第3話 初外出
3初外出
俺が土魔法使いはバレたら徴兵されるから隠していたと白状すると
「ダッハッハッハ。それは10年以上前までの話だ、安心しろ今は志願制だ」
師匠の情報が古かったのかな。
昔は木をガンガン伐採して農地を増やし他国と領土拡張を競い合う時代が続いてた。次第にスタンピードが頻繁に起こるようになり、大きな街の側にはダンジョンがボコボコと生まれる事態が続出した。そうなると城壁や街壁の強化が必須となるわけで、土魔法使いが「壁職人」として徴兵されるようになったと。ここまでは師匠も教えてくれた。
それが今から20年ほど前に《樹を伐り過ぎてはならない》と神託が降り、あわてて木を伐るのを控えたり、国によっては植樹するようになったのだとか。もちろん従わない国も存在する。この国では伐採を控えたおかげか、ここ10年でスタンピードやダンジョン発生が下火になり、落ち着きを取り戻しつつある。それにより土魔法使いは徴兵から解放されるようになったんだとさ。
なので土魔法使いの攻撃力ってあまり知られてないというか、壁職人が投げるちょっと痛いくらいの石。程度の認識なんだと。
おや、土魔法を世界に認めさせるターンが来たのか?
師匠の怒った顔がみえる。自重自重。
カロンが執務室から出ると、ギルマスが聞いた。
「見えたか?」
「かろうじて。あれで弱めなんですよね?」
「ああ、本気だと見えねーかもな。おもしれーのが出てきたな」
ギルマスは極悪人スマイルをみせる。本人はそんなつもりは無いのだが元がいかつい顔だから仕方ない。
特例でFランクにアップした俺。2年待たねば上がれないと思ってたところに2カ月でランクアップ。ひゃっほー。こっそり脱獄する必要もなくなった。
さっそく森にやってきましたよ。
街の正面にあたる場所は人が多い。E・Fランクのパーティーや、小銭稼ぎのじいさん、ばあさんもいる。年寄りがいるならGランクでも行かせてくれてのいいじゃないかって思うが、年寄りは危ない橋を渡らないからOKらしい。血気にはやる若い子は信頼がないよね。うんうん。
ということで俺は街の正面より北に来ている。北のノルテメンテに向かう街道を歩き、街がだいぶ小さく見えるくらい離れたところで森に入る。
薬草はいね~が~。
そんな簡単には見つからない。辺りを警戒しつつ進む。密集して生えているのか、そうでないかも分からない。一度正面でじじばばにご教授いただけばよかったか? まさか正面のあたりは、じじばばが栽培してたり?なんて疑ってしまう。
なんてブツブツ言ってると、ありました薬草!全部取りきらないように薬草を集める。
ガサッ
!!!
警戒を高める。索敵苦手なんだよなー。腰をかがめ息を殺して、魔法を撃てる体制を整える。
ガサガサガサッ
右斜め前。ホーンラビットが飛び出して来た。この世界のうさぎはデカい。中型犬くらいのうさぎがあまり長くない角を向けて突進してくる。斜め後ろにもう1羽。
「ボール」
右足を引き身体の正面をうさぎに向けその流れの中で左手を突き出す。手前のホーンラビットの角の付け根にストーンボールを当てる。もういっちょ、腕をクロスするように右手を左前方に向けてストーンボールを放つ。
ふう。よかった。
気を抜いたところで左手後ろの茂みから1羽飛び出てきた。うわっ!身体をのけ反らせて躱すが尻もちをついてしまう。ホーンラビットに視線を向け、あわてて右手で地面を押し身体を右にひねり左手を構える。ちょうど方向転換してこちらに向き直ったうさぎに魔法を放つ。ボール!
ふぇ~あぶなかったー。もう1羽いたらドスッっと逝かれてたかも。いつも狩りの時は師匠がいたから安心して狩りを出来ていたけどひとりの時はより一層注意しないとダメだな、あせりまくりだった。
3羽の横たわるうさぎをみる。この世界だとうさぎは3匹かな。さてどう運ぶか。
土魔法でできた台車を引き街道をゆくカロン。ちょうどホーンラビット3匹乗る程度の小さな台車。骨組みなどない石のお皿の車輪2つ、その間に板を挟んだ、大八車タイプの台車をなんとか作り上げゴロゴロ引く。師匠と罠作りとかして土魔法の操作力を磨いておいてよかった。やっててよかった罠づくり。
重たい石の台車をえっちらおっちら引いてやっと街までたどり着いた。たった数キロだけど子供には重労働だった。門衛にあいさつしてゴロゴロ門を右に折れギルド裏の解体所をめざす。
「こんにちはー、買取おねがいしまーす」
解体所のボス、ドワーフのゴルググのおっちゃんが立ちあがる。はじめて名前を聞いたときは、おしい!と思ったもんだ。
「ホーンラビットか。小僧ひとりでやったのか。頭を一撃かよ、やるじゃねえか。あれ?おめぇGランクじゃなかったか?」
「昨日Fランクにあがった」
「おお、初討伐か。酒場のマスターに言っといてやる。初討伐の肉食わせてもらえ。ほら表に回ってこれを受付に出せ」
「ありがとう」
うさぎの査定を走り書きした紙切れをもらってウキウキで解体所をでる。ぐるりと回って表の入口から入り受付のおばちゃんに背伸びしてドヤ顔で査定の紙を出す。
「カロン、あんた薬草採取にいったんじゃないのかい?薬草はどうした?」
はっ、として腰袋から薬草をだす。
1,2,3,4,・・・8枚・・・
足りない。薬草採取は10枚で依頼達成でござる。
「あんた依頼失敗ね。減点」
ノーーー!頭を抱える。が直ぐに肩の力を抜く。
まぁいっか。優等生とか皆勤賞とかめざしてないし。
夜に初討伐のホーンラビットのソテーを出してもらい、みんなに褒めてもらっていい気分で部屋に戻った時に、
教会の子供たちにお肉を持って行くのを忘れてしまっていたことに気づき、ちょっと落ち込んで寝た。
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