12月9日:入場~会場の雰囲気

 コミコン初日である12月8日(金)の夕方になると、セレブに会ったファンたちのツイートが写真とともに続々と流れてきた。コミコン公式アカウントも、ステージの予定やセレブセッションに関するお知らせ、グッズの完売情報など、忙しく情報発信が続いていた。会場は盛り上がっていたようだ。

 なにより一番は、コミコンのスタートを飾るステージ「オープニングセレモニー」。ある人の話では、朝7時から並んでようやく立見席が取れたらしい。ステージの開始は12時である。どういうこと? 確かにセレブが全員登壇するし、入場券を持っていればだれでも見られる。人が殺到するのは当然だ。とはいえ、限度ってものがある。

 今年は入場券についても、販売を途中で締め切るかもしれないと告知が公式からあった。それだけ売れ行きが好調だったということだ。結局、販売締め切りまではいかなかったようだが、3日間通し券は完売していた。どうやら去年のコミコンとはずいぶん違うようだ。

 9日、私は夕方にユアンとの撮影があるので、それまで会場内を回るつもりだった。まずは10時15分からのマッツ・ミケルセン登壇のステージを見たい。セレブ全員が登壇するオープニングセレモニーに比べれば観客も少ないだろうから、まあ8時くらいに着けるようにしようかな。そんな安易な考えでいた。

 そして9日の朝、あろうことか二度寝をかました私が幕張メッセに着いたのは、9時ごろ。一般入場待機列はすでにとんでもないことになっていた。

 あ、終わったわ。っていうか8時に来ても無理だったかも。自分の認識の甘さを痛感する。

 あがいて仕方がないので、大人しく列に並んで入場開始を待った。本来10時開場だが、急遽きゅうきょ、30分前倒しでオープンすることになったらしい。それだけ人が多いということなのだろう。

 ようやく会場入りすると、中はもっとすごい人だった。真っすぐ歩けない。去年よりも1ホールせまく、観客は多い。密度が上がるのは当然だが、ここまでとは。

 私は早歩きでステージエリアに向かったが、着いたときにはすでに「入場規制中」のプラカードが立っていた。ですよね。仕方がない。あとでダイジェストの動画が出るはずだから、それで我慢しよう。

 ステージは諦めてちょっと歩いたら、人が集まっているのが見えた。なんだろうと思うまでもなく、人混みの上ににょきっと突き出た顔が見えて理解した。小田井さんだ!

 今年のコミコンのメインMCは小田井涼平さんとLiLiCoさんの夫婦で、そこも私的にはアツいポイントだった。

 小田井さんは通行人とのセルフィーに応じている。私もお願いしてみようかな。

 ところがスマホを取り出そうともたもたしていたら、小田井さんは歩きだしてしまう。速い。小走りで追いかければ追いつけたかもしれないけど、追いかけて背中から声をかけるだけの度胸は私にはなかった。タイミングを逃した時点で、レベル12にもう次はないのだ。

 そのあと、アーティストアレイで藤ナオ先生にコミッション(イラストの依頼)をお願いしようと思っていたのだが、結構人が並んでいたのであとでもう一回来ることに。その間に行ったMARVEL&スター・ウォーズグッズエリアは入場まで1時間待ち。グッズを買ったあとにナオ先生にブースに戻ると、コミッションは受けつけ終了していた。DCグッズエリアは整理券を配布していてすぐに入れず。SCREENは私が行ったときにはすでに整理券が配布終了していて、ブースに入ることすらできなかった。

 うむ、なんだか色々と幸先が悪い。

 とはいえ、他のブースを覗いたり、コスプレイヤーのかたの写真を撮らせてもらったり、食事をしたり、それなりに楽しくすごして夕方まで時間を潰した。

 いよいよ、ユアンとの写真撮影だ。

 私が待機エリアへ向かうとき、ステージでは丁度トム・ヒドルストンのインタビューがおこなわれていた。客席は入場規制がかかっていて、入れなかった人が通路やブースの端っこに立って周囲は大変な人だかりになっていた。

 ロキから好きなセリフを尋ねられたトムヒが答える。そのたびにホールが歓声と拍手で包まれた。

「I am Loki of Asgard, and I am burdened with glorious purpose(私はアスガルドのロキ。名誉ある目的を担っている)」

「For you, for all of us(お前たちのために、我々のために)」

 ありがとう、トムヒ。行ってくる。

 ひとりで勝手にトムヒの言葉に背中を押され、私は待機エリアへと歩みを進めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る