第2話 彼女の願い
とりあえず敵国の者ではないことを証明する為に俺はこの人達について行っているのだが歩いている途中で度々謎の文字が頭の中で流れているという不思議な感覚になる時があった。
これは一体何なのか気になっていたが異世界だからそういうこともあるのだろうということで結論づけている。
それにしても一体どこに向かっているのだろう。
特に話す話題もなかった俺はその疑問を晴らす為に聞くことにした。
「今はどこに向かってるんですか」
「私達の支配下であるオラリアム村に向かっているのよ」
俺はどうやら村に連れて行かれているらしい。
「それでそのオラリアム村には何をしに行くんですか?」
「他領地の侵攻の阻止よ」
「侵攻?」
「侵攻よ」
そこで会話が途絶えてしまった。
侵攻以外の情報はくれないのかよ。
てかそれは仕方ないことか。なんせ俺は今敵国だと思われてしまっているんだからな。
「皆、まもなく到着だ。各々やることを徹底して行え。そして貴様は先程の魔法を使い住民を守れ」
「わかりました」
魔法を使えって言われてもさっきの筋肉質の人に当たった魔法は無意識に起こったことだしな。
意識して魔法を起こすなんて俺には出来ない。
ただの人間だし。
俺はそのあと何も話すことはなくそのままオラリアム村に到着した。
オラリアム村は木造の建物があちこちに建っていた。
大きな畑がいくつもあった。
恐らくだがオラリアム村は農業が盛んなのだろう。多分。
そんな推測をしていると村から悲鳴が聞こえてきた。
それも一人の悲鳴ではなく複数人が悲鳴をあげていた。
悲鳴の直後サンドリーヌ様が
「皆、急げ。一人でも多く助けるんだ」
というと他の五人はそれに返事をして村の奥へと進んでいった。
そのあとその場に残ってしまった俺はどうすればいいのかわからずとりあえず村の奥へ進もうとした時サンドリーヌ様が話しかけてきた。
「私は、貴様が悪ではない事を信じている。それを確信に変えるべく今証明せよ。村の者を助けてくれ」
サンドリーヌ様の最後の言葉に違和感を感じた俺だったがあまり深くは気にすることはなく、「わかりました」と返事を返し村の奥へと進んでいく。
少し歩いていると村は悲惨な状態になっていた。
地面に倒れる住民、燃え盛る木造の家、そして目の前でまた一人斬り殺されていく。
俺にどうやってこの村の人を救えばいいんだ。
さっきの筋肉質の塊に対して放った魔法はきっと無意識にやったこと。
だから意識のある状態で魔法を使うことなんて…。
「男の子さん! 危ないです!!」
悩んでいると見知らぬ声が聞こえてきた。
危ないってどういうことだ。
視界を前に向けると目の前にはこちらに剣を向け飛びかかってきている一人の男がいた。
まずい。
まさかまた死ぬってのか。
せっかくあの危機から逃れられたというのに。
剣が目の前まで来たところで俺は無意識に目を瞑った。
すると先程の女の子の声が聞こえてきた。
「えーーい!!」
その瞬間男は姿を消した。
「た、助かった」
「いえ。それより男の子さんもぼーっとしてないで戦ってください!」
今、気づいたのだが俺の事を助けてくれたこの綺麗な水色の髪をした女の子はどうやらあのサンドリーヌと一緒にいた人だった。
本当に助かった。
だけど男の子さんってなんだ?
他にもっと言い呼び方があったのではないのかと思いながらさらに村の奥へと進んでいく。
すると目の前に村の住民が倒れ敵に襲われそうになっていた。
早く助けに行かないと。
魔法を使わないと。
なんでどうして魔法が使えないんだ。
さっきは使えただろ。
早くしないとあの人が殺されてしまう。
早く。
「魔法を使え!!!!!!」
その瞬間俺の体に謎の衝撃が走った。
その次にここに来る道中に現れた見たことのない文字が頭の中を流れる。
前よりもさらに多くの文字が。
「……」
俺は目の前で殺されそうになっている人がいるのにやけに冷静だった。
そして、
「
と無意識に呟いた。
すると離れた場所にいる敵の影から槍が現れて体を貫いた。
しばらくしてその槍は消え敵は血を流しながらその場に倒れ込んだ。
「あ、ありがとうございます! 貴方は魔王様の新たな仲間ですか!! 流石です!!」
「い、いや別に仲間というわけでは…」
「助けてもらったのにこんなことを言うのもあれなのですがあっちにもまだ沢山の人がいるんです! 助けて頂けませんか!!」
「わかりました」
「ではついてきてください!!」
今しれっと魔王様と言わなかったか?
あの中でリーダー的な存在と言えばサンドリーヌ様だろう。
もしかしてあの人が魔王なのか!?
とんでもない事を知ってしまった。
もしそれが本当だとしたら転生した直後に魔王に会うとか不運すぎなのでは。
俺は心の中で色々思いながら男についていく。
周りでは戦闘をしていたり救助をしていたりと忙しそうだった。
「こちらです! あの者が多くの住民を人質にとっているんです。恐らくあれが敵のリーダーだと思います!」
男の言う先には強そうな鎧を着て綺麗な槍を持った大柄な男と数名の仲間らしき人がそこにはいた。
明らかに強そうな見た目とそのオーラからして本当にリーダーなのだろう。
きっとあのリーダーを倒せばこの戦いもそして俺が敵国の人間に間違えられていることも全てが解決するはず。
なら選択肢は一つ。
あいつを倒す。
俺は敵のリーダーに近づき出した。
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