第14話 思わずひざを打った話

 このエッセイを読んでいると、わたしがときどき短歌を作っていることが分かると思います。小説は素人ですが、短歌は小説に輪をかけて素人なので(!)、なにか短歌づくりが上達する本はないかと図書館で本を探しました。ところが、なかなか良い本は見つかりません。


 初心者に短歌の作り方を指南する内容の本はいくつもあるのですが、どれもこれもピンとこないのです。わたしが短歌をつくるきっかけとなった歌人の俵万智さんの本も手に取りましたが、いまいち要領を得ませんでした。


「短歌を詠むコツなんて、教わってみにつけるものじゃないんだな」


あるいは、わたしに短歌を作る素養がまるでないからなのか、とあきらめかけたその時に見つけたのが、


『あなたと短歌』(永田和宏/知花くらら 朝日新聞出版)


という本で、これがわたしにはとても面白く読めました。


 歌人である永田和宏さんが、週刊朝日誌上でモデルでタレントの知花くららさんを相手に短歌の作る上での秘訣を教えるという体裁の連載を単行本化したもので、この「秘訣を教える」というのが、わたしのニーズにちょうど合致したようで。


 五七五七七の定型を守るのか守らないのかとか、字余りや字足らず特徴はなにかとか、文語と口語の違いや使い分けとか、新仮名遣いと旧仮名遣いの違いと効果とか、永田さんが知花さんに短歌を作る上での秘訣は多岐にわたります。


 そのなかで、わたしが思わず膝を打った話を取り上げたいと思います。



>知花

 せっかく見つけたものをありふれた表現の歌にしないためには、どういう点に気をつければいいですか?


>永田基本中の基本としては、みんなが安心して使える手慣れた言葉は使わないこと。そういう意味で慣用句はもっとも駄目。(中略)短歌の批評において「これ慣用句だね」というのは最大のけなし言葉だから。



 永田さんの「秘訣」に思わず、おおっ! となりました。以前から、わたしがなんとなく気づいていながら、うまく言葉で説明できなかった違和感のようなものを明快に指摘してくれたような気がして、ものすごくスッキリしました。そうか慣用句はダメなのか。


 わたしは、ことわざや故事成語、慣用表現がとても好きです。これら古くから使われてきた言い回しを、適時適切に文章に組み込んで読んだり書いたりすることが、知性であり教養だと考えてもいました。でも、現代短歌や小説のような文芸では、そうじゃないんですね。


 近代以前と違い、どんな人間がその創作物を創作したのかが大事になる現代の文芸では、意味の固定化が進んだ古い言い回しは避けて、多少稚拙ではあってもその人ならではの、その人にしか書けない文章表現・言葉の選択が求められているということなんですね!


 なるほど。わたしの小説、わたしの文章が物足りないと感じるのは、使い古された表現が多いからなんだ――納得しました。ありがとうございます。(だれに対するお礼 笑)


 わたし、小説を書いていて文章表現に困ったらすぐ慣用句に逃げるんですよね。なんとなく自覚ありましたけど……。慣用表現って文章をそれっぽく整えるためにとても便利なんです。それがわたしの小説をつまらなくしてたんだなあ。


 もっとがんばろっと。。。

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