大切なマフラー

寒い時期になると、ランデリックの首にはマフラーが巻かれるようになった。去年、婚約者のリリアからプレゼントされたものだ。

彼はその時にした会話を思い返す。

「ランデリック様」

「なんだい?リリア」

「もっと近くに寄ってくれませんか?」

「構わないが、何を――」

近づいた瞬間、うなじにふわりと柔らかいものが触れた。

「できました!長さもちょうど良いみたいです」

「えっと、これは?」

「マフラーですよ。冬用の襟巻きなんです」

「ありがとうリリア、大切にするよ」

そんな会話をしてから約一年が経とうとしている。ランデリックは呟いた。

「僕はまだ彼女を愛する気持ちがあるが、リリアはどうなんだろう……」

学園に入学し、聖女であるティーナが転入してからというもの、ランデリックとリリアの間には溝ができてしまった。

「よりを戻すことはできるだろうか……」

その呟きは白い息として吐き出され、やがて消えていった。

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