第49話 『描く人、安彦良和』展へいってきました

 11日は休日。

 兵庫県立美術館で開催中の『描く人、安彦良和』展へいってきました。わたしたちの世代なら知らない人はいないであろう、アニメーター・漫画家、安彦良和やすひこよしかずさんの画業を紹介する展覧会です。これはオタクの端くれとして観ない選択肢はないだろう――と行ってきました。


 ひとことで説明してしまうと、安彦さんとは、『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインを担当したとして有名な人です。いまだにいろんな媒体で描かれる「ファースト・ガンダム」のキャラクター――だれもが一度は見たことがあるアムロやシャアといったキャラクター――のオリジナルは安彦さんの絵だということですね。


 70年代から80年代にかけて最も活躍した人なので、展覧会にやってくる人たちの6割、7割は、わたしと同じくらいの年恰好で男性でした。この人たちもオタクなんだろうな(笑)


 展覧会自体は、安彦さんの画業を年代順に追ってゆく構成になっていて、前半は制作にかかわったアニメのキャラクター設定原画がメイン。『勇者ライディーン』、『超電磁ロボコンバトラーV』、『無敵超人ザンボット3』、『宇宙戦艦ヤマト』、『機動戦士ガンダム』、『アリオン』、『巨神ゴーグ』などで、いずれもわたしが子供のころ観てたアニメです。めっちゃよかったです、安彦さんの原画。


 後半の展示は、漫画でした。90年代に入ると安彦さんはアニメの仕事から手を引いて漫画を描き始めます。歴史に題材を得た作品を多く描いているのですが、正直にいうと安彦さんの漫画(絵というか画面構成)には独特の癖があって、わたしには読みにくいと感じられ、読まないんですよね。。。ジャンヌ・ダルクの後日譚である『ジャンヌ』と「機動戦士ガンダム」をリライトした『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』しか読んでないです。藤光としては『ジャンヌ』がおすすめ、全頁カラーの美麗な漫画は一見の価値ありですよ。


 展覧会の冒頭、安彦さんの生い立ちについて簡単にまとめられていたなかに、1947年生まれの安彦さんが、弘前大学で学生運動のリーダー格であり、大学封鎖が解除された後、逮捕されて大学からも除籍されたとありました。


 前回のエッセイで学生運動について書いたばかりだったので、この展示にはかなりそそられました。当時、弘前大学で安彦さんが関わった学生運動の機関紙も展示されていました。いかにも左翼運動の機関紙ですといった体裁・文章で興味深く読みました。


 安彦さんの描くキャラクターは基本的にかわいい系なのですが、安彦さんの漫画は影があるというか、歴史を描いても明るくなくて陰謀や、謀略、裏取引で歴史は作られるって感じ(あくまで藤光の印象です)がします。学生運動が国家権力によって圧殺されたトラウマが、安彦さんの描く漫画に影を落としているのかなと想像して読みました。


 展覧会はとにかく資料が多いです。いちいち見て読んで回ると丸一日かかるでしょう。安彦さんの原画はどれも非常に美麗ですし、設定の書き込みから安彦さんがどう作品に関わったの伝わってくる作りになっています。アニメファン、安彦ファンなら楽しめること疑いなし。9月1日まで、兵庫県立美術館で開催中です。


https://kakuyomu.jp/users/gigan_280614/news/16818093079063657646

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