第8話 あいさつ


 8あいさつ



 教会にくーちゃんのお勉強のために来ている。みんなが勉強している間に俺は遊具としての大きな馬やボアの石像を作っている。いつか九九のゲートもつくるかなと、ドゥバ6才、トゥーリ4才を見ていてあることを思い出す。こいつらを鍛えるんだった、ついでに俺も。

 軍隊用のアスレチックみたいのはどうだろう、遊び場としてもいいし、くーちゃんの遊び場確保もできるんちゃうか。よしギルマスに相談に行こう。 

 食後のお昼寝タイムのタイミングでくーちゃんを背負ってギルドへ戻る。

 

 暇そうにしていたギルマスにアスレチックの話をしてみる。ロープで壁を登ったり、急な傾斜を駆け上がったり、鍛えられる遊具的なニュアンスで説明する。それなら聖獣様の挨拶も兼ねて明日領主様のところに行こうということになってしまった。避けては通れない貴族との面会。貴族かぁ。仕方ないあきらめて会うしかないか。




 翌日、くーちゃん同伴でギルマスと領主邸に向かう。狭い街だしすぐ着くし待たされもしない。

 領主様はカレン・ファン・ソンリッサ男爵。ハゲマッチョで口髭が逆さUの字のように顎まで垂れている。終始ニコニコしてくれていて、かなり気が楽になった。マッチョはおおむね優しいと思うのは、悪マッチョを知らないからだろうか。くーちゃんは出されたドライフルーツを頬ばっている。



 ギルマス曰くここの領主は南と北の大領地の狭間、南北の離れた街をつなぐ道沿いに商隊が野営をする為に利用していた土地に作られた、商隊が宿泊するだけのなんの旨味もない小さな中継地。

 大領主様たちがこんな離れた土地の統治を嫌がり、戦争で功績を挙げた何もわかっていない筋肉バカに押し付けられた街なんだと。ご領主様は貧乏くじを引かされたお人好しだってさ。

 ううう、がんばれ領主様。嫌な貴族じゃなくてよかったけど、これは同情。人のこと応援している場合じゃないけど肩入れしたくなるぜ。



 くーちゃんのことについては、王都からの連絡待ちで特に何もなく自由にしてて良いってさ。なんだか拍子抜けする対応だった。

 アスレチックに関してはマッチョ属性のためか、すこぶる興味を示してくれ、教会の側にある材木置き場の一部を使っていいと許可してくれた。




 次の日、朝食後そのまま酒場で待機していると、ギルマスがひとりのおじいさんを連れて来た。彼はこの街の壁職人のマルグリムだと名乗った。いちおう領兵とのこと。うんマル爺ね。

 今日はこの人に付いて半日外壁の補修をしてこい、ついでにアスレチックの構想を2人で話してこいと言われた。



 くーちゃんを背負い梯子を持ったマル爺と一緒に北門から外へ出て、まずは外壁の工事や補修のしかたを習う。  

 要は魔力を土に流してセメント代わりにするみたい。大きな穴が開いている所は石を当てはめ石の周りに土を埋めてから魔力を流して固める。石や土を使って魔力を節約しつつ作業していく。慣れてきたら高いところをマル爺がやり、低いところを俺がやって、切りのいいところで休憩に。

 マル爺はパンにソーセージを挟んだものを用意してくれてた。ホットドッグの走りかな。うまうま。ケチャップとマスタード欲しい。



 ホットドッグもどきをほおばりながらアスレチックの説明をする。試しに大小高低様々な円柱を「柱」の魔法で出してみる。くーちゃんが嬉々として食いつく。ぴょんぴょん柱の上を跳ねている、2才にしては跳躍力がすごいね。他には平均台やジャイ〇ンリサイタル用のドカンとかを作ってあげるとくーちゃん入れ食い状態。元気な子や。

 ロープを使う遊具の説明はミニチュアの模型を作って見せるとマル爺も理解が深まったようで興味深げにいろいろ聞いてきた。そのまま休憩後も作業をすっぽかしていろいろ話し合った。

 くーちゃんの遊び用に、円柱→ドカン→平均台→小さな山→斜めバンクの板→最後にボアの石像にキック。で一周するようなコースを作ってあげた。

 あら?サス〇みたいだな。


 聞けばアスレチックはすでに決定事項でマル爺が現場責任者になって、俺に聞きながら試行錯誤しながらやってみろってことになったみたい。いい効果が得られるようなら衛兵の訓練にも取り入れられるとかで、マル爺もやる気を出している。ロープや木材もそれなりに必要になるため、資材の準備はマル爺がしてくれることになった。よろしくお願いします。



 

 



 イリスファボル王国南部、海に面した大港湾都市、王都グランティトゥ。

 海の恩恵から始まった国。その王都を眼下に見下ろす王城上層階の一室。華美さはなく質素な作りの国王の執務室。蒼い海をのぞめる執務室内には男が2人。この部屋のあるじの国王と宰相が雑談交じりに会話をする。


「聖獣と守人がソンリッサに現れたようだのぅ」


「はい。なんでもタヌキ聖獣とか…」


「タヌキのぅ…どんな恩恵があるんだ?」


「さぁ…なにぶん聖獣についての研究・検証は進んでおりません。まだ教会の方が詳しいかと。ただいま資料を取り寄せてますが、あまり期待はできないかと」


「何か送っておかねばなるまい?」


「はい。我が国の心証は良くしておくに越したことはないので、先ほど話にでた、あれでも送ろうかと」


「うむ、タヌキだからあまり奮発せぬでも良いぞ」


「わかりました」


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