第10話 帰宅


 10帰宅



 街に戻ってきました、ただいまーと門を潜りみんなでギルド裏にオークを納品して表に回る。

 おばちゃんの出迎えを受け、依頼達成のお墨付きをもらい、酒場へ行って打ち上げだー。なんだかんだ疲れたー。もちろん食べるのはオーク肉。やっぱりボア=猪、オーク=豚なのかな?いまいち違いが判らん。霜降り部位が多いのかな?うまうま。


 他のハンターのおじさん達からも労ってもらい、酔いが回ったおっさん達に絡まれ、ハンターの「いろは」どころか「せすん」まで叩き込まれそうになったところで、子供は寝なさいと女性陣に逃がしてもらった。みんな陽気なおっさんで楽しい打ち上げだった。


 カロン人生で一番楽しい食事だった。くーちゃんも女性陣の膝の上で大喜びしていた。





 次の日の昼前、ギルマスの執務室にギルマスと『風光の下』の4人。


『で、どうだった?』


 1泊2日のカロンハンター研修の内容を時間を追って説明する4人。最後にオークを倒した時の状況を話し終え。


「ありゃー規格外じゃ。そう遠くない未来、Aランクになっとるじゃろ」

「ああ、オーク4匹を片手間で墜としよったわい」

「ええ、しかも倒した時に『しまった強すぎたか?』とか呟いてたわよ。手加減してたんじゃないかしら」

「そうねぇ」




『ふぅ~、守人だから強いのか、強いから選ばれたのか…』







 そんな会話がなされている時、

 俺とくーちゃんは街の西側、小麦畑の横を流れる川の下流に来ていた。河原がそこそこ広く林が視界を塞いでくれる場所。今日は昨日のハンター研修で気づいた台車を改良する日。

 取り敢えずくーちゃんの遊具を作る。円柱、バンク、うんてい、平均台etc


 さあ、やってみよう。

 大きな2輪の台車、大八車タイプも悪くないのだが、サイズを調節しながら出すのって意外と操作が大変で魔力消費も多い。なので車体部分と荷台部分を分けようかと。

 まずはミニチュアで試行錯誤。2輪4輪6輪。荷馬車タイプ、大八車タイプ。なんだかミニカーで遊んでいる子みたい。くーちゃんも遊んでいる。


 最終的に決まったのは、1m四方の箱に車輪を4つ付ける箱台車。引き手部分は魔法で後付け式。この箱台車に引手を直に付ければ、ホーンラビット3~4匹なら楽に運べるし、ボアなど大物はまず箱台車を出し、ボア本体の下に畳のような土板を出し、それを浮かせて箱台車の上に置く。この時は引手は畳の土板につける。移動時の魔力も畳に注ぐだけだから複雑でもないし省エネになる。

 うんうん我ながら力作。



「くーちゃんもまほうちゅかいたい」

 だよねー、横で見てるだけはつまらないもんね。


「んーー、じゃあサブマスに魔法適正みてもらおう」

「うん」



 


「ギュウウウウウウン」

「きゃっきゃっ」


「バルルルルウウウウウン」

「きゃっきゃっきゃっ」


 箱台車に引手を付けてくーちゃんを乗せて爆走中!


「オラオラオラ、どけどけどけーい。

 ドリフト!!ホキョキョ、ホキョキョキョキョ!」

「きゃーーーー」



 最後はヘロヘロで西門へたどり着いた。ギルドまではヘロヘロの俺が乗って、くーちゃんに引いてもらった。くーちゃん飛ばしたら危ないよ!ご安全に!




「サブマスー、くーちゃんの魔法適正みてくださーい」

「さぶましゅ、くだしゃ~い」

「私はサブマスではありません。一般職員のキールです」

「キールサブマス、くーちゃんの魔法適正みてください」ぺこり

「くだしゃい」ぺこり


「・・・・わかりました、少しお待ちをギルマスに聞いてきます」


 酒場でお水をもらい待っているとギルマスがやってきた。



「おい、くーちゃんは2才だろ?早くねーか?」

「英才教育です!(鼻息)」

「いやーそうは言ってもなあ、ギルドが2才の子に教えたとなるとな…」

「んーわかった、仕方ない俺が教える」

「おめー適正確認法知ってんのか?」

「知らない。土だけ?」


 額に手を当てるギルマス

「仕方ねえ、キール教えてやってくれ」


「よろしくおねがいしますサブマス」ぺこり、ぺこり(インディゴ式)

「さぶましゅ」ぺこり、ぺこり





 酒場の裏にある訓練場、入口付近のベンチに座る。


「まずは、4属性の確認をします。光闇は私も知りません、回復魔法使いのパッフさんなら知ってるかもしれませんが」


 サブマスがくーちゃんの背中に手を当てる。


「くーちゃん、まずは背中から魔力を流しますので感じ取ってください」

「あい」


「わかった!」

 手を挙げるくーちゃん、因みに両手。


「では、次に魔力を右手のひらに流します、一緒に流すように意識してください。手のひらが温かくなったら教えてください」

 サブマスがくーちゃんの右手のひらをちょんちょんとつつく。俺もやってみる。


「なった!」両手バンザイ

「ああ、右手は手のひらを上にして動かさないで」



「この状態で「ファイア」と唱えてください」

「ふぁいあ。火がでた!」


 おおおおー。くーちゃん火魔法使いか?

 俺も「ファイア」と唱えてみる。あら出ない。

 あ、ファイアは別の魔法で使ってるからか。

「火」

 よし点いた。よかった。



「魔法使いならみんな点くんですよ」

 サブマスが俺を見て微笑んでいる。


 魔法を外部に撃ちだせるのが魔法使い、4属性の初級魔法はみんな出せるけど、適性外だとションベン魔法になるみたい。適性の魔法だとしっかり初級魔法として発動するみたい。なるほどー。


 因みに魔法を外部に出せない人は身体強化の魔法を習得するんだと。ギルマスはそっちね。火の身体強化持ちだからギルマスは馬鹿力を出せるんだって。水ならスタミナ、風はすばやさ、土は防御力。

 では、魔法使いが身体強化したら最強じゃん、と思いきや魔法使いは魔力を体外に放出しちゃうから、穴の開いたバケツ状態で魔力ダダ洩れで下手したら魔力枯渇で死んでしまうみたい。  

 うわ、聞いといてよかった。




 4属性試してくーちゃんの適正は「土」でした。いっしょ!わーい!


 くーちゃんが俺のマネで「ぼーる」「ぼーる」と駆け回ってる。魔法は出てないけど、なんか戦闘スタイルをサブマスに見られているようで恥ずかしい。


 その後、ドリフトで荒らした畑道のことで俺だけ怒られましたとさ。おやじたちがニヤニヤ見てやがる。

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