第57話 星に願いを
かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更にける(大伴家持)
百人一首にある大伴家持《おおとものやかもち』の歌は冬の歌ですが、カササギが橋を架けるのは七夕の夜です。織姫と彦星が年に一度の逢瀬を果たすための橋を架けるのがカササギだといわれています。
七夕ですね。短冊にお願いを書きましたか? 今年の願いはなんでしょう。藤光の願いは「小説を書く時間がほしい」です(笑)
むかし。天帝がじぶんの娘である働き者の織女に、天の川の対岸に住むやはり働き者の牽牛を引き合わせて夫婦にしたところ、ふたりの相性が思いのほか良くって、仕事を放り出してラブラブが止まらなくなってしまったそう。
ふたりが働かなくなったことで、神々の衣服がぼろぼろになったり、家畜が痩せ衰えたりしたので、これはイカンと頭を抱えた天帝が、再び天の川のこちらと向こうにふたりを引き離したのですが、愛し合うふたりがあまりに嘆き悲しむので、可愛そうに思った天帝は年に一度だけ七夕の夜に会うことを許すことにしました――。
織女は「織姫」、牽牛は「彦星」。大人から子どもまで皆んなよく知っている七夕伝説です。織姫はこと座のα星・ベガ、彦星はわし座のα星・アルタイルのことで、これとはくちょう座のα星・デネブとで夜空に描く三角形を「夏の大三角」と呼ぶ――って、デートでプラネタリウムに行くと聞いたことあるんじゃないでしょうか。
わたしは子どもの頃からロマンチックを理解しない人で、「七夕の夜にだけ恒星が移動するわけないやろ。何光年はなれてると思ってんねん」とミもフタもないこと言って大人を困らせていたものです。
大人になり、小説を書くようになってはじめてそのくらいのホラを吹けないようで人を心を動かせるものかと考えるようになりましたが、考えるのと実際にロマンチックなホラを吹いてみせるのとでは、難しさが全然違う(ホラを吹くのは難しい)のでした。
短冊にはもう一つ「上手にホラを吹けるようになりたい」と願いを書こうかしら。皆さんならなんて書きますか?
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