第2話 転生したようです

「坊っちゃん!」

「【ニコル】様ァ!」

「当主様が目を覚まされたぞ!」

「わぁぁぁぁぁ!!」


 僕が目を覚ましたのは、どこか知らない部屋の中だった。

 カーテン越しに差し込むまばゆい光の中、うっすらと目を開けると見知らぬ天井が見える。


「…………ここは?」

 

 確か僕は飲酒運転のソリにぶつけられて、大地に叩きつけられた…………はず……ん?

 

「な、な、な、な、なんじゃこりゃ〜!」


 思わず叫び声を上げるのも無理はないだろう。


 サンタクロースのひとりとして恥ずかしくないようにと鍛え抜いたはずのこの身体が、小さくなっている!?

 ぷくぷくとした紅葉のようなちいさい手のひらを見て、愕然とする僕。


「えっ?えっ?えっ?」


 訳も分からずに右往左往する僕を見て、笑顔でわっと集まって来る人たち。

 誰も彼もが美男美女で、中世のヨーロッパ風の格好をしている。  


(おいおい、ここはどこなんだ?)


 そんなことを考えていた僕は、床にペタンと座り込みながら、泣きじゃくっている少女の姿に目を引かれる。

 年の頃は11,2歳くらいであろうか、流れるような白金色の髪プラチナプロンドに、白磁器のごとき真っ白い肌。

 そして、特筆すべきはその頭にちょこんと乗った長い耳と、お尻のあたりにちょこんと見え隠れする丸くてモフモフな尻尾!


(ウサ耳美少女キターーーーーーーーッ!)


 まさか、こんな近くでここまでリアルなコスプレを見られるとは……。

 役得役得。


 そんなことを思っていたこともありました。


「若が意識を取り戻したと?」

「若ッ!若ッ!」


 部屋のドアをぶち破らんばかりに勢いよく入って来た筋骨隆々な男たちを見るまでは。


「うおおおおおおおおおっ!!」


 先ほどよりも驚く僕。

 やって来たふたりは人の身体でありなから、頭には虎の顔がついていたのだ。

 おおっ!

 まさに、タイガー○スクとブラック○イガーだ!


 このダブルタイガーは、僕を頭から食べるのかと恐怖するほどに近くに顔を寄せて来る。


「どこか悪いところはありませぬか?」

「どこか痛むところはありませぬか?」


 怖えよ!

 

 だが、間近で見て気づく。

 これはマスクじゃない!


 言葉を発するのに合わせて口は動くし、眉間にシワを寄せたり破顔したりと表情がコロコロと変わるのだから。


(もしかして……。僕って転生した?)


 僕がそんな結論に至った瞬間、様々な情報が頭の中を埋め尽くす。


(痛ってえええええええええええええええええ!)


 まるで、頭の中を針金でかき回されているかのような痛み。

 あまりの激痛で声すらも出せぬまま、僕は再び意識を失うのであった。 

 


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