第48話 映像の世紀バタフライエフェクト
NHKスペシャル『映像の世紀バタフライエフェクト 安保闘争 燃え盛った政治の季節』がよかったので、記録のためエッセイに感想を書いておきます。番組の内容はこんな感じ――
2度にわたり繰り広げられた安保闘争・激動の記録。60年安保闘争は、戦争の記憶がまだ生々しかった時代、若者に大人も加わり国会を取り囲む国民運動となった。映像は、闘争を牽引する若きカリスマを捉えている。全学連委員長・
60年安保闘争当時の全学連(全日本学生自治会総連合の略で、簡単にいうと共産主義に強い影響を受けた学生たちの集まり。当時の学生運動を主導した)委員長だった唐牛健太郎に焦点を当て、2度の安保闘争を概観するという番組構成でした。
安保闘争というのは、(ロマンチックに書けば)共産主義の理想を掲げた一部の学生や労働者が、日米安全保障条約改定のタイミングを捉えて、資本家や権力者に対し、異議申し立てを行い、あわよくば共産主義革命を達成しようとアメリカ帝国主義に迎合する日本政府に戦いを挑んだ学生や市民たちの運動です。
1960年と1970年、2度にわたる安保闘争はいずれも失敗に終わり、この国を覆うようになった政治的無気力は、いまも晴れていません。
番組の演出は明確で、60年安保では丸腰でデモに参加していた学生たちが、70年安保になるとヘルメットとゲバ棒(デモ隊が機動隊を殴るための角材)で武装するなど過激化し、ついには連合赤軍による「あさま山荘事件」という悲惨な結末に達し、学生運動の理想は雲散霧消したと。
70年安保の闘士である学生たちは、運動が下火になるとヘルメットを脱いでネクタイを締め、大企業に就職して資本家の側に転向していったが、60年安保の指導者・唐牛健太郎は47歳の若さで亡くなるまで、体制におもねることなく無頼の生活を貫き通した――と学生たちの高尚な理想が、変質していくことによって革命は失敗したという感じの演出でした。
わたしは70年安保の年に生まれたので、直接安保闘争のことは知らないのですが、中高生のころに見ていたマンガやアニメの製作者に70年安保前後の世代が多く、間接的に影響を受けてきました。『うる星やつら』『機動警察パトレイバー』の押井守さんとか、『AKIRA』の大友克洋さんとか。わたしが中高生だった80年代には、学生運動はわずかにその残滓を時代端々に残してして、彼らのマンガ・アニメに現れる「学生運動文化」は、謎めいていて魅力的でした。
デモがなければ、ストもない、いまの人は、たとえば『AKIRA』を読んでどう感じるんですかね……。こうやって人の価値観は更新されていくのかもしれません。
☆
また、めんどくさそうなネタをエッセイに書いてしまった。見てて興味深かったのだけれど、これを読む人の興味を引くかどうかは別問題だよなー。
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