第12話 ファッションショー
「この子を1日貸してほしいなあって」
「「はあ!?」」
貸す? 貸すって言ったよこの
何されるかわかったもんじゃないし、普通に嫌だ。
「無理だ」
「え〜、どうして?」
「お前は––––」
ルシファーはそこまで言うと、黙り込んでしまった。何やら、冷や汗をかきながらアスモデウスのことを睨んでいる。
何がどうなっているかわからないけれど、さっきから腕に鳥肌がたっている。それに、私の顔から彼女の手が離れた。
よく見えないけど、人差し指を口元に当てている。まるで「言うな」とでもいうふうに。
「ね、いいでしょ?」
そう言われ、ルシファーは私とウァサゴの方を一瞥した。
「……結羽次第です」
「…………はあ、結羽はどうしたい?」
「えっと……」
行きたいとは思わない。何かされたら怖いし。なんなら、今でも十分怖い。寒くもないのに鳥肌がたっているということは、恐らくそういうことだろう。
けど、このまま行かなかったらかなり大変なことになりそうな予感がする……。
「な、内容によって返答が変わってくる」
私がアスモデウスの方を見ると、彼女はニコッと微笑む。
「遊びたいの。あ、もちろんエッチなことはしないから、安心してね。純粋に、遊びたいだけ」
なんか少し怖い気もするけど、素直に信じてみようかな。信じていいのかは、わからないけど。
「……信じていいの?」
「もちろん」
ならば、ここは一旦信じてみよう。
「わかった、遊ぶ」
「アスモデウス、下手なことはするなよ」
「わかってるわよ〜」
◆◆
あれから数日後、私はアスモデウスの家に来ている。時間が来たら、ウァサゴが迎えに来てくれるらしい。
彼女の家もかなり広い。赤と白を基調としている家で、アクセサリーも沢山ある。
「それで、今日は何するの?」
「色々〜。例えば、ファッションショーとか」
「ファッションショー?」
私が訊くと、彼女はクローゼットからいくつもの服を取り出した。……私が着ないような服を。
色は種類があれど、どれもこれもフリルが着いていたり、明らかにかわいい系の洋服だ。
こういった服は可愛いのは確か。けど、着たいかと言われたらそこまでじゃない。
「それ……絶対着なきゃダメ?」
「お願い♡」
断り方が見つからない。ここは大人しく、彼女に従っておこう……。
初めに着たのは、白のワンピース。袖とスカートの裾にフリルがあって、襟元には淡いピンクのリボンがある服。
「可愛すぎない?」
「いいじゃない、可愛いわ〜」
というか今思ったけど、私の髪はインナーが入ってるのに、可愛い服には似合わなくない? 地雷系ならまだ似合ったかもしれない。
「じゃあ次これ着て〜」
差し出されたのは、黒のワンピース。これもこれでフリルがたくさんだ。
それを来たあとはピンク……その次は……と、どんどん着させられるので、気疲れがすごい。
「じゃあ、最後は––––」
とある服を持ち上げた時、彼女の手がピタリと止まった。
「……これ着てみて」
そう言われて着た物は、中世ヨーロッパ辺りの平民が来ていそうな服。上はくすんだ緑、スカートは赤っぽい色で、前掛けエプロンをつけた服。
今までの系統とは、全く違う。アスモデウスもこういう服は着ていないし、なんなのだろうか、これ。
「髪、お団子にしてみてくれない? 下の方で」
「? わかった」
言われるがままに、髪を解いて団子をつくる。とは言っても、簡易的な方だ。ちゃんとしたのをやりたかったけど、ケープが欲しくなるからやめておいた。
「––––ふふ、かわい〜」
「アスモデウスの趣味がわからないよ……」
私が呆れ気味に言うと、彼女はまた笑った。
そして、ふいに時計を見る。
私もつられて時計を見ると、針は12時半を指していた。12時を回っていたなんて、全く気づかなかった。
なんだか、回っていると思ったら急にお腹がすいてきた。
その後はご飯を食べた。なにか入れられてないか心配だったけど、何も入ってなかった。むしろ普通に美味しかった。
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