第2話

 それから数年。


 何度も現場に携わり、事務所が大きくなっていく様を見ていながらも、俺の立場は変わらなかった。


 むしろ、本来数人で検証する新規ダンジョンのロケテストを俺一人に無理矢理やらせるなど、悪化していった。


 相変わらず、叔父さんが口出ししないのだけが救いだった。


「おい佐々木。最近発見されたダンジョンにお前一人でロケテして来い。ドローンは一機だけ貸してやるからちゃんと中撮って来いよ? 絶対壊すんじゃねぇぞ。お前の命なんかよりよっぽど価値があるんだからな。わかったか!!」


 うむを言わさずドローンを押し付けられた俺は、愛用の電磁警棒を持ってダンジョンの前に立った。


「はぁ……また俺一人だけでやるのか。所属配信者の数は増えてもスタッフはあんまり増えないし、増えるのは俺の負担だけ……。仕方ない、やるか」


 俺はドローンを起動して……あれ? 動かないな。……あ、動いた。


 俺はドローンを起動して、ダンジョンの中へと潜っていった。


 <ネット配信モードで起動。配信開始致します>


「あれ? 何か聞こえたような? 気のせいか……」




 その頃、某有名動画サイト。


 ――お? 誰か知らんが、配信が始まったぞ。ここどこのダンジョンだ?


 ――さあ、地形だけじゃなんとも。ええっと配信者の名前は……ドローン1? 名前設定し忘れてるのか?


 ――なんだ、うっかりした奴だな。お、早速モンスターが出たぞ……ってあれは!?



「なんだ、新規ダンジョンって言うから何が出るかと思えば……ただのオオトカゲじゃないか」



 ――お、おい! あれってかなりヤバいダンジョンにしか居ないはずの高ランクのドラゴン種じゃないか!? や、ヤバいって……て、え!?



 ドスッ! 俺はトカゲの火球を搔い潜り電磁警棒を心臓辺りに突き当てた。この程度のトカゲにはこんなもんで十分だ。



 ――な、なんだってええ!!? あの速さで飛んでくる火球を搔い潜っただとお!!?


 ――し、しかも急所を見極めて一突きで倒しやがった! こ、こいつ何者だあ?!



 それからも中を進んで行く俺、特に強いモンスターも現れず、あくびが出るくらい順調だった。



 ――お、おい!? さっき倒した奴って高ランクのブラウンドラゴンだぞ!?


 ――あいつ知らないのかぁ!? あのモンスターは最低でもS級以上の冒険者がパーティーを組んで倒すような奴だぞ?! そんなのにソロで挑むなんて……。


 ――息も切らさずに進んで行くぞ!? う、うわああ!? 今倒した奴って特定の手順でしか倒せないって噂のレッドドラゴンだぞ!? そ、それを一撃で……。ま、まさかあんな倒し方があったなんて……。


 ――お、おい!? 今すぐこれをSNSで広めようぜ! 世紀の大発見だ!!!



「うわっ!? なんか地面が揺れているな。地震か?」


 急にダンジョン内が大きく揺れ始めた、それも徐々に強くなって……いやこれはこの揺れ方、何か別のものが近づいて来ている?


 ボスクラスかな? とっとと撮るもの撮って帰りたい俺は、ネタになりそうな大物に期待して前へと足を進ませた。

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