ニセモノ
「そう、ですね。私は最強のエスパーじゃないのかもしれません」
「「え?」」
肯定したニセモノの最強のエスパーの、その柔和な態度に、ぼくと二五四は顔を見合わせてのち、話し合いでどうにかこうにか解決できるのではないかとの考えのもと、とりあえず落ち着いて話し合おうかと、椅子に座ったのであった。
「二五四に指摘されて、ああもしかしたら私は最強のエスパーじゃないのかもしれないと思いました。いえ、自信がなくなった、という方が正確かもしれません。だって、最強のエスパーなら、何でもかんでも解決できるはずですよね。この少年の記憶だってテレパスで楽々と見えるはず。でも。見られない。少年の力が強い事が原因かもしれませんが。それでも。最強を名乗っているのだから、相手の能力がどれだけ強くても関係ない。だって、最強なのだから」
険しい表情のまま、ニセモノの最強のエスパーは言った。
ぼくは二五四を見た。
「この人もぼくと同じで透明人間なのかもしれません。二五四の接触テレパスでどこの誰かわかりませんか?」
「わからないわね。ただ、最強のエスパーではないという事だけ。私以外はわからないでしょうね。だって、まるっきり、最強のエスパーだもの。外見も記憶も思考も態度も言動もまるっきり、ね」
「申し訳ない。せっかく最強のエスパーを訪ねてきたのに、ニセモノの最強のエスパーだったなんて。しかも、私も透明人間だなんて」
ニセモノの最強のエスパーに深々と頭を下げられたぼくは、いいえ謝らないでくださいと言った。
「同じ透明人間同士。力を合わせて、有明人間になりましょう」
「ああ。じゃあ、そのためにも、最強のエスパーを探した方がいいかな?」
「ええ、そうね。でも。もう一度だけ。いいかしら。あなたに接触テレパスをしてみても。あ。今度は眠った状態でね。無防備な状態だったら、あなたの事がわかるかもしれないし」
「ええ。お願いします」
「じゃあ、早速ベッドに横になってもらいましょうか」
「はい」
「あんたも傍で見ていなさい。色々なエスパーの超能力の間近で見る事も、超能力鍛錬の役に立つから」
「はい!」
(2024.1.26)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます