第32話 本屋大賞2024を控えて
暖かくなって全国から桜が開花したという便りが届く(だれに?)季節となりました。藤光も昨日、近況ノートに書いたよう桜を見てきました(桜と同じくらいの人も見ましたが)。みなさんの住む地域ではどうでしょう。桜は咲きましたか、え、満開? いいですねえ。春を楽しみましょう。さて――
小説の賞レースについてエッセイを書くことはあまりありませんが、珍しく賞レースの候補作を読んだのでそのことを書きますね。
4月10日に2024年本屋大賞が発表されます。小説読みを自称する藤光ですが、賞レースの候補作を読むほど読書に熱心ではありません。いつもは本屋大賞が近づいたからといってノミネート作品を読むようなことはしませんが、今回は珍しい作品がノミネートされていたので読んでみました。
『放課後ミステリクラブ ―金魚の泳ぐプール事件―』(知念実希人 ライツ社)
児童書ではじめて本屋大賞にノミネートされた本らしい。
――児童書かあ。
本屋大賞に児童書がノミネートされるとは意外でした。でも、いいんじゃないですか。芥川賞に児童書がノミネートされるわけないですし、直木賞でも難しいでしょう。本屋大賞のような知名度の高い賞レースに、普段は脚光を浴びることのない児童書がノミネートされるのは、児童書の地位向上と児童文学者のモチベーションアップのため、意義のあることだと思いました。ま、知念実希人さんは児童文学者じゃなくてミステリ作家ですけどね。
ミステリ作家が書く本なので、内容は小学生向けのミステリ――推理小説でした。子供向けなので殺人事件は起こりません。小学生探偵がプールに放たれた金魚の謎を解きます(かわいい)。登場キャラクターが小学四年生なので、ターゲットは小学校中級向け。本を読み慣れた五、六年生なら物足りないかもしれません。
とはいうものの、小説の構成は本格派で、事件が起こり、名探偵(?)と登場人物についての描写があり、現場臨場、関係者の証言と証拠を集め。名探偵の謎解きがはじまる前に《読者への挑戦状》が名探偵(作者)から示される――という、往年の探偵小説に見られた「本格推理小説」の体裁をとられていて、読者と作者の知恵比べか楽しめる構成になっています。むかしの推理小説を読んでいるようでとても楽しめました。
小説の分量は、大人なら30分くらいで読めてしまう程度なので、ごく少ないです。それだけにミステリ要素がぎゅっと詰まっていて無駄がなく、読んでいてダレる箇所がありません。子どもでも集中して読むことができるでしょう。
『放課後ミステリクラブ』は推理小説の魅力を凝縮したミステリ入門書としてなかなかの出来栄えだと思いました。本屋大賞受賞は……それでも無理かなあ。発表は4月10日です。
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