いじめられっ子の陰キャの俺が……いつの間にか美少女配信者に好かれてるう!? 何故か分からないが成功した俺の人生

こまの ととと

第1話

 俺こと、佐々木太郎はいわゆる陰キャだ。


 その日も学校の帰りに、クラスの不良にこんなことを言われた。


「おい、クソ陰キャ! お前の金でたばこ買ってこい!」


「え? いや、え?」


「あ? お前誰に口聞いてるんだ!? あ!?」


「ご、ごめんなさい! ごめんなさい。でも流石にたばこなんて……」


「うるせぇ! 年齢くらい誤魔化せんだろ!!」


 なんて言われて、放課後にコンビニに買いに行かされた。


 だけど……。


「申し訳ありませんが、未成年への販売は……」


「ご、ごめんなさい!!」


 当然出来るはずも無く、俺は店員に謝りながら店を出た。


 どうしよう?


 そう思った時だ、なんと道端にたばこが未開封で落ちていた!


「やった!! これで怒られないで済むぞ!!!」


 俺は喜んで、たばこを持って不良たちの待つ放課後の学校へ向かった。


 けれど……。


「持ってきたぞ!」


「……先生、こいつたばこなんて学校に持って来てるぜ!」


「なんだと!? 佐々木!! お前来い!!」


 放課後だというのに、わざわざ教室に戻って来たのに。


 俺はどうやらはめられたみたいだ。


 そのまま廊下に居た先生に職員室まで連れて行かれて、たくさんの先生の前で三時間も説教を受けた。


 しかも、停学処分。

 

 家に帰れば学校から連絡を貰った両親が怒りながら待っていた。


「学校でたばこを吸うなんて、なんて事をしたんだ!!」


「そんな……! 俺吸ってなんて」


「言い訳をするんじゃありません!! こんな子に育つなんて、お母さん教育を間違えたわ」


「お前は我が家の恥だ!! 出て行け!!」


「そ、そんな!? あんまりだ! 俺の話を聞いて」


「不良の言い分なんて時間の無駄だ!! 荷物をまとめて田舎の親戚の家に行け!! 学校には退学の連絡を入れておく、二度とこの家の敷居を跨ぐな!!!」


 あ、あんまりだ!


 逆らおうとしても拳を振るおうとしてくる父親、俺は涙を流しながらうなずくしかなかった。


 荷物をまとめて、田舎のばあちゃんの家に来た。


 といっても、この家には誰も住んでいない。


 近所に住む叔父さんが管理しているだけで、祖母は数年前に亡くなっている。


 今は叔父さんが俺の保護者だ。特に会話をする事も無いが責めてもこない。



 それはそれで気にした俺は、せめてバイトをして生活費を稼ぐ事にした。



 ダンジョンの出現により、昨今は多数のダンジョン配信者が現れ、それに伴ってダンジョン配信専門の事務所が出来た。


 ダンジョンは田舎にしか出来ない、という条件が重なったおかげか、俺の住む田舎にもダンジョンと事務所があった。


 俺はそこの求人に応募して、見事バイトとして働く事になった。のだが……。


「トロいんだよお前!! 機材運ぶのにどれだけ時間かかってんだ!!!」


「で、でもあんな量を俺一人で運ぶとなると……」


「下らない言い訳はやめろよ! 時間通りに配信しなきゃならないこっちの苦労くらい少しは考えろよ! お前一人のせいでみんなが迷惑するんだぞ!!」


 スタッフ不足で配信用の機材や道具運びは俺一人。現場の人間たちはいつもピリピリしていて、少しでも俺が遅れると一斉に怒りだす。


「ほっんとトロ臭いよお前。私の配信が遅れたらどう責任を取るんだよ? お前の代わりなんて直ぐに用意出来るって事をちゃ~んとその馬鹿な脳みそに刻み込めよ。このグズが」


「……っ!?」


 美少女配信者と運営の横暴が酷い。


 彼女はこの事務所の稼ぎ頭で、実質社長の次に偉いと言っていい。


 何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ?


 そんな不満は腹の底に押し込んで、俺は頭を下げて耐える事しか出来ない。


 いびられる俺を見て、周りのスタッフたちは嘲笑する。ああやってストレスを晴らしているんだ。


(俺は今をときめくダンジョン配信に関わって、その凄さをこの目で見て、手伝いがしたかっただけなのに……)


 憧れに近づけ、お金も稼げる。一石二鳥だと思っていたのに……。


 現実はどこまでも俺に厳しかった。

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