旅の途中で

 ふたりは、歌をうたいながら歩き、谷の真ん中で一夜を過ごすことにしました。

 焼き菓子を食べ、水を飲み、お父さんのマントにくるまって寝ます。


 月の光は、谷に咲く花を照らします。

 それを浴びた黄色い花は、金色にかがやきました。

 それはとても明るく、ふたりは安心して眠りにつきました。


 朝になると、花の蜜をなめ、焼き菓子を食べました。

 湧き水を飲み、皮袋にも水をつめて出発します。


 


 谷をこえると、ゆるやかな道が続きました。

 しかし、歩いている旅人はいません。

 

 みんな、町にいるのかな?



「エイジくん、誰もいないね」

 サトルくんは不安になりました。

 村から出て、五日が過ぎました。

 でも、鳥の声すら聞こえません。


「うん、少しおかしいね」

 エイジくんも、不思議そうにいいます。

「悪魔のせいで、鳥も遠くに逃げちゃったのかな」


「ねえ、エイジくん。おなかがすかない?」

 サトルくんは、おなかを押さえました。

 持って来た焼き菓子は、昨日で食べ尽くしてしまいました。

 もう、食べ物はありません。



「サトルくん、向こうに教会があるみたいだ」

 エイジくんは、サトルくんの手を強く握ります。


「教会の塔が見える。食べ物をもらえるかも知れない。行こう」

「うん、行こう」


 サトルくんは、手を引かれるままについて行きます。

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