大切なマフラー
寒い時期になると、ランデリックの首にはマフラーが巻かれるようになった。去年、婚約者のリリアからプレゼントされたものだ。
彼はその時にした会話を思い返す。
「ランデリック様」
「なんだい?リリア」
「もっと近くに寄ってくれませんか?」
「構わないが、何を――」
近づいた瞬間、うなじにふわりと柔らかいものが触れた。
「できました!長さもちょうど良いみたいです」
「えっと、これは?」
「マフラーですよ。冬用の襟巻きなんです」
「ありがとうリリア、大切にするよ」
そんな会話をしてから約一年が経とうとしている。ランデリックは呟いた。
「僕はまだ彼女を愛する気持ちがあるが、リリアはどうなんだろう……」
学園に入学し、聖女であるティーナが転入してからというもの、ランデリックとリリアの間には溝ができてしまった。
「よりを戻すことはできるだろうか……」
その呟きは白い息として吐き出され、やがて消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます