第7話 くーちゃんと森へ
7くーちゃんと森へ
さあ、今日は薬草採取にいくぞ!
と思っていたら、おばちゃんに渋られる。大丈夫と言い張るが首を縦に振ってくれない。最終的にギルマスがオッケー出してくれた。
くーちゃんを背負いインディゴベアーと会った森の前に続く道を南へ進む。もう遠くの南の森に帰っちゃったかなー。
ここら辺だったかな。歩いてきた道から進路を変えて森に分け入る。くーちゃんがいるから周りを警戒しながら慎重に薬草を探す。
見つからない。葉っぱが採られて若葉だけの薬草、誰かが採取した痕跡がある。じじばばこんな遠くまでくるのも変だしおっさんチームが通るついでに採ってったか。
仕方ないいったん戻って街道で休憩しようかな。
「あ“っ、あ”っ」
くーちゃんが何か言おうとしてる。
む、警戒音? 辺りをうかがうがくーちゃんの警戒音は続くので音は拾えない。静かに街道まで後退しよう。
抜き足差し足忍び足ゆっくり下がる。街道に戻ったからと言っても森の中に道があるだけだから森といえば森なのである。
獣なら警戒音を聞いたら一目散に逃げるよな。撤退方法を間違ったかな。
灌木をかき分ける音がどんどん近づいてくる、遅かったかー。
手を足元の地面につき魔法を唱える。
「柱」
電柱よりやや太いの高さの円柱を足の下に出し、そのまま2mほど柱はせり上げる。まるで舞台の「せり」の装置みたいに上がる。しゃがんだ姿勢で音のした方をのぞむとボアがこちらに向かって来るのが見える。
ボアは師匠と狩ったことはあるけどソロは初だな~。
くーちゃんの「あ“っあ”っ」が「あーあー」に変わる。なんでだろ。
ボアがこちらに気づきフガフガ鼻息荒く勢いづく。くーちゃんにも見えるように半身になって動かずじっとする。
「くーちゃん静かに願います」
「はーい」声でけえ
《静かに!シー、シーー》
「しーしーしーーー」
ダメだ笑ってる。うちの子肝が据わってらっしゃる。
ボアがもう目の前だ、くーちゃんが背中で威嚇ポーズをとっている気がする。見たい。
2mの高さからストーンボールを2発撃ちだす。ボクシングのワンツーの要領で軽めの左のボールで動きを抑え、強いめに魔力を込めた右のボールを的確に額に撃ちこむ。
ゴッ、ゴスッ
撃墜。
柱の高さを下げ地面に飛んで着地、そしてブルースリーのポーズで勝鬨。
「ほぁぁぁぁ」
きゃー!きゃーー!
喜ぶくーちゃん。どうだムフン
横たわるボアを見つめて、これ街まで運べるかな。一部だけ持って帰るなんて勿体ないことしたら、もったいないレイスがでるよね。ボロいローブを纏った骸骨が「もってけ~」とか言うのを想像したらブルッときた。
体長2.5mくらいのやや小さめのボアの下に、ボアが乗るくらいの大きめの台車を作り出し引いてみる。おっっっも。超重い。
どうしたもんか…くーちゃんも背中から降りてトライしている。がんばれがんばれ。
2人で顔を真っ赤にして引っ張っていると少し動いた。
「動いた!」
「うごいた!」
今なにしたんだ?……じっと手を見る。
台車に魔力を流してみると楽々動き出す。おおおお。魔法世界万歳!
その後はくーちゃんと楽しく台車を引く、きーしゃきーしゃシュッポシュッポ、シュッポシュッポシュッポッポ
「ただいまー」
「たらいまー」
門衛や街の人が驚く横を揚々とすぎ、ギルドの裏手へ回る。
「おっちゃん解体おねがーい」
「おねあーい」
「あ、あと後ろ脚1本は引き取るから先に切り分けて」
驚くゴルググのおっちゃんを急かして査定メモももらわずに、改めて小さい台車を出しボアの後ろ足を載せてすぐさま解体所を出る。
「こんにちはー」
「こんちわー」
やってきました教会です。みんなびっくりしてボアの脚をみつめている。でっかいよね。
若いシスターにボアの脚を渡すと早いけどお昼にしましょうってなった。お姉ちゃんのアジンが調理を手伝っている。ほかの子はお皿の用意。
みんな喜んで食べる楽しい食卓。男の子2人もうめーうめー言ってる、末っ子のダーちゃんもくーちゃんもうめーうめー言ってる。持ってきて良かった。
お腹がふくれて、くーちゃんを入れて4人はお昼寝。俺は前回聞き忘れていたこの世界の神様の事を神父様に聞いた。
この世界は創造神(女神)オルサ・マーテルがお創りになり6柱の眷属神に世界を見守らせていると。創造神と呼んだり女神様と呼んだり、その時々で呼び方が変わる。火水土風闇光の6柱。魔法適正もこの6種。1週間も6日。教会では基本創造神にお祈りをし、職業や国によっては眷属神を祭って信仰している。鍛冶師が多いドワーフ国なら火神。漁師や酒造業、海に面した国などは水神とか。
神の話といえば20年前の神託。神父様も驚いたと共に宗教国ルークスリーベリも大々的に神託を
俺をこの世界に呼んだ神様はどなただったんだろう? 土魔法適正だから土の神様かな?
ひと息つき、ついでにくーちゃんの教育のためにちょっと考えていたことを神父様に相談する。アルファベット表のボードを庭に土魔法で立ててよいですかと。くーちゃんがみんなと一緒に勉強出来たら、やる気とか集中とか継続とか協調性とか良い学びがいっぱいあると思うんだよなーって。
許可をもらい庭の日当たりのいい場所にボードを作る。アジンも協力してくれる。俺は異世界での蓄積があったので師匠に軽く教えてもらっただけで覚えたけど、くーちゃんはベースが獣だし、楽観視せずじっくり教えられるようにする。
ボードを作り終え、シスター先生のもとアルファベットの授業をして帰路に就く。
「ばいばーい、またくるよー」
「またくるお~」
くーちゃん森からずっと歩いているが大丈夫なんか?けものだから筋肉のつきが早いとか。なんて考えながら解体所に到着。ゴルググのおっちゃんにお小言をもらうが教会に行ってたことを知ると頭を撫でてもらった。
査定メモを持ちギルド正面入口に回り込む。おばちゃんに睨まれる。
「カロン、わたしがなんで怒ってるかわかるかい?」
「解体所からすぐ出て行ったから?」
「違う」
「査定メモ出さずに行ったから?」
「違う!」
「行き先を伝えなかったから?」
「違くないけど違う!!」
え、じゃあなに?
こっちに来なと酒場に連れていかれる。
困り顔のサブマス、奥の部屋に行く扉を小さく開けてこちらを覗き見しているギルマス。
ドナドナされる俺。
かわいそうな瞳で2人を見る俺。
無視する2人。
酒場の椅子に座らされ膝をつめた状態でおばちゃんが火を噴く。
「いいかい!どこの世界に小さい子を背負った10才の子供がボアを倒したりしてくるんだい!」
「ここ?」
しまった。今の発言は火に油だ。
酒場にいたおっちゃんハンターズがニヤニヤみてる。
みっちり絞られ今日イチ疲れてぐったりテーブルに突っ伏す俺をくーちゃんが頭いーこいーこしてくれてる。
因みにくーちゃんは説教中、酒場のマスターに何かおやつをもらってた。ズリイ。
もちろん薬草採取失敗で減点もいただきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます