初めてのコミコン(2022)

 私が初めて行ったコミコンは去年(2022年)の東京。

 私のTwitter(一生この名で呼び続けてやる)やイラストを見ているかたならご存知かと思うが、私はジェレミー・レナーが好きだ。実はハマるちょっと前にジェレミーがコミコン(2018)で来日していたことを知り、どうしてあとちょっと早くハマらなかったんだ! と、とても悔しい思いをした。

 ジェレミーの影響でMCUにもハマり、コミコンに対して「行ってみたい、かも」が芽生えてきた。

 ところがそんな芽生えを自分で叩き潰すより先に、新型コロナウィルスの影響で2021の東京と2022の大阪が開催中止となった。そのおかげでというのも変な話だけど、その間に「そろそろ行っても大丈夫なんじゃない?」と自分の中でGOが出た。

 満を持しての東京コミコン2022開催決定。イベント関連はもろもろ規制も緩和されてきたころだ。

 その段階ではまだ来日セレブについての情報は出ていなかったが、推しが来日しなくても、1日は参加するつもりでいた。

 まず参加に必要なのはコミコンの入場券だ。なにせ初めてなので、どの程度の争奪戦が予想されるのかわからなかった私は、ライブや演劇の先着チケットを取りに行く感覚で、発売開始時間ぴったりにサイトへアクセスし、入場券を購入した。結局この年は当日券が出たので、私は虚無きょむと戦っていただけなのだが、そのときはチケットが取れた安堵あんどでご満悦だった。

 会期は金・土・日の3日間で、だれがどこに来てもいいよう、3日分の入場券を買った。ぴあで買ったチケットはリセールに出すことができるので、セレブ情報が出そろった段階で、不要なチケットはリセールに出せばいいや、というなんとも安易な考えだった。

 そんないきあたりばったりな買い方をしていた私のもとへ、奇跡的に、ジェレミー・レナー来日の知らせが飛びこんでくる。いやぁ、願えば叶うことってあるんだな。

 セレブとの写真撮影とサイン会には、入場券とは別にチケットを購入する必要がある。こちらは正真正銘、争奪戦だ。それでもなんとか、撮影とサインのチケットを二枚ずつ確保できた。

 ここまではとっても順調。あとは会うだけ。

 でも当日が近づくにつれて、だんだんナーバスになってきた。そりゃそうだ。レベル12でいきなりラスボス(最推し)に会うのだ。生きて帰れるわけがない。めちゃめちゃ会いたいのに、会いたくない。会うのが怖い。完全に情緒不安定。こんなことなら一生「いつか会いたいなー」とがれている方がましだったのではないか、そんなことまで考え始める始末。

 そんな中でも、会ったらなんて言うか考えたり、手紙を書いたり、プレゼントを用意したり、自分なりにできることは必死にやって準備したつもりだった。

 とはいえ、セレブの来日は急なキャンセルがよくあると聞いていたので、もしかしたら、という覚悟はしていた。だからギリギリまでチケットの発券もしなかった。けれど開催まであと数日になって、もうここまでくれば大丈夫だろう、明日あたり、チケットの発券をしてこようかな。そんなことを考えていたころ、その知らせはやってきた。

 ジェレミーの来日キャンセル。

 Twitterでお知らせを見た瞬間はとにかくショックで「えぇ〜〜〜〜〜〜(涙声)」と、文字通りその場に崩れ落ちた。そのあともふと思い出すたびに「えぇ〜〜〜……(へたりこむ)」となって仕事も家事も手につかない。

 実質、私の東京コミコン2022はここで終わった。

 一応、会場には1日だけ行ってきた。入場前から私のテンションが墜落寸前の低空飛行だったことに加え、まだコロナの影響を引きずっていて来場者数が少なかったこともあって、念願の初コミコンだったにも関わらず「こんなもんか」って感じだった。

 セレブエリアはメインエリアと同じホールにあって、セレブに会うために待っている人たちの列が見ることができた。ドキドキした面持ちで順番を待つ人や、セレブに会えて感動の涙を流している人を見たときには、うらやましいような、ねたましいような、あんまりよくない種類の感情がもやもやと湧き上がってきた。

 頭上には来日セレブの顔写真が並んでいた。ジェレミーの写真の下には「HOPE TO SEE YOU IN 2023」と書いた幕が下がっていて、気持ちはしおれていく一方だった。

 楽しみたい気持ちはあったけど、気分が上がる気配はこれっぽっちもなく、すごすごと帰った。

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