第11話 ハンター崩れ


 11ハンター崩れ




 教会で勉強したり西の川原で魔法の練習をしたり、マル爺とアスレチックの打ち合わせ、時にはギルドの訓練場で身体を鍛えたりの日々、街のギルドに見慣れないハンター3人がのっそり入ってきた。

 商隊の護衛のハンターなら夕方か夜に街に到着しギルドに到着の報告をしてすぐ商隊の元へ戻り、次の朝には出発している。なので朝にギルドにいるハンターは緊急以外なら、この街で依頼を受けようとしている者だとわかる。

 どこか暗く崩れた雰囲気を漂わせている。

 この街のハンターはとっくに依頼を受けて街を出ている。ギルドにいるのは酒場でのんびり朝食を食べているカロンとくーちゃんのみ。そんな彼らが2人に目を付けないわけない。



「チッ、なんで子連れのガキがいやがるんだ」

「いやいや、子守の依頼を受けた高名なハンターだろう、ギャハハ」

「フン、ちんけな街にぴったりの仕事だな」




 カロンはイラっとしつつも無視を決めつけつつ、食事を終えおばちゃんに手伝ってもらって、くーちゃんを背負う。薬草採取依頼を受けギルドをでる。おばちゃんが心配してくれる。



 3人がニヤニヤついてくる。

 あー、付いてきてる?めんどくせえな。どうしよっかなー。カロンは森の3つに別れた道の右の道、南東の道を進む、もちろん3人もついてきている。子ども一人でだいじょぶかーギャハハとか冷やかしてくる。冷やかしは続くが構わずカロンは進む。舗装された道も終わり茂みをかき分けさらに奥へ進む方向を少し奥地に南東から東南東に変えて急ぎ足で進む。

 ひと気も無くなり後ろの足音が早足で近づいて来る気配がする。くーちゃんも「あ“っあ”っ」と警戒音を出す。


 後の3人が「うお!」とか「わっ」と言って転んでいる。何をしたかというと、カロンが地面に「泥」の土魔法を掛けていたから。

 ジャイ〇ンを懲らしめたときに、ギルマスに魔法を使えることがバレてしまったので、なんとかバレずに馬鹿に対処する方法はないかと考えた魔法。   

 3人は足を取られつつムキになって追って来るが慌てて走ろうとすると転ぶ。カロンが木の陰に隠れた瞬間にチンピラハンターの足元に低い「柱」を出し足をひっかけ転倒させる。大きくまわりこもうとするも、そこも泥にしておく。カロンの方は柱を5度とか狭い角度でなるべく地面と平行になるように出し、それに乗って柱を前に伸ばす。地面と平行に人間ロケットのように距離を稼ぐ。

 くーちゃんがきゃっきゃ喜んでくれている。


 魔物をけしかけたらダメだよな~、魔物出てこないでくれよと、考えてるうちに3人は諦めて撤退していたようだ。


 その後、東南東に進んだおかげで魔物とはすぐに遭遇できた。ゴブリン4+2匹とボア1匹。

 ボアを倒すときには「柱」の魔法を足元から斜め横に出すことにより、斜め横にジャンプしつつ「ボール」を撃つなんて戦法も試してみた。くーちゃんをおんぶしての戦闘もいい経験になった。おばちゃんに怒られそうだけど。



 新4輪箱台車「台車くん」を出しボアを載せた魔法の「畳」を台車くんの上にパイル〇ーオンして、整備させていない道をゆっくり街へと向かう。くーちゃんはボアの上で威嚇ポーズ中。

 

 舗装された道に戻り暫くするとくーちゃんが警戒音を出す。俺はくーちゃんにお礼を言い、台車を停めずにゆっくり進む。チンピラハンター3人が木の陰から出て来た。そりゃー待ち伏せはお約束だよね。




「おうおう大漁だねえ、俺たちにも分けてくれよ~」


「えっ?嫌だけど。馬鹿なの?」


「そんなこと言うなよ~ハンター同志助け合おうぜ~」


「お断りだ、バーカバーカ」

「ばーかばーか」


「ガキが舐めた口ききやがって、こっちが大人しくしてれば付け上がりやがって。さっさと獲物をよこしやがれ!」



 ゴスゴスゴス

 バタバタバタ


 やりとりまでお約束だとは・・

 3人の顔面に手加減した「ボール」がめり込む。ボアの上で威嚇ポーズのくーちゃん。倒れた3人を道端に移動して台車くんの道を開ける。何も無かったようにカロンとくーちゃんは街に戻り、門衛とギルドのおばちゃんに事の顛末を伝え、しっかり薬草採取依頼失敗減点をいただき、ボアの後ろ脚を教会に持って行った。。



 お昼とお昼寝、勉強&遊びを終えて夕方ギルドに戻るとちょうどハンターおっちゃんズと顔をぼこぼこに腫らした3人が出て来た。あー、締められたね。


 ただし俺もおっちゃんズに呼び出しを受ける。あんな奴らをふんじばらずに放置したら、新人ハンターや弱いじじばばが標的になるから、やるならキッチリ締めろと怒られた。

 奴らは他ハンターの獲物を横取りしようとした実質盗賊なんだから、野放しにしたら弱い者が被害にあう。盗賊には容赦するんじゃねー殺すか、さもなければ手足の一本でも折っておけと。


 あー、この世界はまだまだ治安は良くないんだった、認識が甘かった。警察に通報すれば捜査・逮捕・裁判と勝手にやってくれる世界と違い、ここでは時にはハンターがその場で逮捕したり裁かないといけなかったり、意外と責任重い?大きい? じじばばに被害が出ていたら俺の責任だった。

 ふ~反省。この世界の常識に意識を合わせないと。

 ただ、盗賊が実績のあるハンターだったら嘘の弁明が通ってしまう危険も孕んでるのかもと悪意への対処を考えてたら頭がこんがらがってきた。うおーー、頭をかきむしってからの、ムンクの叫びポーズ。(ぷしゅーーおーばーひーと)

 パタンとテーブルに倒れ伏す。くーちゃんがいい子いい子してくれている。




 3人組は無事、盗賊として南のエストデセオへ護送された。聞けば他街でも問題を起こし何度かペナルティーを受けていたことが判明、本人たちは自分たちの行為がどれほどアウトなのか自覚していなかったみたいで、文句や逆ギレ、あの小僧が悪いと、全く反省の色が見られなかったとのこと。

 



【軽い気持ちで罪を犯した奴は、反省も軽いよね。】



 だから平気で再犯するのかな。やはり重い罰は必要で、それで深く反省するか、重い罰に理不尽だ!と逆切れするかは本人次第か。日本の戦国時代とかもこんな民度だったのかもな。

 でも気の滅入ることばかりじゃない。この街の人はみんな良い人、悪いことばかりじゃない。今回の反省はした、次はしっかり対応する、じじばば無事でよかった。

 明日からも楽しく生きる!



「えいえいおー!」

「?えいえいおー?」

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