第4話 絶望したようです
【リリタード王国】東部にある【フローズヴィトニル辺境伯領】の領都【フェンリスウールヴ】は別名『
長い歴史を経て築かれた純白の美しい街並みは、辺境伯領の歴史であり、領民の誇りであった。
「あっ、ああ…………」
そんな街並みではあったが、今ではあちこちから火の手が上がる瓦礫の山と化していた。
この街で生まれ育った記憶が僕の脳裏に去来し、失われた光景に思わず涙がこぼれてくるのだった。
ことの発端は、領都の北方にある【バルドー山】から大量の魔獣が現れたことだ。
まるで何かに追い立てられるかのように、多くの魔獣が山を下りてきた。
『
そこで、辺境伯である父上は精強で知られる『
魔獣の数は多いものの、大陸最強と謳われる『
親善使節として訪れていた【ドルレアンス皇国】の一団が街に火を放ち、東門の扉を開け放つという愚挙を起こさなければ。
今になって考えれば、
何せ主力が不在となった瞬間に、街に火の手が上がったのだから。
街を守護する憲兵や近衛たちが奮戦するも、使節団ばかりか商人に身を窶していた者までが破壊工作に加わり、あっという間に街は機能を失ったのだ。
更に、街が混乱する中、陣頭に立って収拾に努めていた両親に刺客が向けられて、ふたりとも明日をも知れぬほどの怪我を負ってしまう。
そして、その後を継いでお飾りの指揮官となった僕もまた、街のあちこちで上がっている破壊の魔術の余波に巻き込まれて気を失ってしまったのだった。
完全に【ドルレアンス皇国】の手のひらの上だ。
何とか街から敵を追い出すことは出来たものの、街の周囲にはいつの間にか【ドルレアンス皇国】の大軍が布陣していた。
これほどの大軍が接近することに気付かないということはあり得ないので、おそらくは内通者が手引きしたのだろう。
友好国だと安心しきっていた父上や家臣団
の責任だろうが、そこまで【ドルレアンス皇国】が狡猾だったということもあるだろう。
街のあちこちから人々の苦痛の声が上がる光景を、僕は呆然と見つめるのであった。
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