>>柔道部

「高校から初心者がいきなり柔道始めるのは、大変なんじゃないか?」

オレが指さした部活動名を見て、タカハシは不安げな声を上げた。


「大丈夫。ほら見ろ、『柔道 高校から始める』でグーグル検索したら、いい感じで励ましてくれる人がたくさんいる」

「知らないやつの無責任な励ましに勢いづけられるんじゃない。お前あれだろ、どうせこの間のオリンピックに影響されたんだろう」


まだそれほど付き合いが長くないというのに、なぜタカハシはオレの志望動機を言い当ててしまうのだろう。だからこそ学年トップなのかもしれない。

言い当てられた事が恥ずかしかったのでそのまま黙って教室を出た。階段をいくつか飛ばして降りていくうちに、どうせミーハーなのだしもうこの勢いのまま直行してしまえばいいのではないかという気分になり、ジョーカーのように踊りながら階段を駆け下りた。軽快なステップで外靴に履き替え、少しすえた匂いのする武道場に向かい、きちんと靴を並べてから出せる限りの声を上げた。


「たのもーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


オレの声はむなしく反響してつるつるした畳の上を滑っていく。誰一人として中にはいなかった。そのまま入り口で突っ立ったままの俺の背中の向こうで、ランニング中のバレー部員たちが軽快なステップで通り過ぎていく。


「……あのー、うちの柔道部なら、今日はみんな練習試合行ってるけど……」


振り返ると大量の洗濯物を抱えた坊主頭の3年生がいた。素人のオレでもわかる、鍛えこまれた体つきをしている。足のサイズだけでも俺より二回りは大きく見える。


「あんたそのネクタイの色、1年生だよな。俺は岩田。柔道部のマネやってるんだけど、なんか用事か?」


まだ湿ったままの洗濯物は水気を含んでずいぶんと重そうだが、まったくそうは感じていないようだ。そのまま柔道場の壁際にある肋木を物干し台がわりにして手際よく干し並べていく。


「えっと、あの、オレ未経験なんですけど、この間のオリンピックでめちゃくちゃかっこいい試合みて、それでオレも柔道始めたいなって思いまして。まだほんと全然何も知らないニワカなんですけど・・・」

「へえ、いいじゃあないか!高校から初めて強くなる人も全然いるし、問題ないよ。っていうかこの間の試合、すごかったよな。俺スマホで観てて声出ちゃったよ、あの大外刈りの瞬間」

「やばかったっすよね!?」


岩田先輩はいかにもスポーツマンといった体格とは裏腹に、少し度がきつそうな眼鏡をかけていた。レンズが大きくて厚くてちょっと重たそうだけど、いかにも勉強が出来そうな雰囲気の先輩にはよく馴染んでいる。いま一瞬喋っただけでも人当たりの良さまで伝わってくるし、全然この人の事よくしらないけど文武両道ってやつだろう。うん、多分そう。勉強できるのに推薦入試で受かっちゃうタイプ。


「ところであんた、さっきなんか叫んでなかったか?」

「イッテナイデス。ボク、柔道ハジメタイダケデス」

「顔赤いな。もしかして熱でもあるんじゃないか」


眼鏡越しのまっすぐな眼差しが、さっき出会ったばかりのオレを真剣に心配してくれていることを伝える。文武両道に加えてやさしさまで持っているのかよ。体も器もでかすぎるだろ。


「あの、1年生が部活決めるのって今日が期限らしいんすけど、今日は顧問の先生もいないんすかね」

「うん?ああ、そういやそんな制度あったらしいな。入部希望の書類なら俺が預かっておくから問題ない」

「ありがとうございまっす!!今後ともよろしくおなっしゃす!!次の練習までにドカベンの柔道編は全部読んでおくんで、それ以外になにかやることあったら教えてほしいっす」

「別にドカベンは読まなくていいと思うが……そうだな。いつ何時も、ケガには気を付けるといい。ちょっとした事で、なにもかも無駄になってしまうから」


先輩は微笑んでいたが、その顔には影が差していた��は�������� �が��Q�R������ 気�っ�しまう�������������������p�^�[���@�\�岩�����先輩が��|���������先輩が、


先輩が


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