第38話 ガンプラとラノベの夜明けの話

 昨年の春のことになるのですが、息子がわたしの弟(息子からすると叔父さん)からプラモデルをプレゼントされました。オタクな弟がプレゼントしてくれたのは、ガンプラです。RG(リアルグレード)1/144サザビー。1988年に公開された映画『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』のなかでネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルが搭乗するモビルスーツ・サザビーのプラモデルです。


 弟よ。シャアとサザビーが好きなことは知っているが、10歳の息子にとって『逆襲のシャア』は、はるか昔のアニメなんだぞ。なにしろ1988年といえば昭和63年になる。いまはおじさんのわたしもまだ高校生だったのだ。


 この年は、機動戦士ガンダムのヒットにはじまった「巨大ロボットが兵器として活躍するテレビアニメ」のブームが終わり、サンライズが『魔神英雄伝ワタル』を送り出した年です。小学生をターゲットにしていた『ワタル』をきっかけにわたしはテレビアニメから離れていきました。


 時代はバブル景気の只中で、世の中の何もかもが景気がよかった。1988年のベストセラーを調べると、純文学では、村上春樹の『ノルウェイの森』、『ダンス・ダンス・ダンス』、吉本ばなな『キッチン』があり、エンタメ小説では西村京太郎「十津川警部シリーズ」、赤川次郎「三毛猫ホームズシリーズ」が入っている。西村京太郎はつい先年亡くなったけれど、ほかの3名は健在(ってか、吉本さんまだ老け込むような年ではない)で、いつまでの書き続けてほしいと思う。


 当時のわたしはというと、創元推理文庫から出ていた海外SFとゲームブックを主に読んでいました。88年は、そこに角川文庫からアニメ絵(セル画風のイラスト)を表紙カバーに採用した小説が発表されるようになりました。それまで一部のマニアに向けてソノラマ文庫などから出版されていた、のちにライトノベルと呼ばれるようになる作品群が大手出版社の角川書店から出版されるようになったのです。


 ここでは渡邉由自「魔群惑星シリーズ」、富田祐弘「ガルフォースシリーズ」、水野良「ロードス島戦記シリーズ」、そして富野由悠季『機動戦士ガンダム逆襲のシャア ベルトーチカチルドレン』など、アニメの脚本のような小説が発表されていました。これらの作品群は、翌89年にいまではラノベの老舗レーベルとなった角川スニーカー文庫として独立します。


 叔父さんからもらったプラモデルは、小学生の息子にはまだ難しかったようで、「お父さん作ってくれ」とわたしに丸投げされました(笑)めんどくさいなあ〜となかなか進捗しませんでしたが、先日やっと組み上げることができました。1/144サザビー、かっこいいです。35年以上も昔のアニメですけど息子もかっこいいなと言っています。『機動戦士ガンダム逆襲のシャア ベルトーチカチルドレン』をネットか古書店で探して読むのもいいなと思いました。

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