第92話 カクヨムと広告

 11月7日のカクヨムからのお知らせに


>【重要】作者への収益還元を増やすため、エピソード上部の広告枠を常に表示するようにします


というのがありました。どうもカクヨムでの広告収入が減っているようで、いまよりもっと目立つ位置に広告を表示させることで広告収入の増収をもくろんでいるようです。


「これってカクヨムの【終わりの始まり】じゃね?」


 お知らせには、広告単価の低下を理由に作者への還元額を維持するためと書かれていますが、簡単に言うとWeb小説に広告を表示して儲けるビジネスモデルが行き詰まってきた――ということなんじゃないかと想像します。


 Web小説で儲けようってのは、ちょっと無理だったんじゃないでしょうか。本を読む人は減っています。たとえば、通勤電車で本を読んでいる人を見かけなくなりました。職場でも、休み時間に本を読んでいる人はいません。机で本を広げているのはわたしだけです。体感では読書が趣味ですなんて人は絶滅危惧種です。


 人のいないところに広告を出すような広告事業者はありませんから、カクヨムの広告単価が低下するのは必然です。そもそも書籍出版が落ち込んでいる現実があるのだから、読書人口が減っているというのは明らかで、Web小説がやがて頭打ちになるというのは、カクヨムの開始当初からわかっていたことではなかったか。少なくとも、素人の書く小説で出版社が儲けるなんて夢みたいなこと、あるわけないと思っていました。


 それでもカクヨムははじまり、わたしのような素人Web作家が、「KADOKAWAが運営するサイトなら、自分の書く小説が書籍化させる可能性も高まるのでは」とたくさん流入しました。カクヨムも当初は、


――素人ではあってもたくさん作家を集めれば、中には売れる小説を書く人いるだろう。


とたかを括っていました。ところが、この売れる小説を見つけ出すのが難しいのです。なぜなら、サイトで読まれる作品が、売れる作品とは限らないから。タダだから、ネットだから、読まれる作品って多いのです。カクヨムコンの入賞作品が売れるとも限りません。その上、芥川賞など既存の文学賞と違い、権威の裏付けがないカクヨムコンは入賞の事実が読者の購買意欲を高めることはないのです。


 コンテストの参加作からベストセラーが生まれない事実に気付かされたカクヨムは、玉石混交のサイト内小説にひとしく広告バナーを表示させ、広告収入で儲けるビジネスモデルに転換しました。ただ、広告表示は読者にとっては邪魔以外の何ものでもないので、カクヨムはできるだけ目立たないエピソードの一番最後に表示するよう工夫してきたのですが、今回、それではやっていけないと判断したということかな。


 カクヨムは書き手にとっていいサイトだったのですが、自分の小説に意図しない広告が露骨に表示されるのは嫌ですね。しかも、広告には美少女やエロ描写で気を引くものもあるじゃないですか。エロいラブコメならともかく、シリアスなわたしの作風だと雰囲気ぶち壊しなんですよ。それがエピソードの冒頭にバーンと表示されるなんて……。嫌。

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