう。
俺が右隣りにカーリを座らせると、左隣に素早くネイが座った。
そんなに鬼気迫る勢いで座らなくても……ん?
ネイがテーブルのバナナを見て再び決意の表情を……?
「……やっぱり、そう言う事……わかったよ、お父さん」
「……そうか」
ここで『え、何が?』と言わないのが【出来る司令官】だ。
さぁ、そんな事より食べなさい、美味しいぞ。
いっただっきまー――……
頬を染めたネイが俺を見ながらバナナを食べ始めた……
え、それ食べてるの?
あ、練乳を舐めてるんだな、美味しいもんな練乳っ!!
でもな、口に入れたり出したりするのは行儀が悪いぞ?
「こ、これで、どう? 門衛にヤらされていたお姉さんみたいにしたけど……ゴクリ」
僕は王都を消し飛ばす事にしました。
ガキに何てモンを見せやがる……
本当にロクな事しねぇなあそこの連中は。
取り敢えずネイには『ゆっくり育ちなさい』と言っておいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『司令、完凸と星二キャラへ進化完了したベルデの出動準備が整いました、編成画面から任務設定や出撃命令が出来ますが、私がやりましょうか?』
頼みます。
そろそろダンジョンに着くそうだから、その前にベルデを出しとこう。他のキャラも出せる奴は出して下さい。
『では完凸と進化を終えたもう一人、【アザン】を。彼は戦闘タイプですので護衛に。それでは両者を出動せます、子供達を下がらせて下さい』
はいよー。さぁキッズ、そこを
え~、嫌だぁ~、お父さんの近くが良い~、などと頬を膨らませる子供達に『今からアンドロイドを召喚する』と言うと、目を輝かせて半歩下がった。いや五歩は下がれよ。
強引に五歩下げるが二歩前に出るキッズ、クッ、やりおる……っ!!
俺が歯痒い想いをしていると眼前の地面に光り輝く魔法陣が……出る事も無く、何の演出も無しに二名のアンドロイドが出現。彼らはアンドロイドと言う種族なので二名、二体とか言ったらレイディに怒られる。
女性のベルデは170cmほど、男性のアザンは2mを越えてるだろう。
二人は俺に地球で見慣れた敬礼をする。手の平を下にして
両者は黒くタイトな戦闘服を着用、ヘルメットは背中に格納されてるようだ。武器は……
『レーザーサーベルと二八式ネオナンブ拳銃です』
なるほど、大人気だなネオナンブ……
しっかし、やはりアンドロイドと言ったところか、顔や手が少しロボい。これ星二キャラに進化したからマシになったが、星一は思いっきりロボだからな、目立つどころの話じゃない。
彼らには悪いが、ケイジィ達の中でアンドロイドと言う種族の理解が進むまでは『ゴーレムに近い存在』で通す。
と言っても、誤魔化すのは三日ほどで足りるはずだ。星四になったレイディはロボみが消えてるからな、彼女の登場で理解出来るだろう。
出動した二人の周りにワチャワチャ楽しそうに集まるキッズを見ながら、警戒心もクソも無いなと肩を竦めて苦笑するケイジィに俺は同意を示した。
では諸君っ、いざダンジョンへっ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます