大きな木が立つ川のほとりで

 ふたりは、物語を語り合いながら、町を目指して歩き続けました。


 聖母さまに供えられていたパンは、ひと口かじるだけで、おなかがいっぱいになりました。

 蜂蜜も、ほんのちょっとなめるだけで、のども乾かずに歩き続けられました。


 

 けれど、村を出発してから、十日と三日が過ぎた頃。

 焦げくさい臭いが、どこからか漂ってくるようになりました。


 ふたりは、川のほとりに立つ大きな木を見つけ、その下で眠ることにしました。

 でも、嫌な臭いは消えません。

 サトルくんは不安になって、エイジくんにたずねます。


「エイジくん。木が燃えている臭いが止まらないよ」

「大丈夫だよ。まわりに森はないし、何も燃えていないから」


 エイジくんは、サトルくんを元気づけようと、明るい声でいいます。

「明日には、町につくよ。父さんたちにも会える。もう少し、がまんしよう」

「……うん……あれ?」


 サトルくんの目に、何か赤いものが映りました。

 目の奥で、炎のような赤い色がパッと広がり、消えるのが見えるのです。


「エイジくん、赤い花のようなものが見えたよ」

「疲れて、目が悪くなっちゃったのかも。少し、熱があるみたいだ」


 エイジくんは、布の切れ端を水で濡らし、サトルくんのひたいに当てました。


「ありがとう。エイジくん。気持ちいいよ」

「よかった。明日も、ここで休むといいよ」


「ごめんね。ぼくのせいで、町につくのが遅れちゃうね」

「大丈夫だよ。一日ぐらい遅れても」


 エイジくんとサトルくんは、ぴったりとくっついて眠ります。

 いつしか、焦げた臭いは気にならなくなりました。

 サトルくんは、赤い花のことも忘れ、ぐっすりと眠りました。

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