岩大根




 彼女の事は心配しなくていい。大丈夫だよ。

 流石は最強のエスパーというべきか。

 やさしいまなざしとゆったりとした口調も相まって、全くなくなったわけではないけれど、不安は小さくなり安心感が広まった。

 大丈夫だ。大丈夫。

 この人の言葉を信じて行動すれば、ぼくは、ぼくの力で、彼女を見つけられる。




「よし。収穫完了………できなか、ったあ」


 ぼくは背中からふかふかになった土の上に倒れこんだ。


 じゃあまずは全部収穫してきてね。

 最強のエスパーからそう言われたぼくは、腕まくりをして挑んだのだ。

 超カッチカチの灰土に埋まった、超重く、超土にしがみついた岩大根の収穫に。

 見た目もカチコチの岩大根は、天ぷらが絶品らしい。

 超カッチカチだった土は、背中と足と腕と腹を、まあ身体のほとんどを痛めて苦労して収穫し終えた瞬間、ふっかふかの黒土へと変化したのだ。


「はあ。七日で、半分かあ」


 寝食以外はほとんど収穫に当てているのだが、それでもまだ半分残っていた。

 けれど、大体時間をかけず、また、身体を痛めずに収穫する方法を自分で会得したので、これまでよりは早く収穫できて、七日よりも早く残り半分を収穫し終える。はず。


「よし。がんばるぞー」


 上半身を起こして、ゆっくりと立ち上がったぼくは、えいえいおーと腕を天高く掲げたのであった。










(2024.1.6)



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