第9話 研修
9研修
ボアを狩ってから数日、ほとぼりが冷めたかなと、薬草採取依頼を受けようとすると
「ちょいとお待ち」
おばちゃんに待ったをかけられた。
ん?なんだなんだ。
酒場の方から「風光の下」の4人がいらっさる。
「カロン、あんたはいつも何かやらかすから、今日から2日、野宿1泊込みで『風光の下』に付いてハンターのいろはを学んでおいで。ちなみにこれは決定事項だよ」
ぬおおお、突然の強制指導? 急すぎない?何も用意してないよ。しかも先生の方が多いとか。でもハンターのこと教えてもらえるならありがたいが。
「準備は済ませてある。帰ってきたらワシらの飲み代おごりな」
槍のゴーサ爺が笑ってる。
「ええええ?!」
「なんじゃボアを狩って懐が温かいんじゃろ」
「これはくーちゃんの装備貯金でして…」
「あっはっは冗談じゃよ。くーちゃんの装備代を酒代にしたなんて知られたら袋叩きにあうわい」
「無茶をやらかすわりにカロンはしっかりしてるわね。どっかのジジイとは違うみたいね」
どこのジジイだろう。チョーサとゴーサ爺が明後日の方を向いている。
さあさあ出発です。俺はくーちゃんを背負っているので荷物なしでいいって。老人に荷物をもたせて面目なし。
街の東、魔の森正面の道をどんどん奥へ進む。森の正面にはまっすぐ東、南東へななめに、北東にななめの道が3本整備されている。整備といっても土魔法で道を固めて少し整地した程度の道が1km程度のびているだけだが無いよりましである。
1kmを過ぎてからは、ハンターたちが踏み慣らした道を進む。チョーサ爺さんが枝を払ったりして前衛を務め、女性2人と俺らが真ん中、腰の曲がったゴーサ爺さんが殿を務める。
途中、毒消し草や麻痺草の見つけ方や採取法、この木の傷はどの魔物が付けただの教えてもらいつつ進む。
1km過ぎたあたりからゴブリンに遭遇しだす。爺さん2人で楽々狩っていくのを眺めつつ、討伐証明の左耳をとったら、俺が土魔法で穴をあけて埋める。これは感謝された。普段は森の魔物が掃除してくれるから放置するか、軽く埋めるしかしないそうだ。
次のゴブリンが出たらカロンも狩ってみるかと提案され応諾する。なぜかくーちゃんがやる気満々。みんな微笑ましく見てる、絶対ポーズ取ってるでしょ?
ゴブリンが5匹あらわれた。うん大体そうだよね、こう言う時って多めにあらわれるよね。いってきますと声をかけ俺はひとり前に出て(くーちゃん付き)ゴブリンに接近していく。気配隠ぺいもせず、ずんずん進むとそっこー気づかれる。
「あ“――!」
くーちゃんが威嚇する。ニヤニヤ近づいてくるゴブリンに「ボール」右左右左右、5発。終了。
ポカンとするじいさんたち。
「おぬしそんなに強かったのか」
「ボアを倒せるくらいじゃから分かっとたが…」
「土魔法使いの戦いって初めてみたかも」
「あら、そうねぇ」
俺はじいさんたちを他所に討伐証明部位をとり土に埋める。
お昼はハンター気分を味わうためとかで、異世界ハンターお馴染みの硬いパンと硬い分厚い干し肉。美味しいもんじゃないね。干し肉はゆっく噛めばいけるかとは思うが子供の顎には非常に負担がかかる。
お昼後はゆっくり進み早めに野営することに。野営時の注意点、薪拾い、寝床の整地、食事担当、見張りの順番、魔物が忌避する薬草を焚くために集めたり。ちなみに土魔法で竈を作ったら喜ばれた。あー、くーちゃんと旅をする時にいろいろ必要だし安全な寝床の研究もしよう。
質素な晩ごはん、見張りは1番手をさせてもらい接待野営をすませ体の負担も少なく次の日を迎える。
今日の目標はオークを狩ること。
我が街の東エリアは人型の魔物オーガは居ない。
なぜならオーガはオークを食べるので人型同士でも共存しないんだって。だからオーガがいるエリアにオークは居ないから逆説的にオークのいるエリアにもオーガは居ないと。ゴブリンはまずいがオークは食肉になるので狙われ易い分、統率の取れた戦闘をするみたい。
え? そのオークを狩るの?団体行動してるんじゃないの?
慎重に進む、風魔法使いのザリナモさんが魔法を駆使して索敵する。
感知したみたい。ゆっくり視認できるところまで進む。くーちゃんが威嚇しないように、おんぶ紐を前面だっこにかけ替えて、いつでもくーちゃんの口を塞げるようにして歩く。まだ8才だからちょっとしんどい。
視えた。灰色のオークが4匹。樽型の胴に思ったより短く細い手足、コミカルな感じだが力は強いらしい。太ったプロレスラーみたいなもんかね。こん棒を持っている。魔法使いっぽいのはいない。
くーちゃん静かにね。
「あ“――あ”――あ“――」
あちゃー、額に手を当てる。
チョーサ、ゴーサ爺さんズが2人並び臨戦態勢。後ろに風魔法使いザリナモさん、その後ろに回復担当パッフさん。俺も一応申し訳ない雰囲気をだしつつザリナモさんの横にコソコソ並ぶ。
くーちゃんの声を頼りにやって来たオークが俺たちを視認して駆け出してくる。それとも臭認だろうか。んー、軽めに倒さない程度に撃ってじいさん達に花を持たせようかな。
「ボール、ぅんボール、ぅんボール、ぅんボール」
ぅんパン、ぅんパン、カスタネットのリズムで左、右、左、右とストーンボールをオークの顔面にぶち込む。走ってくる勢いも乗っていたので、カウンターパンチを食らったようにオークが膝から崩れ落ちる。
しまった強すぎた。くーちゃんが勝ち誇っている。
呆れたじいさんたちが「ワシらいらんかったのう」とトドメを刺す。
その場でオークを解体して可食部位を持てるだけ切り分けてあとは埋める。俺は悪路を行くのに支障ない程度の小さい台車を作りオーク肉を載せる。血の匂いに他の魔物が寄ってこないようにザリナモばあさんが風魔法で奥地に匂いを流さないようにして速やかに撤収。
「いやー、土魔法使い便利だのう」
「こりゃー壁職人が見直される日は近いか」
「戦闘にも野営にも活躍だもんね」
「そうねぇ」
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