第5話 おはよう
5おはよう
「その子が聖獣様なら数日内に人型に変わるはずだ。うちの職員には伝えるが、ハンター共にはしばらく教える気はないから、お前は部屋に
「えええぇぇぇ~~」
「ほんの2~3日だろ、ガマンしろ。メシはドリーに運ばせる。明日の朝、顔を出すから、それまで大人しく寝てろ、他の奴らにその子を見られるんじゃねーぞ」
こんなに
「話は終わったのかい?」
「うん、詳しくはギルマスに聞いて」
そそくさとハンターの応対をしているおばちゃんの横を通り過ぎ、ギルドの2階にあがっていった。
部屋に入り聖獣様をお腹から出して、ベッドの頭側にそっと置く。靴を脱いでベッドにあがり壁に背をあずけ足を投げ出して座る。
横で寝ている聖獣様にやさしく微笑みささやく。
「名前…考えないとだね。たぬきだからポンとか必要?ポンジュ…
あー甘い物飲みたい」
トントン、カロン入るよー
おばちゃんの声だ。返事をしようとするが横で寝ている子を起こさないように静かにベッドから降りる。
おばちゃんが晩メシを持って来てくれた。
ベッドの上にお目当てのものを見つけたおばちゃん
「その子かい?」
シー!と人差し指を口にあてる。
おばちゃんはテヘっとおどけて、トレーを俺に渡して聖獣様をのぞき込む。
じっくり堪能してから力こぶを作り
「子育てならなんでもお聞き!あと、食器は明日でいいよ」
といっておばちゃんは静かに扉を閉め出て行った。
肉の少ないスープと硬いパンを食べて、ウトウトしてきたので命名は明日にする。
“異世界で聖獣様と無双する、ひゃっほい!”
とは行かなそうだな。
否!
行かぬとも、ひゃっほいしましょうホトトギス!
おだすみなさい。
んんん。
朝かな。よく眠れたのかスッキリしてる。仰向けのまま伸びをする。
伸ばした手に何か当たる。あ!聖獣様殴っちゃったかな、と頭の上を見ると2才くらいの女の子が肌着姿でこっちを見てる。ピンク色のショートヘアーにケモミミの内側が白い、目のクリッとした女の子。
ぬお!… 目をパチパチ。もう人型になったのね。
「おはよう」
「おーよー」
おっ言葉も理解できそう。助かります。
「えーと、俺はカロン。きみのなまえはなんですか?」
フルフル首を振る女の子。やっぱり名前はないのかな。
「名前はないの?俺が名前を付けてもいい?」
コクンとうなずく女の子。
「んーじゃあ、たぬきだからー、たぬー……ん?! 怒ってる?」
見ると女の子が両手をぐーにしてバンザイ状態で眉間にシワを寄せている。かわいい。
「あれ?たぬきじゃないの?」
じゃあなんだろ? じーっと女の子を見る。彼女の後ろに、とある獣の姿が浮かび上がる。ゴゴゴゴゴゴ
ハッ!!この世界にも生息しているの?!
「まさか、レッサーパンダ?」
コクン。
口角があがる。内心は、なんだとーー!「かわいい」確定じゃないですか!
おっといけない興奮してしまった。名前名前。
「ゴホン、名前だね。レッサーパンダのレッサーは確か小さいとか小型って意味だったはずだから、あまり名前に向かないとして、パンダから採るか。
パンダは漢字で熊猫って書くから、
“くまみ で くーちゃん”または
“ねこみ で ねーちゃん”
ん? ねーちゃんは路地裏でチンピラに絡まれそうな名前だな…」
「・・・・」
「それでは決を採ります。
“くまみで くーちゃん”がいい人」
バンザイする女の子。俺も手を挙げる。
「“ねこみで ねーちゃん”がいい人」
「シーン。よってきみのなまえは、
くまみ!くーちゃんに決まりました。ワーーパチパチパチー」
パチパチパチパチ
バンザイして「くーちゃん!」と自分の名前を口にする女の子。
因みにくまみの「み」は某ネコ型ロボットの妹の「ミ」から頂きました。
「くまみの「み」はかわいい妹って意味もあるんだよ」(鼻息フンス)
適当に言葉の意味を創作してみる。異世界だからよしとしましょう。
トントンガチャ、
「カロンおはよう朝ごはんだよー」
おばちゃんとギルマスが2人分のトレーを持って入ってきた。返事待たねーのかよ。プライバシーねーな、かーちゃんかよ。
ふたりは、くーちゃんを見ると目を見開き、顔をくーちゃんに向けながら忍び足で小さなテーブルにトレーを置いた。
「もう人型になったのか…」
俺はニッコリ笑顔を作り、我が妹を自慢げに紹介する。
「おはようございます。この子はくまみ、くーちゃんです!」
「くーちゃん」
うんかわいい。
「お、おう おじさんはルーザだ」
「おねえさんは、ドリーよ」
えっ、おじいさんにおばさんでは?と思っていると
「何か言いたいことでもあるのかい」
と、おばちゃんが怖い笑顔を向ける。
「いえ何でもありません。お食事イダダキマス」
新兵のように背筋を伸ばし敬礼する。
くーちゃんも敬礼している。
かわいい。
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