第12話 月まで連れてって
日本の無人月面探査機「SLIM」が月面着陸に成功したというニュースが昨夜から今朝にかけてネットを駆け巡りました。月面に探査機を送り込んだ国は5カ国目。この国の宇宙開発の画期となる出来事のはずですが、ニュースのトーンは控え目で、関係者からは「ぎりぎり合格の60点」という辛い評価も聞かれました。どうしてこんなに評価が低いのでしょうか。考えてみました。
JAXAが「60点」とコメントした理由は、
搭載された太陽電池が発電できないため、数日間の予定だった月面での活動を数時間に縮めざるを得なくなったためらしい。着陸そのものには成功したが、着陸後の探査活動がほとんどできない――成功と失敗が半々だといいたいのでしょう。
――いやいや、月面着陸させただけでも大きな成果。成功でいいじゃないですか!
とわたしなどは感じますが、この国を覆っている時代の空気が、JAXAに「60点コメント」を言わせたように感じました。
コスパとかタイパとかいう言葉がよく使われるように、「それにかけたお金はその結果に見合っているのか?」や「それにかけた時間はその結果に見合っているのか?」という問いかけが重視される時代です。JAXAの職員さんたちも、今回の無人月面探査機の月面着陸が、そのためにかけた費用と時間に見合った結果なのか、厳しく問われるのでしょう。
――うーん。着陸は成功したけど探査は失敗。コスパは高くないよなあ。60点くらい?
というコメントなのかなとわたしは思いました。
そんな考え方しなくていいですよ。だれもやったことのないことをするときは、金も時間にも糸目をつけずにやってほしい。考えついた人に思う様やらせるべきですよ。研究者な60点なんて言わせるようじゃダメです。
逆にいうと、この国にはお金も時間も余裕がないということ。余裕がないから効率的に使わないと勿体無いという考え方が生まれる。だれも成し遂げたことのない冒険とか、だれも見たことのない発明なんてものは、数えきれないくらいのチャレンジとほぼ同数の失敗、ごくわずかな成功の結果でしょう? たくさんの失敗を許容できる余裕が社会にないと、生まれるはずの成功も生まれないですよ。
今回は月面着陸を素直に喜びましょう――ってなことを考えていると、なんだか小説を書くことにも通じるような気がしてきました。
わたしは何かに急かされるように小説を書いていて(や、ほとんど書いていませんが 汗)傑作、とは言わないまでも自分で納得のいく小説が書けないと、失敗だ〜とか、時間の無駄だった〜とか頭を抱えがちでしたが、これからは、そこまで書けた自分を褒めてあげようと思いました。そして書きたい気持ちを育てていこうと思います。
よーし、書くぞ〜。
<<追記>>
1月30日。
太陽電池が発電をはじめ、SLIMの機能が再起動したというニュースが入っています。ぜひ、月世界に関する新しい発見をものにしてほしい。
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