第7話『思春期に溜まるアレを出すのです』





 第七話『思春期に溜まるアレを出すのです』





 野戦食レーションを食べた子供達はグッスリ寝てしまった。小さくなっているはずの胃でよくもまぁ完食出来たもんだと感心する。


 これも不思議科学で出来た回復剤の副作用だろうか?



『そうですね、内臓も本来あるべき状態まで回復しています。胃が大きくなったりはしないでしょうが、胃の働きは正常です。今は満腹で苦しい状態でしょう』



 小さい頃はスイカを多めに食べたら苦しかった、そんな記憶は残ってるな。なるほど、腹がキツくて横になっているのか。


 だが幼児は普通に寝ているようだ。膝の上に居るカーリはウンコ処理後にまた同じ場所に座って寝た。座ったまま寝ている。


 ケイジィはギルドに行ったので今は居ない、俺は留守番だ。

何だか急に静かになって暇なんですが。



『司令は彼らをどうするおつもりですか?』



 う~ん、こいつらと一緒に行動は控えた方が良いな、俺が持つ戦力や装備品等が強すぎる、信頼関係が薄い奴らには簡単に渡せん。


 俺がこれからしばらくソロ活動をとったとしても、俺自身はバリアも有るしアホな行動をせん限りは死なんだろう。


 わざわざチビッ子軍団と言うハンデを背負って行動を共にする意味が薄い。


 ケイジィはダンジョンやら何やらでまだ付き合ってもらうが、子供達はなぁ……


 しかし、このまま放置も気分が悪ぃしな……

 特にこの……俺に懐いてる子らがなぁ……


 はぁ、どうすっかなぁ。



milfミルフスキー粒子を注入してはどうでしょう? ミルフ細胞を有したミルフサイボーグとなり人の域を超えてしまいますが、死亡率はかなり下がるかと。装備品を与えて司令のレベリングに帯同させると、より効果的です。粒子注入後は謀叛等の心配も無くなります』



 ふむふむ、つまり、俺と同じ強化人間的な存在にすると……ほほう、承諾が得られれば有り、かな?


 その強化で何かデメリットは?



『デメリット、と呼べるか分かりませんが、ミルフスキー粒子・細胞保持者となった男性は熟女好きになる、と言う事でしょうか。あとは不老化が挙げられます』



 熟女好きに不老、か……おかしいな、メリットしかないが?


 まぁ一部の童女好き紳士達が血涙を流しながら気絶しそうな影響だな。俺的にはまったく問題ないけど。



『強化後は原住民の諜報員として指導する手も有ります』



 指導の前にキッズのお世話係が要ると思うんですが……



『彼らの世話係なら星1キャラの【ベルデ】が良いでしょう、戦闘力は低いですが器用ですしガチャで数もそろえ易いです』



 そっか、じゃぁ取り敢えず、粒子を受け入れるならと言う前提で、レベリングや諜報員指導の希望がある場合は、ある程度鍛えたら別行動が良いかな。当たり前だが幼児は待機で。


 前線送りとかはまだ無しだな、拾った命が無駄になりかねん。それに恐らく戦闘の邪魔になる。大人になって改めて戦場に出たいか聞けばいい。


 前線で戦うのはガチャ産アンドロイドが居れば十分だ。


 パーティー組んでワイワイダンジョン攻略とかも無いな、レベリングの時はしょうがないが、俺はそもそも集団行動が好かんし向かん。



『ではその様な方向で計画を立てましょう。ですが、先ずは衛生的な居住空間の確保を考えねば。ここは余りにもヒドイ』



 だなっ!!


 ケイジィが帰って来たら今の話をしてみよう。

 乗ってくれれば良いが……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ヒュ~、最高かよ……俺達は神々から精霊紋を授けられなかった能無し、棄民きみんだ、行く当てなんか無ぇ、そんな俺達を強化してくれる上に生活の面倒まで……乗らねぇワケがねぇぜ坊ちゃんっ!!」



 ハンターギルドから帰って来たケイジィに話をしたところ、彼は二つ返事で強化策を了承した。


 だがまだ彼の承諾を得ただけ、子供達は――



「ンッホーーーッ、効っくぅぅぅ~っ!!」



 俺がケイジィに渡したミルフスキー粒子入りの飲用カプセルをさり気なくチョロまかした黒髪の犬耳少年が奇声を上げる……何やってんだコイツ?



『恐らく、糖衣カプセルの味を知っていたからでしょう、まぁ味は同じです、ウフフ、甘味に釣られてやっちゃいましたね。ワンパクな子です』



 ワンパクで済むかなぁ……?



『この子は司令とケイジィの話をちゃんと聞いていました、その上で一番槍を務めたのでしょう。なかなか男気が有りますね』



 男気かなぁ……?

 甘味に釣られたガキ大将なだけでは?


 あ、驚いたケイジィが犬耳小僧の頭を軽く小突いた、優しい。



「ば、馬鹿野郎ハッチャクこの野郎っ、それは坊ちゃんがくれた貴重なもんなんだぞっ!!」



 犬耳小僧の名前はハッチャクと言うらしい。中学一年くらいだろうか、この子達の中では一番デカイ、最年長かな?


 いかにもワンパクそうな顔立ちだが、長い黒髪に黒い瞳のイケメンではある。まぁ身形みなりは不潔だがね。



「ハァハァ、ケイジィ兄ちゃん、コ、コイツぁヤベェ……」

「ど、どうしたハッチャクっ!?」


「お、俺は今、生まれて初めてった、勃起をきたしたんだっ!!」


「なっ!! いつも悲しそうにペニスをイジっていたお前が勃起をっ!? ……そんなバ……マジだ、ズボンが盛り上がってやがる……っ!!」


「ケイジィ兄ちゃん、俺ちょっとイッてくるわ……」

「……馬鹿野郎が、ヤりすぎんなよ」



 俺は何を見ているのだろうか、変なドラマが始まっていた。


 ズボンがえらい事になっているハッチャク少年は、俺に深く頭を下げると軽快な足取りで部屋を出た……


 ……が、部屋から通路に出た瞬間にコスッたのだろう、『アへぇ』と言う奇声が聞こえると共に、ピンと伸びた尻尾が部屋の入り口から見えている。


 最悪やなアイツ……



『室内を汚さなかったのは立派です』



 立派かなぁ……

 男衆が全員アレみたいになったらヤだなぁ……



『彼の症状は特殊です、問題ありません』



 ほんとぉ?



『ケイジィで実験してみましょう』



 実験てお前……まぁ実験するんですけどね。

 ほれケイジィ、貴様も飲むのです。



「おっと、悪ぃな坊ちゃん、じゃぁ頂くぜ。パクッ……っ!! クッ、効果が出るのが早いっ、か、体が、何だこりゃぁ、ス、ステータスッ……なっ!?」


「どうした?」


「ハハッ、人種が、【ミルフィー】になってやがる、それに、能力値の桁が、二桁増加だ、ヤベェぜコイツぁ坊ちゃん……クックック」


「ほぅ、そりゃ良かったな」



 能力値が二桁増えたってところは共感が難しいが、要は百が万になったって事か?


 だが、たとえ十が千、いや、一が百になったとしてもゲーム的に言えば反則だな。



『勃起の傾向は見られません、大丈夫です。興奮状態ですが、粒子が細胞に溶け込んで増殖が落ち着けば平常に戻るでしょう。ハッチャクの体も勃起以外は問題ありません』



 小さい子や女児も大丈夫か?



『何か危険が有れば即座に粒子を排除出来ます、ご安心を』



 排除出来るのか、じゃぁ危ない時はヨロシク。


 って言っても、飲む気満々で並んでるからなぁ、少しも危ないと思ってなさそうだなコイツら。


 もう一回話を聞かせて、しっかり了承を得よう。



『幼児以外はちゃんと聞いていましたし、話が理解出来ていない幼児は今後の為と思って強制的に飲ませるべきです。病気に縁が無い体になるだけでも彼らの為になります』



 そうかい。

 ふぅ、危ない時はマジで頼む。



『お任せ下さい』



 チビッ子トップバッターはエルフっ子のネイか、楽しそうやなお前。



「お父さん、ちょうだい、私、強くなりたい」

「……うむ、強くなりたまえ」



 ネイは嬉しそうにカプセルを口に入れた。


 そして僕はお父さんじゃない。







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