第4話 オオカミ君、またしても文字が読めず

扉の裏側にはまた看板があって、難しい文章が書いてあった。簡単に訳すと、


訳:試練を乗り越えた君にここに住む権利を与えちゃうよん。少し行ったところにある半鐘(はんしょう)を鳴らしてね。


みたいな感じである。


オオカミ「…?」


当然彼には読めない。

そういえばあの大木なんて言ってたっけ、…ナントカまでついたらカネを鳴らせ、だ。カネってお金のこと?持ってないけどどうすればいいの?クエスチョンマークを飛ばしながらしばらく困っていると、真っ暗な長廊下の遠くの方で横並びの二つの光がチラッと点滅したのを目の端で捉えた。

え、試練って終わりじゃないの…!?

途端に目が乾燥し、背中の冷や汗が服に吸われていく。光が少しずつ近づくにつれて心臓の鼓動が激しくなった。緊張が頂点に達した時…

キラキラの塊がシュッと影から飛び出た。


??「ナオーン」


オオカミ「ウオッッッ」


キラキラの正体は猫であった。

星が散りばめられた夜空色の毛をしていて、グリーンゴールドの瞳が美しい。

見事なバランス感覚でオオカミ君の肩に飛び乗り、サリサリと前足の毛繕いを始めた。

彼女はホーンテッドシェアハウスの管理者の一匹、ミス・ルーナ。

見学者が来たと連絡を受け取ってからずっと待っていたのに、中々来る気配がなかったので見兼ねた彼女が自ら案内しに来たという訳である。


猫「ナオ」


オオカミ「どちらさまで…?あち、イテッ」


にゅっと爪を出した前足でオオカミ君の頬をペシペシして肩から飛び降り、オオカミ君を半鐘のある所まで先導した。


オオカミ「あ、カネってこれのこと?すごく黒いな」


真っ黒い鐘を鳴らしてみた。

鐘音は聞こえなかった。

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