第10話 わたしの詠む短歌

「怨歌」という言葉があります。「えんか」と読みます。普通は「演歌」と書く、ああいう感じの歌謡曲ですね。演歌、歌います?


 わたしは80年代に青春を送ったのですが、70年代から80年代前半にかけては「演歌の時代」でした。たとえば「輝く!日本レコード大賞」でいうと82年から三年連続で演歌がレコード大賞を受賞してます(細川たかし「北酒場」、「矢切りの渡し」、五木ひろし「長良川艶歌」)。そういや「艶歌」という当て字もありますね……。


 あー話が逸れました。「怨歌」の話でした。「怨」という字は「うらむ」と読めます。「怨歌」は、愛しいあの人との関係が思うようにならない有様を情念込めてうたう歌という意味なんだろうと思います。


 75年のレコード大賞は、都はるみさんの「北の宿から」が受賞していますが、その三番の歌い出しはこうです――


 あなた死んでもいいですか

 胸がしんしん泣いてます

 窓にうつして寝化粧を

 しても心は晴れません


 おそらくは道ならぬ恋の相手である男性をひとりホテルで待つ女性が、ガラス窓越しに夜の街を見ながら「わたしが死んだらあの人はどう思ってくれるんだろう」と考えているって歌詞かな。


 ちょっと怖いですよね。こうした情念系演歌はたくさんあって、「怨歌」という言葉が生まれたわけです。



 どうしてここまでこんなことを書いてきたかというと、最近のわたしはぽつりぽつりと短歌を作っているのですが、なんだか作る短歌がなと思って。


 風景や物を短歌に詠んでいるのはそうでもないですけど、自分の気持ちを詠み込んだ歌はなーんかじめっとして清潔じゃない感じがするんです。一言でいって、うじうじした短歌が多い。


 ――こりゃ短歌じゃなく「怨」歌だね。


と思ったわけ。


 男らしくありませんかね? じつは情念系演歌も作詞は男性であることが多いんですよ。「北の宿から」を作詞した阿久悠も男性だし。別れた異性に未練がましいのは、女性よりむしろ男性かもしれません。わたしの短歌がうじうじしてるのは、逆に男らしいのかも〜(笑


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